川下り型でも目的・目標を明確にする

 

2024年6月30日 鈴木 友之

 

 私が相談に乗ってきたいくつかの事例を参考に、架空のひとAさんのサードキャリアを振り返ってみたいと思います。

 

  Aさんはファーストキャリアでは企業内でのIT活用に関わる仕事に就いていました。IT活用は、第一に社内、社外との連携などにおける省力化・効率化といった生産性向上を主眼に取り組んでいました。セカンドキャリアとして再就職した会社でも引き続きIT活用に取り組んでいました。そのころになるとコンピュータを生産性向上に活用するだけでなく、コンピュータとネットワーク、パソコンや携帯までも組み合わせた新しいビジネスの創出といったテーマも重要になり、興味は拡がっていきました。

 

  その頃、Aさんの会社では職能制度による人事制度に限界があると考え、人事制度の抜本的見直しをすることになりました。Aさんは、コンピュータシステムの見直しの立場だけでなく人事制度そのものの見直しにも直接関わり、3年かけて全面改定した新人事制度の導入から制度の浸透までフォローしたところで定年退職を迎えました。

 

 Aさんは定年退職を迎えるに当たりサードキャリアとして引き続きIT関係の仕事を続けるか否かを考えた時、いま一つ違うという感じを持ちました。それよりも新人事制度を浸透させる過程で社員一人ひとりと接する機会を多く持つ中で感じた何かに惹かれるものがありました。そのような状態のときに、偶さか人事コンサルから紹介されたキャリカウンセラー(現在のキャリアコンサルタント)という資格に興味を持ち受講してみることにしました。晴れて資格をとった後は、人びとのキャリア形成をサポートする役割に、ITでの仕事以上に興味と価値観を感じました。更に、コーチングや産業カウンセラー等の資格を取得し、キャリアコンサルタント・コーチとなり、個人事業主、則ちフリーランスとしてサードキャリアをスタートさせました。

 

 フリーランスの仕事は、黙っていても仕事はやってきません。自らチャンスを見つけ飛び込み、講師やファシリテーションといった未経験のスキルは都度勉強し、いろいろな理論を深め広げていきました。そのような努力を重ねた結果、実績と人脈ができると、新しい仕事が向こうからやってくるようになりました。それまでにできた仲間と話し合う中で、新しい仕事を発案して取り組む機会を持てるようにもなったということです。

 

 Aさんにとって、ファーストキャリアとセカンドキャリアでの目的は所属する会社で「ITを生かして生産性の向上や新ビジネスを創出する」ことであり、目標は企業が置かれた状況から設定される目標でした。一方、サードキャリアでの目的は「人びと一人ひとりのキャリア形成を支援し目指す目標の達成に、ひいては組織・社会の活性化に貢献する」とし、最初の目標は「キャリア形成支援の3分野、①転職・再就職、②企業内、③新卒就職での経験を積む」としました。会社の目的・目標ではなく、自から設定した目的・目標が大きな違いでありやりがいとなりました。

 

 いかがでしょうか、前回のブログでサードキャリアは「緩やかな川下り型」でと申し上げましたが、偶然の出会いの連続に見える川下り型と言えでも、川の流れに身を任せるのではなく、目的と目標を明確にして取り組むことが一層重要に思っています。

 

以上