『英語教育』(大修館書店)の人気コーナーである「これって本当に必要?指導のあたりまえを疑う」(著者は帝京大学の奥住桂先生)の第8回(2020年11月号)は「『フレーズの暗記』って必要?」がテーマです。

「フレーズの暗記」というのは、「ペア活動として、暗記したフレーズを交互に発話する活動」で、「クイックレスポンス」など別の名前で呼ばれることもあります。

奥住先生が記事の中で触れている「〇〇インプット」は埼玉県の英語の先生であれば、ご存じの方も多いでしょう。もう10年くらい前ですが、ある研究授業で所沢で若い先生がこれと似ている活動をされていました。どう見ても「〇〇インプット」なのですが、授業後に彼に聞いたところ、市内の授業研で見たのでご自分も取り入れたとのことで、「〇〇インプット」のことはご存じではないとおっしゃっていました。「〇〇インプット」は県東部で生まれているので、県西部にまで広がっていることに驚きました。それだけ、この活動が浸透していたということなのだと思います。

私も講演などでこの活動を紹介させていただいたことがありますし、大学の授業でもこれまで何度も紹介し、学生にも活動を体験してもらっています。なので、「必要?」というタイトルを拝見したときは、一瞬ドキリとしました。

ただ、記事を読んでいくうちに、奥住先生はフレーズ暗記そのものを否定されているのではなく、フリートークのような自由度の高い活動と組み合わせることが大切だとおっしゃっていることがわりました。私も同じ考えで、フレーズ暗記の活動を紹介するときには、自由度の高いアウトプット活動が必要だとお話しするようにしています。

先ほどの「〇〇インプット」を作った先生も、「〇〇サロン」というフリートークのような活動を行っています(こちらの方はあまり紹介されることはないですね)。この二つが組み合わされることで、どちらも力を発揮するのだと思います。

スポーツで言えば、試合とキソレンですよね(いつもこの例えしかしていないので、恥ずかしいのですが)。試合がなくキソレンばかりだと子供たちは練習をする意味を見失います(大人も)。試合をすることで自分に足りないものに気づき、それを克服するために練習に身が入るようになり、さらに、試合ででよい結果を出すことで練習の意味をさらに理解し、練習により真剣に取り組むようになる、という好循環が期待できます。

英語の授業で「試合」に相当するものとしてお勧めしているのがフリートークです。細かなやり方などはいずれお話ししたいと思いますが、原稿を書かずにその場で(=即興で)話すことで自分の弱点に気付くと、「しっかり練習しよう」という気持ちが芽生えたり強くなったりするのだと思います。また、英語で言いたいことがフレーズ暗記で練習したものの中にあったりすると、やっていてよかった、と感じると思います。この2種類の活動をバランスよく取り入れたいですね。

奥住先生の記事を見て「私も同じことを言っているぞ!」と主張したかったわけではなく(ちょっとはあるのかな?(笑))、むしろ、影響力の強い先生が同じことを言ってくれているのでうれしいという思いです。