新作ができません。そこで、最投稿をまたいたします。

このお話には、前段があります。
T大合格者数日本第一位とう開明高校の3年トップ2は、ミユとリリというGIDの生徒です。
ある事件から、ある女子生徒を救った功績により、二人は、女子生徒として学校に通うことを許されます。
二人は、その美貌から、学校のマスコットになっています。

女装が出てくるのは、主人公の二人だけで、あとは普通の物語で、恐縮です。
5回のお話を、3回に分けて掲載します。よんでくださるとうれしいです。

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「全国高校生クイズ大会」

7月の初め、開明学園校長室に、2人の訪問者があった。
一人は、TDS放送局のプロデューサーの押上。
もう一人は、企画部の森崎。

森崎が言うには、放送局毎年恒例の、「全国高校生クイズ大会」に、
今年も開明学園に出場してほしいとのこと。
全国生放送である。

条件は、高校3年生。学年でトップ2の2人。
この大会は、毎年開明が優勝している。

これまで、2つ返事でOKを出した校長は、
今年に限り迷った。
2年のトップ2と言えば、志村幸一(ミユ)、大野雅文(リリ)だ。
しかし、あの二人は今、女子として通っている。
開明に女子がいることを知られるのはまずい。

また、あの二人は、GIDである。
それが、公になるのは、個人情報保護という点でもまずい。
GIDが、知られなくても、あの二人は、美人で可愛い。
その二人が、開明のトップ2だと知れると、マスコミの引っ張りだこになるだろう。

校長は、一先ず話は聞いたとして、後ほど連絡すると言った。
TDSの二人は、いつも即OKなのに、今年は何かあるのか、と聞いてきた。
「ええ、まあ、本人の承諾を取らねばなりませんし。」と校長は答えた。

この「全国高校生クイズ大会」は、T大合格者数と同じくらい、学校の名を売るチャンスなのだ。



二人が帰った後、その日の放課後、
校長は、副校長、教務主任と相談した。
「3、4番を出したらどうですか。」と副校長が言った。
「だめです。3番の江藤は、期末テストの平均が、85点。
 比べて、あの二人は、98点ですからね。
 全国模擬試験でも、二人は、10番以内です。
 江藤らは、300番外ですからね。
 3、4番では、勝てません。」と教務主任は言った。
「志村と大野では、スクープ記者にねらわれて、フォーカスされるからな。
 あれだけの美貌だ。」と校長が言った。

そこで、3人は、志村と大野を呼んで、事情を話した。
そのうち、志村ミユが言った。
「開明の1、2番が、どうしても出場できなくなり、
 他の学校の女子だが、任せられる2人を代理として立てたと。
 この二人の学校名は、秘密ということにして、
 当日は、私服で、メイクを濃くして、素顔が分からないようにして出ます。
 そして、この2人が負ければ、そのまま開明の負けと考えてほしい。
 そういう言ってはどうでしょう。」

「開明より学力のある女子を頼んだと思われないかね。」と校長。
「大丈夫ですよ。全国女子高のトップ3の学校が出るわけですよね。そのトップ2が出る。
 その6人は、全国女子のトップ6人ではありませんか。
 それ以上の女子を見つけることはできない道理ではないでしょうか。」
ミユは言った。

「う~ん。かなり苦しいいい訳だが、それしかないな。
 じゃあ、全校生徒に口止めをせんといかんな。
 みんな母校のためだ。言わんだろう。」と校長。

「よし、その線で行くか。で、番組が終わる少し前に、2人は姿をくらます。
 その作戦も考えておこう。」校長。

TDSのプロデューサーに連絡をとった。
校長は、それ以外の方法では、出場できないと言った。
そして、代理の2人が、負けた場合は、開明の負けと考えてもらってけっこうと、それを強調した。

プロデューサーは、承諾した。
開明は、西の雄・灘川高と優勝を争ってきた。
出場高の中に、開明がなければ話にならない。
代理でも、開明を背負ってくる2人だ。
それで、行くしかないと思った。

「彼女達の素性が知れぬよう、私服で派手なメイクをして行くが、いいか。」と校長は聞いた。
「かまいません。開明の実力を見せてくれればね。」とプロデューサーは言った。



大会は、7月25日(日曜日)。
学校の最終日の7月18日。
開明高校では、全クラス一斉の学級指導が行われた。
「出場の二人が、我が校の生徒であることを、絶対言ってはならない。
 もし、これがバレたら、あの二人は転校のはめになる。
 名前も言ってはならない。あくまでA子、B子と呼ぶこと。
 家族にもないしょだ。
 ここは、一切、開明の団結をもって、彼女達の守るのだ。」

