昭和の私が若い頃には、年寄りから「いまの若い者は」と批判されることがよくあった。
でも、最近はそういう言い方を聞かない。私も言わない。
それは、いまの若い者が私たちの若い頃に比べてモラルが向上しているので批判しにくいからではないか?
ネットを見ていると、外国人が日本を訪れると次のようなことに驚くという。
・道路が綺麗、ごみやたばこの吸い殻が落ちていない。
・通行人のマナーが良い、唾を吐かないし歩きたばこもしない。
・トイレが超綺麗、公共トイレでさえトイレットペーパーもしっかり用意されている。
・警官やお役所の職員,駅員,タクシーやバスの運転手がみんな優しくて親切。
・盗難やスリの心配がない。
・チップが必要ない。
・ぼったくりがない。
でも、昭和の時代の日本は決してそうではなかった。
・道路にはごみがいっぱい落ちていたし、たばこの吸い殻はつい最近まで無数に落ちていた。
・歩きながら唾を吐いたし立小便もよく見掛けた。
・公共トイレは、床も便器も汚れていたし、においもひどかった。
ドアや壁には必ず卑猥な落書きがしてあったし、トイレットペーパーはもちろんホルダーまでも持ち去られていることが多かった。
トイレは今でこそ洋式トイレだが、昭和の時代は和式トイレか ぼっとんトイレだった。
よく知らないが 学校は最近まで和式トイレではなかったか?
私は、京都旅行で、平安神宮だったと思うが、半ぼっとんトイレでお釣りをもらった にがい経験がある。
・最近ときどき見かけるアート風の落書きは むかしはなかったが、その代わり引っ掻き傷による落書きが いたる所にあった。
子供の頃、近所の やしろの樫の樹の肌に誰かが名前を刻んだらしく、樹はその傷口を治そうとしたのだろう 文字が盛り上がって浮き出ていたのを思い出す。
・お役所の職員や駅員,タクシーやバスの運転手は、けっして優しくて親切ではなかった。
ぶっきらぼうで上から目線。
警官にいたっては、その話し方から「オイ・コラ警官」と揶揄されて、むしろ怖かった。
・私が 駅のトイレの洗面台に外した腕時計を置き忘れて、2,3分後に気付いて引き返したが盗まれてなくなっていた。
・チップというはっきりした慣習はなかったが、レストランやタクシーでは「お釣りはいらないよ」と言うのが格好いいと思われていた。
・「外国人は金持ちだから高めの料金を請求する」という話も聞いたことがある。
こんな経験もあった。
当時、私は石油コンビナートの ある工場に勤めていた。
工場の前は立派な産業道路で、幅の広い中央分離帯があった。
この中央分離帯の草むらには、上記のように空き缶や紙コップや紙くず、そしてそれらが入った紙袋などのごみが無数に落ちていた。
車の窓から放り投げたごみだ。
産業道路に面した各企業は、定期的に従業員による自社の前の道路のごみ拾いを行っていた。
そのごみの種類と量には腹が立ったが、もっとひどいのは、私たちが中央分離帯に入ってごみ拾いをしているところに 通りすぎる車の窓から私たちにめがけてごみを放り投げてくる奴がいたことだ。
信じられるだろうか?
これが当時の私も含めた日本人のモラルの実態だ。
いまは隔世の感がある。
法の整備や衣食足りて礼節を知ったせいもあろうが、当時の私たちに比べて今の若い者のほうが総じてモラルが高くマナーが良いのは事実だ。
だから、「いまの若い者は」と批判がしにくい。