阿武隈山麓の昭和の私の実家は 小高い山の連なりの中腹にあって見晴らしが良かった。
眼下には田んぼと真ん中を流れる小川があり、田んぼの向こうも小高い山々の連なりで山裾の田舎道をバスが通り その向こうは山また山だ。
数年前の春に帰省したときに撮った 実家の庭からの眼下の田んぼとその向こうの山々の写真を載せてみる。
左手の家々が少し増え、不定形だった田んぼが綺麗な長方形に区画整理されたが、私が子供の頃の昭和の風景とほとんど変わらない。
【左手の景色】
【正面の景色】
【右手の景色】
冬の景色は、丸裸の木々の山々と稲の切り株の田んぼは、灰色一色で何か寒々としていて寂しい。
ところが3月中旬頃の春の足音が聞こえ始めると、目の前の景色は少しずつ変わり出す。
まずは 右手の小川の上流の脇の小さな畑に白い花をつけた木がほわっと浮き出す。梅の木だ。たった1本だけ。春の始まりの号令だった。
1,2週間後には、向かいの山々の左手と正面に1,2個、右手に2,3個の白いぼんぼりがぽっと灯ったように見え出す。桜だ。
自然に生えたのだろうか大した数ではない。灰色一色の山肌に楚々とたたずんでいる感じだ。
そのあと、灰色の山肌が日に日に少しずつ少しずつ薄黄緑色がかって行く。
最初はネコヤナギのようなふっくらした銀白色に僅かに黄緑を差したような山肌だ。
やがて山全体が薄黄緑一色に染まる。これが本当に綺麗だった。
こういう変化は ここ千葉県の山では見られない。千葉県の山々は冬でも濃い緑一色だからだ。
私は濃い緑よりも若葉の薄黄緑色のほうが何倍も好きだ。
冬の同じ場所の真っ白で鋭利な雪景色も綺麗だが、春の日差しに照らされた薄黄緑色の景色は心がぽかぽか温まる綺麗さだ。
こうして阿武隈山麓の田舎の春は始まった。