最終回です。私自身、昔の歌を聞いたりして、懐かしくなりました。

古い歌が登場し、みな様には馴染みのないものと思われましたので、その曲名のところにYou Tube から、リンクを張りました。

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アメリカバス旅行「歌は、思い出と共に」最終回

 

 

ホセが、レストランで仲間とやっているミニライブに行くことになりました。

6時からです。

私は、ホテルでシャワーを浴び、髪を洗い、ドライアーをかけ、着替えました。

レストランなので、少しオシャレをしようと思いました。

帽子でぺったんこになった髪を、ふわふわにして、

デニムのワンピースのかわりに、エンジの光沢のある7分袖のワンピースを着ました。

メイクをして、服の色に合わせて、赤系のシャドーとリップを引きました。

そして、イアリングとネックレス。

アラモ砦のときは、ほとんど素顔だったので、イメチェンでした。

(心の底で、ホセを意識していたのかも知れません。)

 

ホテルに貴重品を預けて、6時前に「ソンブレロ」にタクシーで行きました。

 

「ソンブレロ」は、小さい店で、演奏の人のスペースは、5人分くらいでした。

そこは、1段高くなっていました。

 

お客は、丸テーブルに4人掛けが、4つ位、後ろに中2階があって、

そこは、四角い4人掛けのテーブルになっていました。

 

レジのあるフロアの奥に、厨房があるようでした。

 

ホセが、むかって左の、2段目の奥にいました。

バンドの人の年齢はいろいろで、40歳代の人、30歳代、

そして、ホセのような青年が3人いました。

マイクが、3か所立っていました。

 

私は、フロアのテーブル席に座り、ホセに手を振りました。

すると、周りのバンドの人が、

「お、なんだ、どういう関係だ。」などとホセを攻めていました。

 

お酒を飲み、お料理を食べながら、演奏を待ちました。

お客は、半分くらい入っていました。

 

バンドの人達が、一度引っ込み、ソンブレロを被って再登場しました。

年長の人の挨拶で、曲が始まりました。

私は、そう言えばラテンをけっこう聞いているなと思い出しました。

父がよくラテンのレコードを買ってきて、

聞かせてくれました。

 

その懐かしい音楽が始まりました。

私は、うっとりと聞いていました。

30分ほど経ったとき、

ウエイトレスの人が、リクエストカードを配りに来ました。

2枚もらいました。

私は、いろいろ迷ったあげく、

「ケ・サラ」という曲と「シエリト・リンド」という曲を書きました。

「シエリト・リンド」は、メキシコの国民歌のような歌なので、

やってくれるかもしれないな、と思っていました。

私は、カードに「from Japan」と書いておきました。

 

やがて、私のリクエストカートが、バンドマスターに届きました。

バンマスは、カードを見ていいます。

「今、日本のお嬢さんから、リクエストをもらいました。

 何?『シエリト・リンド』?わあ、これ、トリでやろうと      思ってたんだけどなあ。

(仲間を見て。)今やっちゃう?え?あそう。じゃあ、行っ    てみようか。」

 

 

こうして、私の大好きな曲が流れました。

いつでも、聞く人の心を、ハッピーにしてくれる曲です。

♪ アーイ ヤーイ ヤヤーイ

というところが、すごく盛り上がります。

お店のお客さんも大喜び。

中2階のお客さんは、ほとんど立って、いっしょに歌っています。

 

こうして、「シエリト・リンド」は、終わりました。

 

バンマス。

「え~次のリクエストは、『ケ・サラ』。

  お嬢さん、これ『ケ・セラ・セラ』じゃないですよね。」

「違います。♪ケ・セラ ケ・セラ ケ・セラ~ です。」

と私は歌いました。

「ホセ・フェリシアーノですね。これも、いいんだなあ。

 ホセ君。君のお友達のリクエストだ。君がやりなさい。」

とバンマスが言いました。

後ろで、ホセが尻込みするのを、お客さんが、囃します。

ホセがやっと出てきました。

「俺だって歌いたいのを、君に譲るんだからね。」

と、バンマスは言って、お客さんを笑わせます。

 

やがて、ホセは、上手なギターを奏でて、ケサラを歌い出しました。

いい声でした。

私は、うっとりと聞いていました。

 

(盲目の歌手・ホセ・フェルシアーノ)

 

今度の旅行は、いろんなことがあったけど、なんだか、ホセの「ケ・サラ」が締めくくりになりそうだなと思いました。

音楽を伴った思い出は、その音楽を聞くと、いつも蘇ります。

「デイビー・クロケット」を聞けば、アラモの砦を思い出すし、「ケ・サラ」では、ホセとこのレストラン。

 

ホセは、歌い終わり、たくさんの拍手をもらいました。

私も拍手をしました。

そこで、第一ステージが終わりました。

 

ホセが、飲み物をもって、私のテーブルに来ました。

「わあ、ジュン、違う人かと思った。」

「一応、おめかしになってる?」

「うん、すごく綺麗だよ。」

「ありがとう。ホセ、歌もすごく上手なのね。」と私。

「あの歌好きでたまらなかったんだ。それを、まさか、ジ       ュンがリクエストしてくれるなんて、夢にも思わなかっ       た。」

「ケ・サラは、高校のとき、学年合唱で歌ったの。

 だから、すごく懐かしい曲。」

「へえ、日本に伝わって、合唱で歌われたりしてるんだ。」

「けっこうメキシコの歌、日本に来てるわよ。

 例えば、♪ラクカラーチャ、ラクカラーチャ・・・」

「ふ~ん。『ラクカラチャ』って『ゴキブリ』のことだって     知ってた?」

「えええ?知らなかった。小学校の音楽の教科書に載ってる     のよ。」

「きっと子供向けの歌に変えられているんだね。

 でも、ラクカラチャの言葉は、残っているんだ。」

「そう。でも、この言葉好きだけど。」

「うん、可愛いよね。」

「可愛くは、ないけど。」

二人で、笑い合いました。

 

第2ステージがはじまりました。

曲が、少し違っていました。

最後に、「シエリト リンド」をもう一回歌ってくれました。店中で盛り上がりました。

 

第2ステージが終わって、私は立ち上がりました。

ホセが来て、ホテルまで付き添ってくれると言います。

「第3ステージに間に合う?」

「40分あるから、間に合う。」

そこで、ホセに付き添ってもらうことにしました。

話が、とても弾みました。

 

「ジュンが、この街の人だといいのに。」

とホセが言いました。

「ホセもニューオリンズの人だといいのに。」

と私はいいました。

 

ホテルに20m位のところへ来ました。

私は、足を止めて、

「もうここまでで十分。ありがとう。」

と言いました。

ホセが、私を見ています。

あ、これは、もしかして、と思いました。

男の子を前にすると、私は、心が女の子に近づいてしまいます。私は、目をつぶりました。

ホセが、私の唇に、チョンとキスをして、

「また、会おうね!」と言いながら走っていきました。

「ありがとうー!」と言いながら、私は大きく手を振りました。

 

私は、夜空を見て、それから周りの建物を眺めました。

「名残惜しい」という言葉が、そのときの私の心を、うずめていました。

 

<おわり>

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 ホセのお誕生日に、再び「ソンブレロ」に行きました。

     誰がホセだか、一目でわかりますね。


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