ミミは、合気流道場の宝。小学6年生で9段をとった天才少女です。今、中学2年生。このお話は、2年前に再投稿しています。ご記憶の方には、失礼いたします。
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ミミ・男の娘に好かれる①「男の子たちとの出会い」
ミミは、宿題がたくさんあったので、体育館の合気流の仕事を一人早く終えて、川沿いの遊歩道を歩いていた。
季節は十月に入り、ミミは、長袖の白いTシャツに、ジーンズ。
やがて、後ろから、叫び声がする。
「ミミー、待って!助けて!ミミ、助けて!」
女の子の声だ。
振り向くと、メイド喫茶から出てきたような、水色の可愛い服を着た子が、小さなバッグを抱えて逃げて来る。その後ろを、40才位のがっちりした男が追いかけている。
女の子が、どうにか逃げてミミの背中に隠れたとき、男は、ミミの目の前にいた。
「どけよ。」と、男。
「訳を知るまでどかない。」ミミは言った。
男が、ミミの体を無理やりどかそうとしたので、ミミは、さっと男の腕をひねり、後ろ手に回して、男を地面に胡坐座にした。
「おじさん、訳を言って。」ミミは、男の背中からそう言った。
「この女がよ。ビルの壁にもたれて、いかにもナンパしてください風な目で俺を見るのよ、だから、ちょっと声をかけてやったさ。そしたら、『ごめんね。あたし、男なの。』とかぬかしやがる。こいつが男の訳ねえ。このアマ、大人をからかいやがるのか、そう思って、拳骨の一つでもくれてやろうと思ったら、逃げやがったってわけさ。まだ、中坊かも知れねえ。とんでもねえ不良だ。」
「おじさん、わかった。」ミミは男の手を離した。
「あとは、この子に話を聞くからさ。この子がいけないなら、おじさんの代わりに、たっぷり叱っておくね。だから、ここは、引き上げてくれない?」
男は、ゆっくりと立ち上がった。ミミから見て、悪いおじさんには、見えなかった。
「承知だ。あんたから、たっぷり説教しておいてくれ。あんな真似してたら、いつかひでえ目に合うっぞってな。
ところで、ミミとか呼ばれてたな。あんた、恐ろしく強えーな。俺だって、若い頃は武道やってて3段だ。その俺を、あっという間に後ろ手にとって、地面に座らせるたあな。何流だい?」
「合気流。おじさん、知ってる?」
「あたりめーだ。合気流には、勝ったことがねえ。そうかい、納得だ。」
そう言って、男は去っていった。
女の子を見ると、涙ぐんでいる。怖かったのだろう。
ミミは、女の子を、そばのベンチに連れて行き、並んで座った。女の子は、高い厚底の靴を履いていて、その分だけミミより背が高い。
ミミが、1番に不思議だったことを聞いた。
「ね、あたしの名前を何度も呼んだでしょ。あたし、あなたのこと知らないよ。」
女の子は、ひくひくしながら言った。
「ぼ、ぼく、ミミと同じクラスの村山圭吾。」
「えええ?村山くんなの。じゃあ、ほんとに男の子だったんだ。で、ナンパされに壁に立ってたってほんと?」
「うん、ほんと。男の娘の友達あと3人いて、ちょっと離れて壁に立ってて、女の子に間違えられて、声を掛けられたら、『ごめんなさい、男です』って謝る遊びだったの。危ないことだってわからなかった。前、テレビで、可愛い男の娘が街でやってて、面白そうだなって思ったの。」圭吾は、声を上げて泣き出した。
「そうかあ。でもさ、テレビなら、カメラマンがそばにいるじゃない。マイク高く掲げた人がいるでしょう。それに、声かけて来る男は、ヤラセに決まってるじゃない。」
「うん。考えてみたらそうだよね。気が付かなかった。」
圭吾は、ますます泣くばかりだった。
ミミは、改めて、圭吾を見た。泣き声が女の子だ。教室でも、圭吾は、女の子声だ。男子の中で、ただ一人、髪を肩まで伸ばしている。顔立ちが可愛く、5人に4人は女の子だと思うかも知れない。
ミミは、泣いている圭吾の背に手を当て、ポンポンと背中を叩いた。
「危ないことだって分かったんだから、もういいよ。もうしなければいいんだから。」
「うん。もうしない。逃げて行く先に、ミミがいてくれてよかった。もし、いてくれなかったら・・・。」圭吾は、声を詰まらせ、両手を顔に当てて、肩を揺らして泣いた。
(第2話につづく)
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<4人の女装子>
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