『非国民な女たち』 飯田未希 著 中公選書
本書のサブタイトルは「戦時下のパーマとモンペ」。贅沢は敵だ、とのスローガンのやり玉に挙げられたのがパーマであり、当時は髪を後ろで束ねた和服にモンペ姿の女性しかいなかった、でなければ非国民のそしりを受ける、後世の我々がこの時代に持つイメージです。
決してそんなことはなかった、と著者は指摘します。当時の新聞や雑誌等の豊富な文献を基に、女性たちのしたたかな活動、国に協力しつつも主張もした美容業者や服装学院と、当局との丁々発止のやり取りが本書で述べられていきます。
日中戦争から太平洋戦争にかけては、兵役に就く男性が急増したため、いわゆる「職業婦人」なる女性の社会進出が進んだ時期です。国が推奨した日本髪や和服、モンペでは活動性に難がありました。女性の洋装化も進み、ドレメこと杉野女学院や文化服装学院が隆盛を迎えたのも1930年代からです。既製の洋服は高価なので、実用的でおしゃれな服を自作しようという女性が増加したのです。
パーマについても、就業し短髪化した女性が髪を整えるのにかえって効率的でした。加えて、戦時下であってもおしゃれをしたいという女性の欲求はなかなか抑えられるものではなく、女性たちが炭を持ち寄った木炭パーマや、防空壕へのパーマネント機の持ち込み、厳しい電力供給の中で東北電力と交渉した大船渡の美容院など、数々のエピソードも紹介されています。
高度成長前夜、私が少年の頃でも生活はまだまだ豊かとは言えず、足踏みミシンや裁縫で自作や内職をする女性が珍しくない時代でした。今でいうラフなワンピースを父が「アッパッパ」と揶揄していましたが、方言ではなく昭和初期からの共通語だったことを本書で初めて知りました。
コロナ禍の昨今、自粛警察なる言葉が流行っています。個々の事情も顧みず頭ごなしにバッシングをする人々が後を絶ちません。それこそ「非国民」呼ばわり。テクノロジーは大きく進歩しましたが、人の心はそうではないようですね。