昨日は、再投稿の作品であったにかかわらず、多数のアクセスをいただきました。
とてもうれしかったです。今日も読んでくださると、うれしいです。

=============================

<剛と遥・現代とりかえばや②>「今までのウソがばれる」

剛も遥も背はクラスで高い方だった。

(以後、男の子でいるのを剛、女の子でいるのを遥と書きます。)

その中で、剛は、運動が得意で、男子の遊びの中の中心的存在だった。
一方、遥は、オシャレ好きな母から、しょっちゅう服を買ってもらい、
長く伸びた髪を、いつもオシャレに結ってもらっていた。
勉強もよくでき、運動もでき、そして、オシャレで可愛かったので、
クラスのマドンナ的存在になっていた。

4年生になり、剛と遥かは、いっしょに風呂に入るのをやめていた。

その出来事は、剛が、風呂に入っているとき起きた。
剛は、ふと見ると、股間から、見たこともないような大出血があった。
母をすぐ呼びたかった。
しかし、今呼んだら、自分が女だと分かる。
まずい。しかし、自分には、この出血をどうにも出来ないと思った。
いくら、湯をかけても、次から次と出てくる。
剛は、観念して、母を呼んだ。
「お母さん。来て。血が出てくる。」
母の芳江は、すぐに駆けつけた。
そして、大きなショックを受けた。
『そうだったのか。あの日、剛が急に男らしくなるはずがない。』

母は、とりあえず、対処をした。
そして、遥を呼んだ。
「何、お母さん。」
「ちょっと見せなさい。」
といって、芳江は強引に遥のパンツの中を見た。
芳江はがっくりときた。

芳江は、二人をテーブルに座らせ、
「4歳のあのときからね。剛が急に男らしくなって、
 遥が、女らしくなった。
 お母さんも、お父さんも、すっかりだまされたわ。
 あの日から、今学校で4年生になるまで、6年間もだまされた。
 ああ、どうしましょう。」
と芳江は、頭をかかえた。
「お母さん、さっきの血はなあに?」剛は聞いた。
「生理っていって、女の子が大人になった印し。
 これから、月に1回は、今日みたいな出血があるの。」
「お母さんもあるの?」
「あるわ。やっかいなものよ。」
芳江はその場では、それ以上言わなかった。
父の高志が帰ってくるまで待とうといった。

剛と遥にとって幸運だったのは、
父高志が、理解のある冷静な人であったことだった。

父の高志が帰ってきて、夕食になった。
母は、剛に、
「剛から言いなさい。」と言った。
剛は、もじもじしていたが、勇気を出して言った。
「お父さん。ぼくが遥で、遥が剛なの。」
「え?」と父は言った。
「ぼく達4歳のとき、二人の服を取り替えて、
 男みたいな遥が剛になって、女みたいな剛が遥になったの。
 それで、ずうっと今まできたの。」
「うそだろ!」と父。
「ほんと。ぼく今日生理があって、お母さんにばれたの。」
「ええ?じゃあ、4年生の今までか。」
「うん。」剛と遥は、同時に返事をした。
「ごめんなさい。」と二人で言った。

「そうだったのか…。」
と高志は、皆が思っていたほど取り乱さなかった。
「お父さん、なんか言ってください。
 学校になんて言ったらいいんですか?
 今頃、剛が遥かで、遥が剛だったなんて。」と芳江は泣きそうになって言った。
「芳江の気持ちもよくわかる。でも、今いちばん大事なことは、二人のことだ。
 遥は、自分のこと女の子だと思っているんだろう?」

「うん、思ってる。今更男の子になれない。」
「剛は、自分が男の子だと思ってるんだな。」
「うん。自分が女の子なんて、ぼく死にたくなる。」剛は言った。
「そうか、多分、性同一性障害か…。
 明日、お父さんは、会社休むから、みんなで、クリニックへ行こう。」
高志は言った。

「あなた、それどういうこと。二人は障害なの。」と芳江が言った。
「可能性だけどね。大変な障害だ。
 芳江、もしさ、明日になって、自分に髭が生えていてごらん。
 どう思う。」
「それは、ショックです。」
「それと同じことが、遥に言える。遥は、心は女の子だけど、体は男の子だろう。
 ほっておけば、声変わりがして、髭が生えてくる。男の体になっていく。
 剛は、心は男の子だけど、体が女の子だから、オッパイが大きくなり、お尻が大きくなる。
 耐えられないだろう。
 だから、早いほどいいんだ。4年生で気がついたことを、幸運と思った方がいい。」

「そんな。わたしには、受け入れられません。」と芳江は泣き出した。
「当然だろうと思うよ。いっぺんには無理だよ。
 俺だってそうだ。今、遥が女の体で、剛が男の体だったら、どれだけいいかと思う。
 しかし、そうじゃないんだよ。受け入れるしかないんだ。」

「あたし、男の体になるのいやだ。そうなったら死んじゃう。」
遥がそういって泣き出した。
「俺だって、いやだよ。オッパイなんか出てきたら、外にいけないよ。」
剛もそう言って泣き出した。
「だから、それを少しでも食い止めるために、クリニックに行くんだ。」
高志は言った。

つづく(次は、「二人、クリニックに行く」です。最終回です。)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
※毎日たくさんの票をくださり、ありがとうございます。
 今日も、お願いできれば、うれしいです。