少し前の作品を再投稿します。全3回のお話を、3日に渡って投稿します。
一度読んだ方もいらっしゃると思いますが、読んでくださるとうれしいです。

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上野剛(たけし)と遥(はるか)は、男女の2卵生双生児だったが、
まるで、1卵生双生児のように、顔も背丈も似ていた。

両親の上野高志と芳江は、二人を双子らしく、
同じような髪型にしていた。
ちょうど短いおかっぱのような感じにし、
母の芳江は、それが、男の子でも女の子でも、可愛いと感じていた。

高志と芳江が、剛と遥の性格に疑問を抱き始めたのは、
二人が2歳になったことだった。
剛に男の子のオモチャを買ってきても喜ばない。
遥に女の子の人形やままごとの道具を買ってきても喜ばない。
二人は、話し合って、そっくりオモチャを交換していた。

「男の子だからといって、男の子のオモチャが気に入るとは限らないんだなあ。」
と父の高志は言い、
「女の子だからといって、女の子のオモチャが気に入るとは限らないのね。」
と母の芳子は言って、二人で笑ったりしていた。

ところが、幼稚園に行き出して、両親は悩み始めた。
男の子の剛は、女の子とばかり遊び、自分を「あたし」と呼び、
女の子の言葉を使うようになった。
一方、女の子の遥は、自分を「俺」と呼び、男言葉を使うようになった。

「困ったわ。あの二人は、男女逆に生まれればよかったわ。」と芳江は高志に言った。

剛と遥が4歳の年中になったとき、さすがに両親は、頭を抱えるようになり、
二人に言い聞かせた。
「女の子が、俺なんて言っちゃダメ。言葉もやさしくしなさい。」
と遥に言い、逆のことを剛にも言った。
年齢からして、遥が後から生まれたので、遥がお姉さんだったが、
剛は遥かを「お兄ちゃん」と呼んでいた。

二人の男女の逆転は、ますますひどくなるばかりで、
年中さんになると、スカートを履いた遥が、
洋服を土で汚して帰って来るし、剛は、綺麗なままかえって来る。

もうすぐ小学校なのにと、両親の心配は増すばかりで、
男らしく、女らしくさせるのに、苦慮していた。

二人は、同じ部屋で過ごしていた。
そんなある日のこと。
泥だらけでかえって来た遥は、剛に言った。
「俺たち、男、女が逆じゃね。だからさ、俺の女服を剛が着て、
 剛の男服を、俺が着て、入れ替わらねえ。」
「うん、あたし達顔もそっくりだし、洋服変えよう。
 そして、あたしが遥、お兄ちゃんは剛。
 洋服変えたら、絶対ばれないよ。」と剛は言った。

こうして、二人は、服を替えて、夕飯に望んだ。
いつも父のそばである遥の席に、剛が座り、
その隣に遥が座った。

その日、いつもスカートで泥だらけの遥が、小奇麗にすわっていて、
いつも小奇麗な剛が、顔に泥をつけていた。
バレたら、冗談で済ますつもりだった。

「まあ、剛、珍しいわね。今日は男の子と遊んだの?」と芳江がうれしそうに言った。
「うん。男らしくしようと思って、泥んこで遊んだんだ。」と遥は言った。
「遥もえらいわ。はじめて、スカートを汚さずかえって来た。」
「うん。あたし、やっぱり女の子らしくすることにした。
 もうすぐ小学校だし。自分のことも、『あたし』って呼ぶから。」と剛は言った。
「おお、そりゃえらいぞ。お父さんたち、ちょっと心配だったんだよ。」と父の高志。
「もう、大丈夫。俺、がんがん外で遊ぶから。」と遥は、胸を張った。

食事が終わり、部屋にもどった二人は、ガッツポーズをした。
「バレなかったな。」
「うん、服替えたら、うまくいっちゃったね。」
と話し合った。

「いいか。風呂は、俺たち二人で入る。
 お父さんやお母さんと入っちゃダメ。」
「うん、そうね。あたしは髪を今日から伸ばす。」
「俺は、もっと短くする。坊主でもいいや。」
「お兄ちゃん、ちょっとは、髪あった方がいいわよ。」
「じゃあ、スポーツ刈くらい。」
「ああ、もっと早くからやってればよかった。あたし、髪の毛長く伸ばしたい。」
「そんなん、すぐ伸びるよ。」

こうして、二人は、卒園し、小学校にも入学した。
女の子のような剛は、「遥」として、男の子のような遥は、「剛」として。
クラスは、1組、2組のとなりだった。
学年は、もう一つ3組まであった。

戸籍と人物がいるのだから、何の支障もなかった。

遥は、トイレが心配だった。
しかし、入ってみて、やったーと思った。
小便器が5つあるのに対して、個室の用便器が4つあるのだ。
そして、クラスの男達は、並ぶのがイヤで、空いて入れば、個室に入るのだった。
「これなら、卒業まで大丈夫かも。」と遥は、ガッツ・ポーズをとった。

プールは、一回り大きい水着を遥は買ってもらった。
すると、しわができて、お△ん△んのないのがわからない。
剛の方は、水着の中に、きつきつのショーツを履いて行った。
このとき、お△ん△んを股の後ろに回して、タマタマは、体に入ってしまうことも発見した。
使ったショーツは、水着といっしょに、洗濯機の中に入れてしまえばわからなかった。

二人は、これで、ずっといけると思っていたが、
大きな支障が、男の子であるはずの遥を待っていた。
それは、小学4年生の秋だった。


つづく(次は、「遥、最大のピンチ」です。)

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