この2024年の夏、7月にバングラデシュで暴動が激化してからは
いつどこで暴動が起きて血が流れるか分からず、誰かと会い別れる時には
 
「どうかご無事で、また会いましょう」
 
という言葉をいつも交わしていました。
 
昔劇団員時代に、「ああひめゆりの塔」という戦争ものの舞台に出演した際、わたしはひめゆり部隊の女学生の役をさせていただいたのですが、
まさに先生と、思いびとと、学友と
「どうかご無事で」
という言葉を交わして別れるシーンがあり、
こんな気持ちだったんだなあと…実感しています。
 
争いってこういうことなのだなと、
大切なひととまた会えるかわからない不安な毎日が日常化していく。
 
それはとても悲しい日々だけど、
私たち以上に、バングラデシュ以上に、今世界中で
「どうかご無事で」
という言葉を、重く、深刻に交わしている方々がいます。
 
私たちが平和に暮らしていた世界の同じ時間軸で、こうした思いをされている方々が沢山いたのだと、改めて痛感しています。
 
ハシナ政権が終結し、事態は収束に向かうと思われたけど
暫定政権が事態をまだ掌握できておらず、あとはやはり貧しいという途上国ならではの事情もあり
、この数日間は無秩序な状態が続き、新たな暴動や略奪が始まっています。
 
今回暴動のきっかけとなったのが警察官による学生の射殺だったので、
ハシナ政権が終わってからまずは警察官がターゲットとなり、各警察署が燃やされました。
 
そして、警察官たちも学生たちと戦ったのは、ある意味国からの命令を受けてやったことであり、当時は反対したら国の反逆者になってしまっていたためやらざるを得なかった、それなのに今命を狙われるのはやってられない、と任務をボイコット。
今この国は警察不在となってしまったのです。
 
それをチャンスと考えた人たちが、まさに今暴れていて…
今回抗議運動を起こし、イデオロギーを持つ学生たちとは違う層の人々、
自分たちの置かれてきた状況に不満を持っていた人たち、貧しく抑圧されてきた人たち、、、
そんな人たちが、警察の家やお金持ちの家、前政権関係者の家を襲い、放火や略奪が行われています。
 
今心配なのは、今後考えられるヒンドゥー教徒や少数民族への弾圧。
前ハシナ政権は、独裁や首相の失言など問題はありましたが、基本的にはバングラデシュに住む者は皆ベンガル人、という哲学のもと
他宗教や少数民族の人々のことも公にこの国の民として受け入れていましたが
次に与党になる確率が一番強い政党はイスラム至上主義なのです。
そのため、ヒンドゥー教やキリスト教、少数民族への弾圧が予想されます。
 
既に数日前から、ヒンドゥー寺院が焼かれたり、少数民族の家が襲われたりと、マイノリティへの暴力が各地で始まっているのですが、メディアも時期政権に忖度してか、あまり報道がされていません…
私の友達のヒンドゥー教徒の家も襲われました。
 
願わくばどの宗教の人も、今よりも生きやすい国、社会になってほしいと心から願いますが
新政党の意向によりもしかしたら更に厳しい時代が来るかもしれません。
 
そんな無秩序状態の中、一昨日ノーベル平和賞受賞者のユヌス先生が、学生たちの強い希望により暫定政権の最高責任者に就任しました。
あくまで暫定政権のトップなので、今後選挙が行われ新しい政党が決まるまでの間ではありますが、
国際社会からも評価され、何より平和や調和の感覚を持つユヌスさんが、なんとか宗教間の争いを緩和し、暴力のないバングラデシュに導いてくださることを心から願っています。