またまた続きです。
この試合が決まったときからTuanはモチベーションを一気に高め、練習に取り組んできました。
説明しても伝わらずお互いイライラしたことも何度もありました。
それでも、彼は僕の指導を理解しようと毎日練習日誌をつけては確認作業を繰り返してきました。
第6試合 見原選手 対 TUAN選手
Tuanが華々しくリングに上がり、手を挙げて歓声に応えているなかセコンドはパニック状態に...
「水がない!タオルがない!」
「早くとってこいよ!怒」
全力で控え室にダッシュするスタッフ!
「バカ!マウスピース持っていくな...」
・・・
入場音楽も止まり、シーンと静まり返る会場。
レフェリーがゆっくり近寄ってきて「まだ?」と。
すみましぇん(泣)
対戦相手のセコンドの、僕の現役時代の先生にあたる孫トレーナーが気をきかしてリングに上がり僕のコーナーまで握手しに来てくれました。
本当に有り難かったです。助かりました...
ようやくマウスピースも到着し、いよいよ試合スタート!

Tuanが頭振って中に入っていくのを、身長のある見原選手がさばきながら距離をとる展開に。
見原選手はアマチュア経験がありテクニシャンです。
以前、マッチメーク時に映像を見たときよりもさらに上手くなってるように感じました。
コツコツ当てられて、なかなか入らせてもらえないTuanがちょっと攻めあぐれている状態。
「ジャブから!」
「まっすぐ入るな!」
「そこに立つな!サイド!」
サムライセコンドは本当にやかましいです。
まぁ僕ですけど。
Tuanが何とか強引に入ろうと無理したとこで、ちょっとカウンター気味の重いパンチ。

あぁ~
切ったね。
僕も現役時にカットしやすい選手でしたが、カットすると興奮する選手と、気持ちが一瞬止まってしまう選手とがいるんです。
Tuanは少し下がっちゃいましたね。
その後も前に出れない展開が。
長身の相手に距離をとるのは最悪なわけで。
相手のベスト距離になったとこで、鈍い音がするほどのナイスボディーを打たれTuanが両手をついてしまいました。
「落ち着け!」
「焦るなよ!」
とセコンドが騒いでるなか
「お前が落ち着けよ」と言わんばかりの冷静な顔でゆっくり起き上がる。
ここからのTuanは別人のように気持ちがすわってましたね。

見原選手のスタミナが落ちてきたこともあり、ガンガン手を出し前に前に!
インターバル、コーナーに戻ったTuanはびっくりするぐらい落ち着いていて。

最終ラウンドは、追い込む場面も作るなど気持ちのこもったファイトに観客からも盛大な拍手がおきました。


ダウンもあり判定では勝てませんでしたが、Tuanの清々しい顔を見れば本人がやりきったことがわかります!

勝てなかったことに謝るTuanに、ただただ「ナイスファイト!」と。
勝ち負けとは違う、ボクサーに大事なものを魅せてもらいました。
誇りに思いますよ。
おめでとう!プロだね。
それにしても、セコンドってなんでこんなに熱くなるんでしょう 笑
昔、僕が試合をしているとき孫トレーナーはリングによじ登ってくるんじゃないかと思うほど身をのりだし叫んでくれました。
どんなに会場が騒がしくても、孫トレーナーの声だけは雑音をすり抜け僕の耳へ届いていました。
『信頼』とはこういうものなのですね。
今更、その有り難さに感謝です。
試合後、Tuanに聞いてみると僕の声は雑音にかき消されていたそうです...
・・・
たぶんあれだな。日本語がわからなかったんだな...
そうに違いない。そうであるべきだ...。
第7試合 三好選手 対 Anh選手
この試合はエキシビジョンとなります。東洋太平洋3階級チャンピオンである三好選手

