「7つのコツで語彙力アップ」という記事を見つけました。語彙習得研究の分野で明らかになってきたことを一般向けに分かりやすく解説したもののようです。生徒はもちろん、私たち自身の語彙力アップにも役立つでしょう。ここに張り付けておきます。

http://www.newsweekjapan.jp/stories/2009/07/post-363.php

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「7つのコツで語彙力アップ」

記憶のメカニズムにのっとった「使える単語」の効率的な覚え方
2009年07月30日(木)14時54分
井口景子(東京)、カレン・スプリンゲン(シカゴ)
[2007年4月25日号掲載]

 ひたすら暗記するしかない。どれだけやっても終わりがない。語彙の学習には、単調で非生産的なイメージがつきまとう。

 「語彙は『付属品』にすぎないと思われている」と、『語彙神話』の著者でセントラルフロリダ大学のキース・フォルス助教授は言う。「文法や発音が大切なのはもちろんだが、単語を知らなければ何もできない」

 英語をある程度自由に使いこなすには、少なくとも3000ワードファミリーが必要とされる(「give」「giving」「gift」などは一つのワードファミリーとして数えられる)。

 英語圏に住み、会話や読書を通してボキャブラリーを自然に増やせれば理想的。だが日本のような環境では、単語帳などを使った意図的な学習と組み合わせるほうが効率がいいことが、多くの研究で明らかになっている。記憶のメカニズムに合った語彙学習のコツを紹介しよう。

「6回以上繰り返す」

 学んだ単語を記憶に定着させるには、さまざまな場面で同じ語に繰り返し出合う仕掛けが必要。覚えたい単語が文中に登場する回数と学習成果の関係を調べた研究によると、単語の登場回数が2回と4回では学習成果に大差はなかったが、6回以上では明らかな効果が見られた。

 学習時間の配分にもコツがある。ある実験では、一度に15分間集中して覚えるより、数日に分けて計15分を費やすほうが記憶の定着率は高かった。また、学習の時間間隔は徐々に長くしていくといいという。

「単語帳は使い方次第」

 丸暗記の代名詞として「悪者」にされがちな単語帳。だが専門家は「退屈にはちがいないが、効率よく語彙を増やすには欠かせない」と口をそろえる。

 ただし、電車の中で単語帳を眺めるだけでは効率が悪すぎる。スペルを何度も書く、アクセントに合わせてこぶしを振る、例文を作るなど「かかわり度」を高める工夫をすべきと、関西学院大学の門田修平教授は言う。語呂合わせを考えたり、語源や接辞を手がかりに単語を分析する伝統的な方法も効果的だ。

 訳語を知っているだけの単語を「会話で使えるボキャブラリー」に格上げする工夫も大切。覚えたい単語を積極的に使ってみるのはもちろんだが、目的語をいくつ取るのか、どんな語や句とセットになりやすいのかなど「単語の使われ方」を常に意識すべきだと、門田は言う。

 スペルだけでなく発音で覚えることもポイント。音声化されていない知識は会話で使えないだけでなく、長文読解でもスムーズな理解を妨げる。
 
「時間制限で使える語彙に」

 「使える語彙」を増やして流暢さを高めるためには、時間のプレッシャーによって知識を活性化する方法もいい。語彙習得研究の第一人者であるビクトリア大学ウェリントン校のポール・ネーション教授が勧めるのは、4・3・2という方法。まず1人が4分間で何か話し、聞き手は同じ内容を3分間で次の人に伝える。次の人はそれを2分間で説明する。

 作文で使える単語を増やすためにも時間制限は役立つ。毎日10分間英作文の時間をもち、何ワード書けたか記録するといいと、ネーションは言う。大量に書くことがねらいなので、作文の内容にはこだわらなくていい。

「関連語を一緒に覚えない」

 「April」「May」など月を表す12の単語や七つの曜日、果物の名前、「hot」「cold」のような対立語など、意味的に関連する単語はまとめて覚えるほうが効率的にみえる。だがそうしたやり方は、意味的に無関係な単語を覚えるのに比べて1・5~2倍の時間を要するという。

 使用頻度や重要度に応じて優先順位をつけ、記憶の混乱を避けるべき。極端に言えば、使用頻度の高い「right」が完璧に記憶に定着するまで「left」については学ばないほうがいい。

 単語帳を作る際は、意味的に関連する語を近くに配置しないこと。スペルが似ている単語(「principal」と「principle」、「attack」と「attach」)も時期をずらして学ぶ。

「多読の効果を引き出す」

 興味のある分野の読み物を辞書を引かずに大量に読む「多読」は、すでにある文法や単語の知識を深め、英語の世界を楽しむために有効なアプローチだ。ただし、新たな語彙を増やすという点では効率的とはいえない。文中の単語の95~98%を知らなければ未知の単語の意味を正しく推測できず、学習につながらないからだ。

 多読の効果を引き出すには、学習者のレベルに合わせて語彙や文法を厳選したグレーディッド・リーダーと呼ばれる読み物がおすすめ。必要な読書量は年間50万ワード(長編小説6冊相当)とされる(日本の高校生の読書量は年間1万ワード以下という調査もある)。

「辞書を賢く使いこなす」

 知らない単語に出合ったら、まず文脈から意味や品詞を予測したうえで辞書を引き、適切な意味を探そう。さらにテキストに戻り、選んだ意味が文脈にフィットするか確かめる手間が記憶を強化する。

 複数の訳語がある場合には、すべてに共通する中核的な意味を探す習慣をつけるといいと、ネーションは言う。たとえば「base」には「台座、軍の基地、支持母体、出発点、野球の塁」などの訳語があるが、「基盤となる大事な場所」というニュアンスは共通している。

 共通点について徹底的に考えることで「単語の意味が記憶に残りやすい。一つの単語を複数の意味で使えるようになれば、限られた語彙で多くを伝えられる」と、ネーションは言う。

「攻略法を使い分ける」

 語彙力が高い人には必然的な理由があると、フォルスは指摘する。「彼らは複数の攻略法をもち、覚えたい単語によって使い分けている。しかも、自分なりの方法を言葉で説明できる」

 語彙学習は確かに退屈かもしれないが、文法やリスニングに比べて成果が見えやすい面もある。自分なりの記憶術を編み出して目標を達成できれば、その自信は英語学習全般にプラスになるにちがいない。