ネット大喜利の変遷を語ってみる その1 「松本人志の残したもの」 | だからオイラはダメなんだ。
「ネット大喜利」とは、インターネットの双方向性を利用して行なう、大喜利の事。

私がインターネットを利用し始めて、ハマるキッカケとなったのが、ネット大喜利。
現在でも大喜利サイトに顔を出して、チンケな投稿を続けているのですから、もはやライフワークと言っても過言ではありません。

そこで、ちょっと自分の体験から、ネット大喜利の変遷をまとめてみようかと思い立ったのがこの記事です。
完全に自己満記事なので、興味の無い方には全く面白くないかと思いますが…。



ネット大喜利 以前

大喜利といえば、現在も放送中の「笑点」を思い出す方も多いかと思います。
本来なら寄席で行なわれる「大喜利」という名前を世間一般に定着させているのは「笑点」の功績と言えますが、いわゆる「ネット大喜利」というフォーマットを定着させたのは、偉大なるお笑い芸人の登場からです。

ダウンタウン・松本人志 その人です。

初期のダウンタウンと言えば、「夢で逢えたら」や「ごっつええ感じ」などのコント、「ガキの使い」や「HEY×3」などのトーク番組のイメージが強いと思われますが、それは本格的に東京進出を終え、ゴールデンタイムに番組を持てた後の話。
ブレイク寸前(もしくは本格的な東京進出以前)の大阪ローカル局や深夜帯での番組では、当然ながら大掛かりなセットや予算を使う訳にも行かないので、必然的にトークや若手芸人とのゲームといった構成の番組となります。

そんな番組の中で行なわれていたのが、大喜利形式のゲーム。
「摩訶不思議 ダウンタウンの…!?」などで、DT浜田が司会進行を務め、DT松本の他のメンバーにも、今田耕司、東野幸治、板尾創路、蔵野孝洋(ほんこん)、木村祐一といった、現在でも第一線で活躍する芸人らがいたのですから、ローカル番組の一ゲームコーナーとは言え、そのレベルの高さが判るかと思います。

特にTBSで深夜に放送された「ダウンタウン汁」の後半コーナー「お笑い頭脳バトル」(この「お笑い頭脳バトル」も前述したレギュラーメンバーが回答者として参加していました)で、DT松本の大喜利形式でボケる事に対する姿勢…ある種特異性を示す出来事がありました。

番組の同コーナーは当初、客入れがあったものの、DT松本は「簡単に笑うような客はいらん」と、お笑いコーナーにも関わらず一切の客を排除し芸人とスタッフだけで収録を行なうという、前代未聞の行動に出たのです。
大喜利の問題が発表され、シンキングタイムには静寂。司会の浜田のプレッシャーとも言えるつぶやき、回答を出した後に笑いとツッコミの評価を出すのは他の芸人のみという、殺伐とした光景が繰り広げられました。
そのあまりのプレッシャーとレベルの高さに、同コーナーのレギュラーだった島田珠代は自ら降板を願い出たというほど。
このコーナーでDT松本は、回答にイラストを用いるなど、現在にも通じる新しい大喜利の回答方を編み出しました。

「客や視聴者を笑わせる為のお笑い」ではなく「自分やライバルとの戦いのお笑い」を視聴者に見せつけたDT松本は、大喜利の持つ新しい可能性を示したのです。


ネット大喜利を語る上で、もうひとつDT松本が生み出した物があります。
それは、「ボケー」という単位の発明です。
「ごっつええ感じ」の「ボケましょう」という、若手のボケに対して松本が採点をするというコーナーで用いられた、採点の単位が「ボケー」です。

「大喜利のボケやネタの評価システム」としては、従来より「笑点」の座布団が存在していましたが、これは純粋にボケへの評価と言うよりは、座布団を獲得するやりとりまで含めた"芸事"と言えます。
また、前述した「お笑い頭脳バトル」でも同様に「脳マークを10個集めると賞品」というシステムが導入されていましたが、微妙な判定により「脳半分」という評価などがされ、完全な評価システムとは言えませんでした。
座布団や脳マークは言わば「(ボケだけでなく、やり取りやツッコミなども含めたその場の)笑いを取ったご褒美」であり、ボケそのものへの純粋な評価ではありませんでした。
しかし、「ボケー」という単位により「ボケそのものを得点として判定する」というシステムが発明されたのです。


この頃に著書「遺書」が発売、この本によりDT松本のストイックなまでの哲学的なお笑いに対する姿勢は、さらにファンの理解に浸透し、もはや求道者的、宗教的なカリスマ性を帯びるまでになっていきます。

この流れはさらに加速し、究極の大喜利とも言える「一人ごっつ」シリーズ」の放送。
入場料一万円の「寸止め海峡(仮)」料金後払い制の「松風’95」
などのコントライブが開催されます。
このライブの中で初登場したのが、今やネット大喜利の定番とも言える「写真で一言」です。


そして、DT松本のファンの中から、DT松本と同じようにボケたい、笑いを追及したい、と考える人達が現れてきました。
丁度インターネットが普及し始めた頃であり、そこで自分でサイトを作り、大喜利を楽しむというコミュニティーが多く誕生することになります。

その方法はDT松本に倣えばいいのです。お題を出し、笑い、それを評価する。お題だって、写真一枚あればいいのですから、とても手軽です。


そしてネット大喜利サイトの歴史が始まる事となります。



その2 へつづく










4860520246定本「一人ごっつ」
松本 人志
ロッキング・オン 2003-09-25

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