授業で教師が生徒に質問をする―――よく見る光景ですね。

今回は「リーディング」の指導場面で教師が生徒に投げかける質問の種類について考えてみたいと思いますが、教育現場では「発問」と呼ぶことが多いですね(「質問」と「発問」の違いは割愛します。検索すると、たくさん出てきます)。

教科書の本文など、英語を読む授業で生徒の「読み」を確認したり深めたりするには、教師からの発問が効果的だと言われていますが、その発問は3種類に分けられることが多いようです。それが「事実発問」「推論発問」「評価発問」です。

「事実発問」はテキスト等に答えが明示されている発問。例えば、What time did Bob get up? という発問は、Bobが起きた時間が本文中にはっきりと書かれていれば、事実発問です。教科書の内容理解のための基本的な発問と言えます。

「推論発問」は、はっきりと書かれてはいないが、明示されていることから読み取れる事柄を問うものです。例えば、Emmaが野球を楽しんでいる様子が書かれている文章があったとしましょう。そこに、Emmaは野球が好きだとはっきり書かれていなくても、野球が好きだと十分判断できる場面で、Does Emma like baseball? と聞くとき、これは推論発問となります。いわゆる、「行間を読む」です。

あるいは、登場人物の気持ちを問う発問も推論質問の一つと言えます。What did she think about it? と聞けば、生徒は、本文に書かれていることをもとに推測するでしょう。これも推測発問と言えるでしょう。事実だけを確認する読みから、一歩深い読みにつながる発問と言えます。

「評価発問」は内容に対して、生徒がどう思うか、何を感じるかを問う発問です。「事実発問」は答えがはっきりしていますし、「推論発問」もある程度答えを絞り込むことができますが、「評価発問」に対する生徒の答えに唯一の正解はありません。場合によっては「何でもアリ」になります。ただ、こういう発問を通じて、生徒がより深く文章と関わることなるでしょう。思考力・判断力・表現力の育成が求められる昨今では、推論発問や評価発問の役割がこれまで以上に大きくなってくると思います。

もちろん、すべての発問が上の3つにきっちり分類できるわけではなく、上記のうちの2つの中間に位置づけられるものもあるでしょう。

この分類を参考に、自分が普段どんな発問をしているか考えてみるのもいいでしょう。事実発問が多く、推論発問や評価発問をあまり使っていないと感じるのであれば、これらを取り入れることを考えてみてもいいと思います。

【重要】
言うまでもないことですが、事実発問より推論発問や評価発問のほうがすぐれた発問手法だと述べているのではありません。それぞれに、それぞれの役割があるので、授業の目的に応じて使い分けることが大切です。

それから、これも言うまでもないことですが、今回ご紹介した3種類の発問は「リーディング」の指導だけでなく、「リスニング」にも当てはまります。

英語授業における「発問」は山梨大学の田中武夫先生が有名です。

『英語教師のための発問テクニック 英語授業を活性化するリーディング指導』(田中武夫・田中知聡著、大修館書店、2009年)

『推論発問を取り入れた英語リーディング指導: 深い読みを促す英語授業』(田中武夫他編著、三省堂、2011年)