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近現代史の本 おすすめ

史観の偏りがない本をご紹介しています。yahoo知恵ノートに2016年から掲載してきたものが母体です。

『靖国神社の緑の隊長』 半藤一利 著 幻冬舎

最前線で苦労した人々を取材した半藤さんの置き土産   

 本年(2021年)1月12日、歴史探偵こと、半藤一利さんが旅立たれました。特に昭和の戦争の悲惨さを後世の我々に伝えることをライフワークとされ、「昭和史」等数々の書物を遺されました。

 

 2020年6月刊行の本書は、氏の単行本としては最後となりますが、1960年に自ら関わった書物「人物太平洋戦争」における戦場の体験談39編から8編を選りすぐり、現代の中学生や若年層にも理解しやすいように書き直されたものです。

 

   情に厚い名将で知られる今村均をご存じの方も多いでしょう。棒高跳びのオリンピック選手、箱根駅伝のヒーローだった士官に親しみを感じる若い方もいるかもしれません。「南の島に雪が降る」で年配者にはおなじみの名優、加東大介も登場します。決して戦争好きではない、ごく普通の人々がはるかな戦地へ赴かなければならなかった厳しい現実を改めて感じます。

 

 読前、私は本書のタイトルに若干の違和感を覚えていました。靖国神社を過度に美化することを半藤さんは嫌っていましたし、合祀以降、昭和天皇が参拝を止めたのも周知のとおりです。最後に登場する吉松喜三大佐が「靖国神社の緑の隊長」その人なのですが、読めば著者が本書のタイトルに選んだのが納得できます。政治に利用されない、鎮守として本来あるべき神社の姿を垣間見る思いです。

 

 本書も半藤さんならではの語り口調ですが、他書に比べ淡々と記されており、落ち着いた気持ちで先人たちの労苦を偲ぶことができます。活字は大きめで、若者になじみのない漢字にはルビが付されており、読みやすさへの配慮とともに、多くの世代に戦争体験を伝えたいという著者の想いも感じます。半藤さん、長い間ほんとうにありがとうございました。

  

追記

半藤さんの本はこちらでもご紹介しています。よろしかったらご覧ください。