に対するAnh選手はまだ19歳の若手です。
ホーチミンの選手、何人かに声をかけましたが相手がチャンピオンということでことごとく断られました。
エキシビジョンでチャンピオンとできるなんてこんなチャンスないと思いますけどね?
しょうがないから、別の省から呼びました。
試合を受けてくれたのは有り難いですが、19歳の子じゃやられちゃうかな?
と、心配で。

これが、いざ試合が始まると


すごく良い選手で。
さすがチャンピオン、好きにはさせないですが。


とはいえ、19でここまでやるとは。
先が楽しみでしょうがないですね。

全国大会でまた会えるかな?
第8試合 桜井選手 対 Thanh選手
桜井選手は本当に身体能力の高い選手です。

が、あと一歩で勝ちを逃すことが多い選手でもある。
身体能力だけでない格闘技独特の何かが足りないのかもしれないですね。
Thanh選手はほんとにまんまというか...
The・中堅
という選手。

お互いミニマム級らしいスピードある攻防ですが、


ジャッジ泣かせの難しい試合だったみたいで。
結局、6R判定で桜井選手の判定負けだったみたいで。
アマチュアしかないベトナムでは6Rはちょっと長いのかな?
でもお客さんは楽しそう!







なんか嬉しいね♪
第9試合 日野選手 対 Hien選手
Hienは去年の全国大会前にサムライで指導をしていた選手ということもあり、ちょっと期待も持ちつつ。

日野選手は何て言うか、生まれつきの天才肌というか。
僕は、現役のとき何度かスパーしています。
綺麗なスタイルとは思わないですが、いつも自然と嫌な距離をキープされて、
そのタイミング?
何でこれが届くの?
っていう。動物的な感覚が優れているんでしょうね。

対するHienはパワーが売りのフックを振り回すタイプなので、当たれば面白いですが。
日野選手じゃ当たらないだろうな...
前半はガード固めて前に出るHienを、日野選手が下がりながらもリードジャブでコントロールする感じ。
まぁ、このまま6R判定でもフルマークで勝てそうですが、
3R目の途中、Hienのぶん回しにスリップ気味にこけたらこれがまさかのダウン判定。
これに日野選手ちょっと怒っちゃった?
下がるの止めて打ち合いに。
相手の右フックにカウンターでみぞおちに!
スッと視界から消えたHienはリング上で横たわり悶絶。

観客席まで聞こえる呼吸困難時の喘鳴。
これは見ているほうが吐きそうになるわ...
ほんと何であんなタイミングで打てるんだろ?

これで全試合終了!
これらの試合は12/17(日)20:00よりベトナムのViewTVにて放送されます!
ベトナムにお住まいの方はお見のがしなく!
番組のCMです!←クリックしてチェック!
・・・
なんにせよ、この瞬間、終わったんだと。
一年間駆けずり回って苦労して悩んで不安になって心配して、嬉しくて楽しみで興奮して感動した時間が。
なんか...ほっとするような...少し寂しいような
不思議な感覚ですが。
・・・
後日、日本選手団とベトナム選手団とで懇親会しました!

それぞれ勝ったり負けたり、いろいろ思うところもあるでしょうが、勝負が終われば同じボクサー、同業者ですからね。
楽しくみんなで食事しましたよ♪
選手たちには、ひとつの試合を作るためにどれだけの人が関わって、サポートして、応援してくれているのかしっかり感じてもらい、これだけの貴重な体験をさせてもらえていることに感謝の気持ちを持つことを忘れないでほしいです。
そうすればボクサーはもっと強くなれるはず!
最後になりましたが、今回『2016WBCアジア 日本vsベトナム、プロボクシング交流戦』に関わってくださった全ての皆様に心より感謝申し上げます。
このベトナムという地で、決して自分たちだけでやりきることはできませんでした。
たくさんの方からアドバイスをいただきました。
たくさんの方にご協力していただきました。
2日間、ずっとそばについて通訳もしていただきました。
集客に全力を注いでくれた方たちもいました。
多くの方々と一緒に、この歴史的イベントを成功に導けたことを誇りに思います。
ありがとうございました。
またひとつ
夢を叶えることができました!