ミミ、男の娘に好かれる④「ミクのママと会う」
ミクの家は、カラオケから遠くなかった。
静かな住宅地の中の、とてもモダンな家だ。
背の高い玄関ドアを開けて中に入ると、ミクのお母さんが急いでやって来た。とても、綺麗なお母さんで、まだ、若く見える。
「ミミ、おかあさん。と、ミクはミミを紹介した。
母の道子は、ミミを見るなり、ぱあ~と顔を輝かせた。
「ミミさんね。まあ、目がお綺麗だわ。」と、母。
「あの、私だとお分かりになるんですか。」と、ミミ。
「ええ、キッチンにいらっしゃれば、お分かりになるわ。」
3人で、キッチンに行き、ミミとミクは並んで座った。お母さんは、ココアを入れていた。
「ミミさん、あそこ。」母は、壁の鴨居の上を掌で差した。
「わあ~。」と、ミミは声を上げた。鴨居の上に色紙がありそこに人物が描かれている。黒一色の細い線をたくさん組み合わせて大変巧みな絵になっている。その人物は、紛れもなくミミだった。
「家の中に、ミミさんの絵は、あの1枚だけなんですよ。ミ クがね、似顔絵は、家の中にたった1枚だけ貼るものだっ ていうんです。だから、主人の絵も、あの1枚だけ。」
道子は、反対側の鴨居を差した。そこにいるのは、ミクのお父さんらしい人だ。とても、やさしい眼差しの人。
「母さん、今日あたしね、大人をからかうような真似をしち ゃったの。で、怒られて逃げてるところ、ちょうどミミが いてくれて、助けてくれたの。ミミ、すごく強いの。それ で、あたし、お返しにならないんだけど、ミミの宿題の時 間奪ってしまったから、ミミの宿題を引き受けることにな ったの。」
「まあ、ミミさんありがとうございます。ミクのお返しなん て、お返しにならないんでしょうけど。」母は、そう言ってた。
<自分も男の娘とたっぷり楽しんじゃったのに>と良心が咎めたが、ミミは、黙っていた。
「ミミ、リュックに英語のノートとか入ってる?」
「うん、入れてある。」
「じゃあ、貸して。ミミが写してると時間かかるでしょう。 だから、あたしが、一人で書いちゃう。」
「だって、あたしの字じゃないとまずくない?」
「大丈夫。線からはみ出るような元気な字で書いておくか ら。」ミクは、にっこりい笑って、2階へ上がって行った。
<ミクって相当頼もしいなとミミは思った。>
道子とミミが二人だけになったとき、道子は、ふと真剣な顔をした。
「あのう、ミクは、あんな女の子みたいで、学校で嫌がらせ を受けたり、いじめられたりしていないでしょうか。」
「あ、それは、大丈夫だそうです。今日、いっしょの友達が 言っていました。ミクは、勉強が学年で1番だから、誰も 意地悪なんかしないそうです。学年で1番の子は、みんな が大事にします。」
「それなら、少し安心しました。
実は、ミクが女の子のようになってしまったのは、あたし のせいなんです。あの子が4才のとき、あたしは女児の洋 服デザイナーとして、一番がんばっているときでした。そ して、できた服を家で試作して、ミクに着てもらったんで す。ミクは、とても喜びました。それに、とても可愛く て、よく似合いました。それから、ミクに試作品を着ても らう日が続きました。
ミクが5才のときです、あたしは、ミクの髪を伸ばした ら、もっと可愛くなるのにと思いました。そして、小学校 までのあと2年だけ、髪を伸ばそうと話しました。ミク は、とても喜びました。そして、2年が経ち、いざ小学校 が始まるとき、ミクの髪を切ろうとすると、ミクは、死ん でも嫌だと言い絶対切らせませんでした。髪は、背中まで 伸びていました。」
「それは、そうだと思います。あたしのようなボサボサ髪で も、例えば、ストレートパーマかけて、可愛いボブにしな さいって言われたら、死ぬほど嫌がります。」ミミは、言った。
(後編に続きます。)
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<ミミには、あまり似てませんが・・>
ボニーピンク(HB)
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