8月8日に文部科学省が「英語教育・日本人の対外発信力の改善に向けて(アクションプラン)」を発表しました。
 

日本人の英語力向上を図る目的で作られたプランですが、こういったプランは過去にも何度か発表されています。例えば、平成14年7月12日に「『英語が使える日本人』の育成のための戦略構想の策定について」が発表されていますし、平成26年9月26日には、英語教育の在り方に関する有識者会議が「今後の英語教育の改善・充実方策について 報告 ~グローバル化に対応した英語教育改革の五つの提言~」を発表しています。
 

今回も似たようなプランが発表されたということは、日本人の英語力はまだまだ不十分だという世の中の認識を反映しているのでしょう。

今回発表された「英語教育・日本人の対外発信力の改善に向けて(アクションプラン)」はPDFで12ページなので、今回は概要と言ったところです。具体的には以下の5つの項目から成っています。

1.学校英語教育の底上げ
2.教員採用・研修の改善
3.大学入試・社会との接続
4.国際交流体験活動・文化発信の推進
5.海外留学の促進

それぞれに下位項目があり、説明が加えられています。この中から気になるところ、今後注目していきたいところを挙げてみます。

○義務教育段階では、令和4年度に全ての学校を対象に英語のデジタル教科書・教材を配布。

これを見たときには、「太っ腹!」と驚きましたが、よく見ると、「全ての『学校』」とあるので、児童生徒一人一人にという意味ではないのでしょう。

 

それでも、自治体によってデジタル教科書が購入できるところとできないところがあるので、その格差の解消にはなるでしょう。ただ、ハード面での格差が原因で、配布しても一部の教員しか使えないということが起きないといいのですが。

○高校でのパフォーマンステストを促進

パフォーマンステストを「話すこと」「書くこと」の両方について行っている高校は全体で4割に満たないことを受けて、参考資料を作成するそうです。

○学校外における自主的・自発的な学習意欲の向上

十分な英語力をつけるには、学校の授業だけでは足りないという指摘は正しいと思います。具体例として、「外国語指導助手(ALT)や英語が堪能な地域人材の活用を一層促進(ALTを指導者とする課外活動を好事例の横展開等により積極的に推進等)」とありますが、ちゃんと予算や人的支援をしてもらわないと、先生方がかえって忙しくなる恐れがあります。これ、結構心配です。

○教員養成を大学に任せておけない???

英語の指導法について、基礎的な知識・技能を身に付けられる学習プログラムを国が開発すると明記しています。

「基礎的な知識・技能」とは、「英語で授業を行うために必要となる語彙・表現等を網羅的に習得させる等」だそうです。

さらに、これを「教職員支援機構」が提供し、プログラムを修了したことが証明されるための試験等もあわせて作成・実施するそうですが、「教職員支援機構」とは何でしょうか?

現在、教員養成は大学が中心ですが、大学では信用できないということ?

○英語力があれば教員になれる???

原則として、教員免許がなければ単独で授業はできませんが、特別免許状という形で英語を教えることは可能です。今後それを増やすようですが、英語ができて熱意があればいいというものでもないでしょう。教師の専門性をどう見ているのでしょうか。

ただ、現在、日本中で先生が大幅に不足しています。その解消につながるなら、ある程度は目をつむる必要があるのかもしれません。

まだまだ続きますが、今日はここまで。

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英語教育アクションプラン 個別入試に予算措置、地域差解消も