新しいパソコンが、全然わかりません。古いパソコンが動くうちに投稿します。
物語は、あと2回です。長いお話ですが、最後までお付き合いくださるとうれしいです。

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昼休みになった。
私は思いきって麻衣に言った。
「ぼく、麻衣と手をつないで、外を散歩したい。
 女同士に見えるからいいかなって思って。」
麻衣はしばらく考えていて、
「うん。行く。連れて行って。」と言った。

私は麻衣と手をつないで、校庭に出た。
手をつなげて、すごくうれしかった。

外は快晴の空だった。
「外もいいね。」と私は言った。
「うん。ジュンがいるから、平気。」
と麻衣は、外の空気を胸いっぱいに吸いながら言った。



私たちは、手をつないで、校庭の花壇や、
飼育の小鳥達を見に行った。
それから、ドッジボールをやっているクラスの女子達のそばに行った。
しばらく見ていたら、
「ジュンと近藤さんも入りなよ。」とみんなが声をかけてくれた。
「麻衣どうする?」と聞いた。
「やってみる。」麻衣はそう言った。
そこで、2人わかれて、コートに入った。
「ジュンは、男の子だから、本気出しちゃだめよ。」と言われた。
「うん、じゃあ、左手でやる。」そう言った。

麻衣は楽しそうにやっていた。
私はそれがうれしかった。



学校からの帰り道は、麻衣と途中までいっしょだった。
もちろんいっしょに帰った。手をつないで。
「この学校の先生も、生徒も変わってるね。」と麻衣が言った。
「どうして?」と私。
「だって、ジュンがセーラー服着て学校へ来たって、すごいことなのに、
 ほとんどみんなびっくりしない。
 ジュンの言葉を聞いて、あっさり理解してた。」と麻衣。
「それは、去年、ひとみって子が、男子だったんだけど、
 心は女の子だったのね。そこで、学校は、ひとみを女子として扱うことをOKしたの。
 そのとき、先生も生徒も、そういうのみんな理解した。
 だから、ぼくのときも、すぐわかってくれた。」と私。

「今日、外でドッジボールしたとき、
 あたしだけなら怖かったけど、
 ジュンもいてくれたから、すごく安心できた。
 ジュンありがとう。」と麻衣。
「ぼくは、麻衣と手をつないで歩けて、
 最高に幸せだった。手をつないでくれて、ありがとう。」

私たちは、そう言い合って別れた。



六月の中旬になって、生徒は夏服に変わった。
私はリーダーに夏服ももらっていたので、大丈夫だった。
夏服は、スカートも薄手だった。
麻衣の夏服姿は、眩しいくらいステキで、私はため息が出てしまった。

私は毎日毎日夏のセーラー服で登校した。
中休みや昼休みは、かならず麻衣をさそって校庭に行った。
そして、ドッジボールに入って遊んだ。

麻衣の言葉は日に日に増えて、とても楽しそうにしていてうれしかった。

ドッジボールにそのうち男子が入るようになった。
男子は聞き手と逆の手を使うルールで。
私のクラスは、男女の中がかなりよいクラスだった。

麻衣は、男の子にボールを当てられたとき、
「あーん、やられた。」などど、男子に向かって言えるようになってきた。

こうして、ドッジボールをしながら、
麻衣は、ある女子グループと行動を共にするようになった。
それは、真面目で、性格もやさしい人達のグループだった。
私から見て、最適なグループに麻衣は入った。
あのグループにいれば、もう安心だと思った。

麻衣は、前の麻衣ではなかった。
明るくおしゃべりな麻衣になっていた。
男子とも、気軽に話せるようになっていた。

そのうち、私がそばにいなくても、麻衣は平気になってきた。
麻衣は、もう大丈夫。
それが、うれしくてたまらなかった。

私はまた、休み時間は、教室でガリガリ勉強するようになった。
麻衣が外に行けるようになったから、私は一人になった。
少し淋しかった。
でも、合気道の稽古で、家ではほとんど勉強をする時間がなかったから、
休み時間は、貴重な勉強の時間だった。



そんなある日、私は男子の夏の制服に戻って、登校した。
「ジュン、心が男に戻ってきたのか。」とみんなに言われた。
「うん、晴れ時々男。」と答えた。

麻衣が来た。
私の男子服の姿を見て、私を見つめていた。
気のせいか、麻衣の目が潤んでいる気がした。
麻衣は、私の隣に座って、ややうつむき加減だった。
どうしてかな…私は思っていた。



次の日、昼休み、私は一人で勉強していた。
教室の入り口に、何人かの低学年の女の子がいた。
私は、その中の一人がすぐ誰だかわかった。
麻衣の妹の由紀ちゃんだ。
「入ってもいいですか。」と由紀ちゃんは言った。
「どうぞ。」と私は急いで髪を真ん中から分けて、太目の眉を見せた。
こうすると、かろうじて男子に見える。
「加納純先輩ですよね。」
「うん。そうだよ。」
「わあ、やっぱり実在したんだ。」と由紀ちゃんは感激していた。
「そんなお化けみたいに。」と私は笑った。
「いえ、加納純っていう男子の先輩がいるって聞いて、
 一目会いたいって思ってたんです。
 先輩は、女のジュンさんとよく似ています。」
「女のジュンとぼくは、従姉だから、ちょっと似てるかな。」と私。
「純先輩は、近藤って先輩に告白とかされました?」と由紀ちゃん。
「うん。したよ。ぼくは、近藤さんが、大好きだから。」と私。
「そうですか。お会いできただけでうれしいです。」
と由紀ちゃんは、頭を下げて教室を出て行った。

教室を出たあと、「わあ~、いたー。告白もほんとだー。」なんて友達に叫んでいた。



期末テストが終わり、成績が出た。
朝、担任の岡田先生が、成績簿を持って来た。
「えー、3年6クラスあるなか、我がC組は、優秀です。
 学年のトップと2番が我がクラスにいる。」

みんなが、「うおー。」などと言っていた。
先生は、
「発表しよう。320人中、第2位は、近藤麻衣。」

みんなが、わあ~と歓声を上げた。
「近藤、えれえぞ!」などと意外に男子から声が上がった。
男女みんなが盛大に拍手をした。
麻衣は、うつむいて少し赤くなっていた。

よかった。麻衣はもう100点のテストを隠したりしなくてすむ。
みんなが、麻衣を認めたから。


つづく

■次回予告■

男姿の純が、麻衣の家に招待されます。
家族の前で、麻衣は、純に「感謝の手紙」を読みます。

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昨日の投稿がされていたようで、ほっとしています。
ポチもたくさんいただきました。ありがとうございます。
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