各クラス、このように、二人の身分を全校一致で隠すことが、
何よりも大事だといい聞かせた。
生徒達の反応は、「ヨッシャー!」というものだった。

前日、二人は、黄色と赤の、ロングのストレートのボブへヤーを見つけた。
そして、素顔が分からないほどの厚化粧を研究した。
目は、上下長い付け睫、アイライン、濃いシャドー。
赤い唇。濃い目のチーク。
「どう?」と二人顔を見合わせ、笑った。
「ケバイ、リリ、最高にケバイわ。」
「ミユだって、そのままクラブに出られそうよ。」

当日。自分達の部屋でメイクをした。
そして、花柄の少し膝上のワンピースをきた。
ミユはブルー系。黄色のかつら。
リリは、ピンク系。赤いかつら。

メイクを落としたときの着替えを一応紙袋に入れて行った。

5時に、
放送局のタクシーが来てくれていた。
そして、TDSへ。

会場には、ミユ、リリの同じクラスの生徒が応援として、
ちゃんと席が与えられていた。
出場の6校とこれは同じだった。
時間が来るまで、みな、廊下で待たされていた。

出場者は、簡単な機械の操作を教わり、
全員が見えるスクリーンの位置や、
イヤホーンの調子を確かめた。
全員、一端引き込んだ。

番組開始は、あと15分。
みんなは、控え室で待った。
女子の部屋は、全員が制服。
ミユとリリは、じろじろと見られた。
それは、無理もない。
派手な、ワンピース、カラーのロングの赤のボブ、黄色のボブ。
べっとりとした真っ赤な口紅。

「なによ、あいつら。」と声がする。
リリは、それを耳にして、
「みんな、今日はがんばろうね、女子力を見せちゃおう。おー。」
と気合をかけたが、だれも乗らなかった。


つづく(次は、「クイズ大会始まる」です。)

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<第2話>大きなハプニング

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座席順に、正面舞台の左の袖に出場者は、並んだ。

自分達の場所に、デスクと椅子2つが用意されている。
司会の男性は、名のよく知れた年配の人だった。
クイズ大会を盛り上げる言葉をがんがん飛ばしている。
「では、最初の出場高、ラメール学園どうぞ。」
ラメールの2人が出て言った。
同好の生徒達がすごい応援をする。

司会は、二人の特技を紹介する。
「A君は、漢字検定1級の秀才です。
 B君は、数学検定2級の実力です。
 では、ブースにどうぞ。」
2人は、一番左のブースに座った。
次は、神戸女学園。
二人は、英語と数学が大得意と紹介された。

次は、西の雄、灘川高校。
ひときわすごい拍手が起きた。
毎年、優勝候補の開明を脅かしてきた。
「灘川の今年は、天才君とその名前を欲しいままにし、
 数学オリンピックに入賞したてきたAくんがいます。
 B君も彼に匹敵します。」

その天才君は、以下にも前頭葉が発達した感じで、
みるからに賢そうだった。
「ミユ、あんな子がいるよ。」とリリが小声で言った。
「恐い。や~ね。」とミユはいった。

灘川の次は、緑陰女学園。
「毎年、40人もの生徒をT大に送り込む、恐ろしい女子高校です。」
あの2人が、緑陰のトップ2かとみんなは見た。
「次は、女子高2番手の名門女子学園。
 緑陰女子を脅かす存在です。」
最後に、開明だったが、司会者は、説明をした。

「次は、開明ですが、ちょっと説明いたします。
 実は、開明のトップ2が、そろって急病に倒れました。
 この大会は、トップ2を出すのが鉄則ですので、
 その倒れた2人に、他の学校でもいいから代理はいないかと聞きました。
 そこで、その代理のお二人が、開明を背負って
 戦ってもらうことになりました。
 開明は、この二人が負ければ、それは開明の負けと、
 そうはっきりと言っています。
 実は、その代理は女子なのです。
 そして、自分の学校には極秘で来ておりますので、
 身分がばれぬよう、少々、派手な格好をしております。

 では、開明代理のお二人どうぞ!」

司会者に言われて、ミユとリリが出ていくと、
会場が、おおおおおとどよめいた。
多分、全国の家庭が、おおおと見ただろう。

赤と黄色の髪の毛だけで、十分目立つ。

チーフ・ディレクターの室では、ディレクターと助手で、
「あの二人の登場で、視聴率が、20から30に一気に跳ね上がりました。」
「おお、いいぞ。あの子達にがんばってほしいなあ。」とディレクター。

