民放テレビについては 以前から非常に不思議に思っていることがある。
それはNHKという公共放送に対する民放テレビ局の態度だ。
マスコミは、むかしから公共部門が民間企業を圧迫していると非難してきた。
強大な権力と豊富な資金を有している公共部門が 民間企業と競合するのはあまりにも不公平だと言うのだ。
確かにその通りだろう。
あの民主党政権時代には 「官から民へ」というキャッチフレーズも盛んに言われた。
そういう目で見ると、実質的に公共部門といっておかしくないNHKの放送番組は 民放の放送番組と競合しているものが極めて多い。
ドラマや歌謡番組,ニュース報道,天気予報,音楽番組,ワイドショー,スポーツ,ドキュメンタリー,アニメ,海外ドラマ,等々、殆んど全ての種別だ。
どう見ても民放は資金が豊富で各界に影響力の強いNHKに勝てるわけがない。
事実、類似の番組だと軒並みNHK番組のほうが視聴率が高い。
今や お金のかかる時代劇は NHKでしか制作していないのではないか?
NHKの全ての従業員の平均賃金が年1,780万円と聞いた記憶があるので、給料でも民放と大きな差がついているのだろう。
「NHKが あまねく全国にテレビニュースと娯楽番組の提供を」の時代は終わった。
それなのに、「NHKの番組は民放の番組を圧迫している」,「NHKは民放と競合している種別から撤退してくれ」と 民放は日頃の得意な声高な調子で なぜ主張しないのだろう?
民放番組で、NHKの紅白歌合戦や大河ドラマを話題にしているを見ると、「プライドがないのか!?」と叫びたくなる。
NHKが手を引けば個々の民放番組は視聴率が上がる。
企業は、NHKでは流せなかったコマーシャルが流せるようになるので、コマーシャル効果が高まって売り上げが伸びる。民放のコマーシャル収入も増えるだろう。
つまり 民放も企業も大いに助かるのではないか?
さらに NHKの経費と人員が大幅に削減できてNHK受信料も大幅に減らせるはずだ。
なぜ民放各局および日本民間放送連盟はそれを要求しないのだろう?
何か持ちつ持たれつの関係があるのだろうか?
ところで放送法ではテレビ各局に政治的な公平性を要求しているが、前述のように民放各局の全てがリベラルだ。
まあ、民放なら むべなるかなとも思うがNHKはどうか?
NHKの偏向報道を指摘する識者は多い。
櫻井よしこ氏を筆頭に 門田隆将氏,大高未貴氏,鈴木祐司氏,半井小絵氏、等々、枚挙にいとまない。
小川榮太郎氏にいたっては、モリカケ問題について放送時間を分秒まで分析してその偏向ぶりを証明した。
そういえば 日英博覧会の台湾先住民の様子をNHKがドキュメンタリー番組で「人間動物園」と紹介して裁判沙汰にまでなったこともあった。
思い出すのは、NHK番組改変問題の顛末だ。
安倍晋三氏と中川昭一氏を巻き込んだNHKおよび朝日新聞との論争だった。
昭和天皇を断罪する国際戦犯法廷なる模擬法廷を紹介するトンデモ番組で、放送直前に知って驚いたNHK経営陣の指示で内容の変更がなされ、それが安倍氏や中川氏の圧力だったとか、経営陣が番組制作局の独立性を脅かしたとか、朝日新聞が虚偽報道をしたとか の茶番劇だった。
そもそも天皇の模擬裁判を取り上げた企画自体がおかしいが、それを経営陣が気づいて軌道修正したことへの非難、そして番組制作局の独立性云々の主張、これらを見ていてNHKはなんとガバナンスがお粗末かと私は呆れた。
企画そのものや,経営陣の指示への反発,一部署の聖域化などは、普通の会社だったら信じられないことばかりだ。
いかにNHK会長が役割を果たしていないかに驚いた。
だからその後 財界から会長が登用されると聞いて、これで普通の会社のようなガバナンスができるだろうと期待したものだ。
しかしそうはならなかった。会長の権限は封殺され続けた。まさに伏魔殿。
その後も会長は外部の財界人が送り込まれたが、何も変わったようには見えない。
報道の偏向ぶりは、前述のようにますます拍車がかかっている。
次回は NHKの国営放送化について考えてみたい。
(つづく)