去年の雨の日の

ヤマメフィーバーの再来を夢見て

水量が戻った淵を腹まで浸かってよじ上る。


流れを跨いだその先の石がツルツルなのは承知の上だから

ゆっくりと重心を移して

しっかりと二本足で立ったトコロまでは記憶がある。

滑った覚えはない。

だけれども現に今

水流の中を横たわっているのだから

やっぱり滑ったのだろう。

下の淵に落ちるまでには

数秒とかからないだろうに

とても長い時間の様に感じる。

かと言って

何が見えているという事もなければ

体を自由に動かせる訳でもない

どうやら、身体は普通の時間と水流の中を流れているのに

脳だけは特別な時間を刻んでいる様だ。



体が縦になった。

と、云う事は

きっと今は落ちた淵の

泡の中だ。



泡と云えば、日経平均がリーマンショック後の底値から三倍程に膨れ上がっているみたいだけれど

好景気を実感している人なんて殆ど居ないだろうし

きっとこの泡が弾けるのはもう少し先の事なのだろうか

それほど世の中が浮かれたムードな訳でもないのだから。


かと言って、地に足が着いてるのかと云えば。

否、着いていない。


こういう時はジタバタとクロールは体力を消耗するだけだ。

バタフライなんて論外。

ゆっくりと平泳ぎで脱出しよう

泡の中から。



再びよじ上り、

苦行の様なの釣りだけれども

雨と蛭に誘われて

ヤマメは戻ってきてくれたみたいだ。