この作品は、かなり昔に書きましたもので、内容をすっかり忘れていました。読んでくださると、うれしいです。(6話完結です。)

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英二のサンタさん①「女の子の服をお願いする男の子」

 

 

英二は利発で、5歳のときにひらがながかけた。
そこで、サンタさんのクリスマスのお願いにこんなこと書いた。

『ぼくに おんなのこのふくを ください。』

両親の啓二と和歌子は、それをほほえましくみた。
英二は、髪を長く伸ばしていたし、女の子のように可愛い子だったので、
女の子の服がさぞ似合うだろうと思った。

そこで、コールテンの赤いワンピースを買って、
それを袋で包み、リボンをつけて、クリスマス・イブの日に、
寝ている英二の枕元に置いた。



明くる朝、英二は誰よりも早く起きて、
サンタさんのプレゼントを見つけた。
「わあ~い、お願いがかなった、お父さん、お母さん、見て!」
と英二は言った。
「あら、よかったわね。」母の和歌子は、そう言って、
英二に服を着せ、それから、英二の長い髪を、より女の子風にセットしてやった。

英二は大はしゃぎだった。
啓二も和歌子も悦び、写真やビデオにたくさん治めた。
1日じゃもったいなと英二がいうので、大晦日まで、女の子でいいことにした。
夕食のテーブルで、英二が、「ぼく」なんていうと、
和歌子は、「女の子は、あたしでしょ。」などと言って、おもしろがった。

啓二と和歌子は、英二を連れて、近くの公園に行ったし、
映画館にも行った。
英二は、大はしゃぎだった。



英二が6歳の、クリスマスの日。
英二は、また、同じお願いをした。
啓二と和歌子は、また、うきうきしながら、
可愛い女の子の服を買いに行った。
英二は、大喜びして、大晦日まで、女の子になった。
楽しい日々を家族中で過ごした。

英二は、小学校にあがった。
英二は、髪を切ることを、死ぬほど嫌がったので、
啓二と和歌子は根負けし、肩に届きそうな長髪のまま、英二を入学させた。

その年の、七五三のとき、啓二と和歌子は考えた。
「そのうち髪も切るだろうし、英二の髪の長いうちに、女の子として、写真を撮ってみない?」
という和歌子の提案に、啓二は、賛成した。

英二は美容院で、和風に髪を結ってもらい、少し化粧をして、
きちんとした着物を着て、記念の写真を撮った。
だれも、英二が男の子だとは思わなかった。
啓二と和歌子は、英二を、英子と読んでいた。



英二が、小学1年生になって、
クリスマスが近づいてきた。
英二は同じお願いを書いた。

英二が寝た後、
啓二と和歌子は、英二の女の子へのなりたがりは、
いつまで続くんだろうと考ええいた。
そのうち、プラモデルや、ゲームを欲しがるよ、と啓二は言った。
そうね。英二の女装は見られなくなるけど、そうなるわよね、と和歌子も思った。

ところが、英二は、2年生になっても、3年生になっても、
女の子の服を、サンタさんにお願いした。
3年生のときは、ちゃんと女の子の下着もくださいと書いてあった。

啓二と和歌子は、顔を見合わせた。
「いくらなんでも、来年4年生になったら、もう女の子の服は願わないよ。」
「そうね。4年生が、サンタはいないってわかる年頃だと聞いたし。
 今年が最後だと思って、盛大にやってあげましょう。」

この年、啓二と和歌子は、女の子の下着を買い、バッグと靴も買い、
外出用のおしゃれなドレスを買った。
そして、遊園地へ行ったり、レストランに行ったり、英二を喜ばせた。
大晦日まで、和歌子は、英二の髪型を毎日変えてやった。



英二は、4年生になり、クリスマスのシーズンが近づいた。
英二は、また、紙にサンタへのお願い事を書いて、
クリスマス・ツリーのところへ置いた。

英二が寝た後、啓二と和歌子は、その紙を見た。
すると、女の子のファッション画が描いてあり、
こんなデザインの服をください、と描かれてあった。

「どうしましょう。」と和歌子がため息をついた。
「こまったな。もう、女の子の流行りの服を意識しているよ。」
「もう、1年、やってやる?」と和歌子。
「来年は、やめると思うか?」と啓二。
「思わない。6年生になってもやめないと思う。」と和歌子。
「サンタさんなんか、ほんとうはいないんだって話そうか。」
「じゃあ、お父さんとお母さんが、買って、っていうわ。」
「そうだな。同じことだな。」と啓二は言った。

「私達の責任かもね。」と和歌子が言った。
「英二が幼いとき、英二の女装をおもしろがってちやほやしたのあたし達だもの。」
「そうだな。七五三の写真まで撮っちゃったな。
 あの次期に、女装への喜びを与えてしまったのかな。」
「そうかも知れない。ああ、どうしよう。」和歌子は頭を抱えた。
「学校での様子を担任の先生に聞きに行こう。」
「そうね。まだ冬休みに間に合う。」

つづく(つぎは、「学校での英二」です。)

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          <英子イメージ>

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