少し短いです。

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<第7話>看護師江崎裕美<最終回>

 

 

9月の末、ナースステーションの皆にとって、嬉しい発表があった。

外科部長の高坂美由紀は、二人の名を呼んだ。

湯川吾郎と篠田沙月が、前に出た。

高坂は、言った。

「本日は、大安ですので発表いたします。

 湯川吾郎さんと篠田沙月さんが、結婚されることになりました。」

みんなが、顔を見合いながら、大歓声を上げた。

「いいなあ、湯川さん、篠原さんだなんて、上手くやったな。」

「湯川さんは、あたしが狙っていたのに、もうだめか。」早苗と美奈がそう言った。

温かい野次がたくさん飛んだ。

 

高坂は続けた。

「私達は、病院勤めですので、この病棟を長く不在にするわけにはいきません。

 そこで、式だけはご親戚だけで行い、

 その後、回に分けて、祝う会をしたいとのことです。

 只、新婚旅行は、少しでもいらっしゃれるよう考えていま     す。皆様、その点、よろしくお願いします。」

高坂の言葉のあと拍手があった。

 

湯川があいさつをした。

「不在の間、よろしくお願いいたします。

 私は、2年と少し前、篠田さんに会って、一目惚れをしま     したが、2年余り、全く私的なことで、口を利くことも出     来ませんでした。

 それが、ほんとにふとしたきっかけで、お話ができ、互い     に思いを伝えることができました。

 沙月さんと、冗談に笑ったことがあります。

 この病棟に、キューピッドがいるねって。

 それが、人なのか、物なのかわかりませんが、未婚の方。     キューピッドのいるうちに、願いを叶えられますよう、

 祈っています。」

拍手があった。

 

次に沙月が言った。

「不在をします。よろしくお願いいたします。

 私にとって、キューピッドは、1枚のチョコレートでし       た。湯川さんに、その一枚を差し上げたことで、自分の気     持ちを伝えることができました。

 でも、もう一人、キューピッドさんがいてくれたと、私       は、思っています。

 誰なのかは内緒ですが、私はその方に、心の中で大きな感     謝をしています。みなさんも、その方に、愛の矢を放って     もらってくださいね。」

沙月は、礼をした。

みんなの大きな拍手があった。

 

会は終わり、方々で、ひそひそ話が始まった。

早苗と美奈も、その一組。

「ふーん、キューピッドがいるのね。誰かしら。」

「キューピッドのイメージは、○○ちゃんしかいないわ          よ。」

「でも、どうやって矢を射たの?」

と首を傾げた。

 

絵里が裕美のそばにきた。

「あたし、知ってるわよ。誰がキューピッドか。」

「そ、そうなの?」

絵里はにこっと笑った。

「あたし達も、早くキューピッドさんに矢を射ってほし          い。」

「ここに来た初日に、射ってくれたよ。」

「うふん、そうね。」

「楽しみだね。」

二人は、そう言って、うふふと肩をすぼめた。

 

<おわり>

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            <キューピッドのイメージ>

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