学習指導要領の改訂により、2021年から、それまで高校の範囲であった「仮定法過去」が中学校の範囲になりました。

高校で教えられていたころから、仮定法過去(及び仮定法過去完了)は生徒にとって難し項目の一つでした。中学生にとっても難しい項目であることはまちがいないでしょうね。

日本を母語とする英語学習者にとって、なぜ仮定法過去が難しいのかを考えてみました。大きくは以下の3点ではないでしょうか。

①日本語に「条件」と「仮定」の使い分けがない。

②英語に「仮定形」がない

③現在のことなのに「過去形」

まず①について。

次のAとBの大きな違いは何でしょうか。

A「明日晴れていたら外出しよう」
B「自分が鳥だったらいますぐに飛んでいきたい」

いろいろな視点があると思いますが、今回の話題に絡めて言えば、Aが「条件」でBが「仮定」です。Aは明日が晴れる可能性もあれば、晴れない可能性もある状況です。一方、Bでは「自分」が「鳥」ではないので、これは単なる「条件」ではありません(このことを「妄想」と捉え、「仮定法(過去も過去完了も)は妄想だと思えばいい」という教え方もあります。なるほど、ですね)。

日本語使用者の多くは、この2つの状況に大きな差は感じることはほとんどないのではないでしょうか。ところが、英語話者にとってこの2つは大きな違いとなります。あり得る状況なのか、あり得ない状況なのか。

なので、仮定法を教えるときは、日本語の「もし~なら」という文をたくさん用意し、それぞれの文が表す状況が、単なる「条件」なのか「仮定(妄想)」なのかを生徒に考えてもらうと良いでしょう。

ただ、難しいのは、ある人にとって「条件」となる状況がある人にとっては、実現が難しい「仮定」になるという点です。例えば、「いま1億円あったら」は、私にとっては「仮定」の話ですが、大谷翔平選手にとっては「条件」でしかないのです。その点もきちんと教えておくとよいでしょう。

本日阿ここまで。続きは次回で。