「エキストラのアルバイトでセーラー服を着た」(実話です。)2014年

 

 

学生1年目の5月の頃です。

昔は、高校生は、ふつうアルバイト禁止だったのです。

(今では、OKですよね。)

だから、学生になったら、さあ、バイトだあとの気分でした。

 

エキストラというのは、映画やドラマで、セリフのない通行人とか、

ボクシングの試合の観客とか、頭数いればいいという仕事です。

 

そんなエキストラの仕事があるというので、行ってみると、

そこは、〇〇プロダクションと名乗っているところでした。

ビルなんかではなく、1軒屋を改造したようなところです。

 

どんな仕事かも告げられず、日当1500円だというので、行きました。

マイクロバスに、男子10名、女子10名ほどが乗り、

プロダクションから、八王子まで行きました。

着いたのは、見晴らしのいい、ある私立高校でした。

 

バスから降り、プロデューサーのような人から初めて仕事を聞きました。

当時、人気だった「奥様は18歳」というドラマの撮影です。

主演は、当時超人気のあった岡崎友紀、そして石立鉄男でした。

私は、岡崎友紀のファンでしたので、

実物が見られると、大興奮でした。

「岡崎友紀かあ。今日は当たりだな。」

「そうだな。楽しみ~。」

などと、みんな言っていました。

 

で、助手のような人から説明がありました。

私達は、岡崎友紀の高校の男子生徒、女子生徒になるとのことです。

男子エキストラの10人は、学内の階段の下に連れていかれ、

そこに大きな段ボールがあって、その中に、学生服が入っていました。

「みんな、サイズの合うものを探して着てね。」

と言われました。

当時の学生服は、爪襟で、5つの金ボタンのものです。

みんなは、一斉に自分に合う服を探し始めました。

しかし、私は小柄なので、みんなサイズが合いません。

これもダメ、あれもダメとうろうろしているうち、

みんなは、すでに選んで着ているのに、私だけ着ていません。

段ボールに1つだけ残っていたのは、

大番長が着るような、超ぶかぶかの1着でした。

 

私は、困って、助手の人を呼びました。

「え?他に残ってないの。」

と助手の人は、段ボールを除きました。

「余分に用意しとけって言ったのになあ。」

と、頭を掻きながら独り言を言いました。

 

そのうち、助手の人は、私の顔を見ています。

そして、言いました。

「君さあ、やさしい顔してるし、セーラー服じゃ恥ずかしい?」って。

「あの、ぼくが、セーラー服着るってことですか。」

「うん、セーラー服は、まだ、たっぷり残ってるから。」

「あ、いいですけど。」

と、私が答えると、いっしょに来た男子達が、歓声をあげました。

私は、恥かして顔を真っ赤にしていましたが、

内心は、うれしくて、飛び上がりそうでした。

 

助手の人が、セーラー服を持ってきました。

Mサイズ。

私に、ドンピシャです。

助手の人は、着るのを手伝ってくれました。

生れて初めて着るセーラー服(でも、なかったのですが)。

感動でした。

 

私が着終ると、男子達は、にこにこして、

「おおお、君、いいよ。」

「髪だって長いし、ぜんぜん変じゃないよ。」

「すげー、ぜってえ女の子に見えるよ。」

そう言って、みなさんが大きな拍手をくれました。

 

私は、助手の人に連れられて、外に出て、

女子達が固まっているところに、連れて行かれました。

「ねえ、この人男子なんだけど、

 サイズが合わなくて、セーラー服着てもらったから、

 女子ということで、中に入れてね。」

助手の人はそう言って、行ってしまいました。

女の子達。

「えええ?」「ほんと?」「ウソでしょ?」

「可愛い!」「女の子に見える!」「キャー、最高!」

などと、とても喜んでくれました。

そして、ちやほやしてくれました。

 

岡崎友紀を見ました。

テレビだと、ぽっちゃりして見えるのに、

実物は、痩せているくらいで、思ったよりずっと小柄でした。

そして、テレビより、ずっと可愛く見えました。

 

エキストラたちは、高校の玄関前広場で、

2人、3人になって、話などしながら、なんとなくいるという感じでした。

私は、女の子1人と一緒に、外階段の中ほどで話をしていました。

 

岡崎友紀と石立鉄男が、その階段を上って来ました。

カメラが、地上で2人を撮影していました。

2人が私達の横を上って行ったので、

(わあ、私達、映ってるかも!)

と2人で盛り上がりました。

 

 

私達がエキストラをやった場面は、4週間後の放送だと聞きました。

私は、その日が待ち遠しくて、指折り数えていました。

セーラー服を着ているので、恥かしくて、家族に言えませんでした。

 

いよいよ、放映の日、放映の時刻になって、

私は、一人、父の仕事部屋のテレビを一人で見ていました。

胸が、ドキドキしました。

ああ、もうすぐ!

画面が、岡崎友紀と石立鉄男が、階段を上っていくシーンになりました。

そして、私達2人は映ったのですが、スカートから下の脚だけだったのです。

せっかくのセーラー服、全身を映して欲しかったです。

残念無念でした。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

              <こんな感じでした>

励ましの一票を!