ジョソールでの撮影も無事終わり、またダッカでの慌ただしい毎日を過ごしています。


エクマットラの活動、クラフトの作業、音楽活動、毎日の息子のお世話…
思えば、沢山のことをいつも同時に考え実行していかなければならない中で
撮影中は、撮影のことだけを考えて没頭できた、ある意味とても幸せな時間でもありました。
 

撮影自体がエクマットラのプロジェクトではありますが、
普段の業務やクラフトのことは他のスタッフたちが引き受けてくれて
夫がダッカで息子のことを見ててくれて、
大切な役柄をどう演じるかということだけ、考えさせてもらえる環境をみんなが私に作ってくれました。
その事には本当に感謝を感じています。

しかし、本音を言えば
お話をいただいた時に自分にできるのだろうか…という気持ちもありました。
私が演技のお仕事を日本でしていたのは、もう10年も前の話。
こちらに来てからもドラマなどに出演させてもらっているものの、年に1,2回というペースで本業として行っているわけではありません。

お芝居も筋肉のようなもので、毎日鍛えていなければ衰えていくと思うのです。
実際に今、自分がどういう佇まいでどういう表情をしているのか、どういう心の動きがあるのか…
それを以前のように自分でも把握できているのか不確かで、そんな中で今回のような大役を務めるのは申し訳ない気持ちもありました。

もしコロナでなければ、日本からきちんとした女優さんを呼んで撮影するべき
日バ両国にとってそれくらい大きなプロジェクトだと思うからです。

そんな葛藤も含めて、監督のシュボと話した時のこと。
私の不安や迷いを受け止めてくれた上で、こんな言葉をかけてくれました。

「でもさ、考えてみて
確かにマエよりも有名な女優さんやキャリアを積んできた女優さんは日本にいるかもしれないけれど
バングラデシュに実際に住んでこの国の人々と向き合ってきたマエだからこそ
この主人公の大変さや喜び、色んな気持ちに共感できる部分が実際に沢山あるだろうし
青年海外協力隊員の皆さんがどんな風に奮闘してきたかも実際に見てきている。
そういうマエが演じてくれることを、撮影チームはみんな幸運だと思っているよ。」

シュボは夫と共にエクマットラを立ち上げ運営してきた夫の大親友ですが、
この10年という月日の中で、私のかけがえのない友人となってくれた人物でもあります。
同じく演劇畑出身ということもあり、好きな映画や音楽、精神世界の話などの話をする中で心通じ合わせてきました。
 

夫と同じで本当に私利私欲がなく、またいつも自分の美学を大切にしていて
本当のことしか言わない裏表のない性格の彼のその言葉は私の心に沁みわたりました。
 

「私もこの撮影に参加できることを本当に幸運に思う。みんなで絶対にいい作品にしよう!」
そう、約束しました。

実際に撮影現場でもシュボがOKを出してくれると、ああ良かったんだ、と信じることができて
今の自分にとっては信頼できる彼が監督をしてくれたということも、
またいつも仕事をしてきたエクマットラの撮影チームのみんなの存在も、
本当に心の支えとなりました。
 

ダッカのオフィスでは編集が行われていて、今はモノローグのベンガル語の猛練習中です。
この撮影を快く承諾してくださった実際の初代女性隊員さん、JICAの皆さん、協力隊員の皆さん、
そしてこの作品を見てくださる方々のためにも、最後の最後まで良い作品となるよう頑張りたいと思います。




クランクアップの瞬間。
ジョソールでシュボや現地の女性たちと。