司会は、二人にマイクを向けて。
「えー学校は秘密ということで、でも、トップ2でいらっしゃるのですよね。」と聞いた。
リリがるんるん気分で、
「はい。女子部では、トップ2です。」と言った。
「女子部といいますと、男子部もあるんですね。」
「はい。」
「ちなみに、女子部は、何人…。」
「はい、あたしたち2人です。」
リリがそういったとき、会場のほとんどの応援の生徒が爆笑。
視聴している全国の家庭が吹き出した。

ここは、チーフ・ディレクターの部屋。
「おお、チーフ、今の発言で、視聴率が35%になりました。」
「そうか、いいぞ、いいぞ。やってくれるぜ、あの二人。」とチーフ。

司会は呆れて、
「あの、天下の開明が肩にかかっています。
 がんばってください。」
「はい、がんばります!」とリリとミユは、ぶりっ子をして言った。

ミユとリリが正直に言っていることを、開明の応援団だけが知っていた。
ミユと、リリは、正面の一番右のブースに座った。
分かればボタンをたたく。すると、赤い丸が飛び出す。

「では、第3回、全国高校生クイズ大会を始めます。
 では、問題Go!」

アナ「第一問、『怒り心頭に何?』
3つあがった。もちろんリユも押した。
司会「神戸女子」
神戸「達す」
司会「×、緑陰。
緑陰「発す」
司会「正解。」次。
アナ「『がんばるので、応援してください。』いい方のミスは。」
司会「はい、ラメール。」
ラメ「がんばりますので、応援してください。」
司会「正解。」

ミユが、「リリ、全部早く押してるのにさ。おかしいよ。」
リリ「ほんとだね。」

問題はどんどん進んで行った。
ミユたちはいくら早く押しても、名指してくれない。
自分達は、まだ0点である。

応援団の方々の学校から、嘲笑が湧いた。
「あんなチャラい女をよこすからよ。
 みて見ろ。あのバカ面をよう。開明は、これで、ドブンだな。」

江藤惇一は、気をもんでいた。
『ミユ、リリ、どうしたんだよ。あがっているのか。
 俺だって、これまでの全部できるよ。しっかりしてくれ。』
開明の応援団たちも、元気を失っていた。

全国の多くの視聴者も、開明を笑物にしていた。
「学力じゃだめだから、せめて、格好で勝負だったのか。
 格好だけはナンバー1だな。」
「あはははは・・・。」などと。

問題は、60問目に差しかかっていた。
その後、舞台では、大波乱が起きる。

61問目のとき、
「あのう。」とリリが手を上げた。
急いで、司会が来た。
「この台は、ボタンを押してからの反応が遅いのかも知れません。
 いくら、早く押しても、差してくれないんです。」
リリがそう言った。
司会「そんなことはありえないんですがね。ちゃんと押していますか。」
リリ「試しに、計っていただけませんか。」

「おお、今度はイチャモンかよ。」とどこからか声がした。

技術のスタッフが、すぐに測定器をもってきた。

そのとき、総合司会が、視聴者に事態の説明をした。

チーフ・ディレクターの部屋。
「おお、チーフ。今のもめごとで、さらに、40%突破です。大変な数字です。」と助手。
 おおそうか。こりゃ、最高だな。
 もし、機械のミスなら、さらに視聴率いくぞ!」とチーフ。

リリ、ミユの台を測定した技術は、顔面蒼白になった。
「0.2秒で赤丸があがるように設定されているのに、
 ここは、0.6秒です。これは、ハンデなんてもんじゃありませんよ。」
技術者はそういった。
そして、試しに残りの5台を全部しらべた。
残りは、0.2秒で異常なし。

これは、一大事だった。全国生放送である。
総合アナウンサーが、この事態を告げると、視聴率が、45%を突破した。

苦情電話受付に、抗議が殺到した。
「局は、人を見かけで判断し、そんなからくりをして、彼女達を笑物にする気だったのか。」
「開明をおとしめるこれは、陰謀だ。
 もし、彼女が抗議しなかったらどうなっていたと思う。責任をとれ!」
「これは、只のクイズ大会ではないぞ。学校の名誉がかかっているんだ。
 わかってるのか!」
などなど。

ほとんどは、開明代理を養護する声だった。

「おお、もうすぐ視聴率50%を越える。ハプニングもドラマの内だな。」
チーフ・ディレクターはほくそ笑んだ。
「チーフ、我が局の失態ですから、自粛してください。」とサブ・チーフがいさめた。


つづく(次は、「『開明代理』の快進撃」です。)

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■次回予告■

機械の不備に対し二人はなんと答えるか。
灘川に30点のハンデを追いながら、
開明の二人は、大進撃を見せます。

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再投稿作品で恐縮です。それでも、
ポチをくださると、うれしいです。