※この旅行記は、2007年に世界一周旅行をした時の日記と写真を元に投稿しています。
再びバングラデシュのロックダウンにより通勤時間がなくなった分、一発奮起して旅行記ブログの再開をいたしました。
ロックダウン中も自宅で仕事はありますが、頑張って進めていこうと思いますので、またお付き合いいただければ嬉しいです。

過去の世界一周旅行記はこちらからご覧になれます。↓

 

 

四月二十四日

 

朝起きて、散歩がてらにサグラダファミリアを眺める。

 

世界中の宝物を毎日見て回っているような

夢みたいな現実の日々は、続いている。

 

昨日はバッゲージの車輪が飛んで行ってしまうアクシデントがあり急遽近くで宿泊を決めたけれど、ホテルサグラダファミリアは少しお高いので、節約のために安い宿を探し引っ越すことに。
朝食後ぶらぶら歩きながら周辺のホテルを見るけれど、中々お手頃な宿が見つからない。

 

旅の相方・ちよみんとうろうろしていると、親切そうなマダムが「何か探しているの?」と声をかけてくれた。

安くて良い宿を探している、というとマダムはとても丁寧に
「そういえば日本人がやっているホステルがあるわよ!」とおすすめの宿を教えてくれた。

なんとサグラダファミリアの半額くらいでとても素敵な宿とのこと。
今日はそこに泊まることにしよう。

 

旅をしていると、道に迷ったり初めての土地で分からないことも多くて

そういう不安な時にこうして優しく親切にしていただくと、本当に嬉しい。
この旅で得たものをどう世界に恩返ししていけるのか、今はまだ分からないけれど

とりあえず、自分も日本で困っている外国人さんを見たら絶対に親切にしようと、毎回思う。


昨日車輪との再会(?)を果たし、新しいバッゲージを買う前に試しに壊れたバッゲージにはめてみたら…
なんと、ぴったりはまった!コロコロと動いてくれた!!
出費しなくて済んだ♪とほっとしながら、とりあえず使えるかぎり、今のバッゲージを使い続けることに決める。

飛んで行っちゃった時はどうなるかと思ったけど、車輪が戻ってきてくれて、本当によかった。。。
旅をしていると、色んなことがあるものです。

 

そうして親切マダムのおかげで辿り着いたHOSTEL HILLは思ったよりずっと綺麗だし、色んな国から来た旅人さんがいて、流れている空気がとても自由でいい感じ。多国籍宿って感じでしょうか。

エジプトでもそうだったけど、ホテルよりこういう旅人宿みたいな方が、安いし便利だし、旅をしている宿泊客同士のコミニケーションもあって良いなあと思う。

 

日本人のオーナーさんにはお会いできなかったけれど、日本語でおすすめスポットが書いてあったり、ティーも飲み放題、ネットも使いたい放題、安いのにお部屋が清潔で居心地がいい。
そして何より、窓からサグラダファミリアが見える!

ちよみんと手を取り合って大喜びする私たち。
今朝もう見納めかと思って、地下に眠るガウディさんにもお別れを告げてきたのに…嬉しい再会(*^-^*)

 

良い人、良い宿との出会いに感謝し

今日は…ピカソ美術館へ、いざ。

 

 

 

 

…と思っていたのに、地下鉄の駅から降りてまた迷ってしまい
歩いているうちに、ランブラス通りに出る。


ここは港まで約1.2キロ続くメインストリートらしく、バルセロナ一の繁華街。

道沿いには、果物やお魚やお肉が並ぶ市場の他にも

お洒落なカフェやお菓子屋さん、雑貨屋さんが並んで
可愛いもの好きな人にはたまらない。

偶然の迷子に、またまた感謝。

 

立ち並ぶお店の数々に、ほわぁ~と見惚れっぱなしの私たち

中でも目を奪われたのは…山積みのチョコレート♡

 

 

 

 

こうして日記を書いている今も、写真を見て思い出して溜め息が出ちゃうほど…
魅力的なチョコレートたち。

王道のトリュフはもちろん、ドラジェというドライフルーツをコーティングしたものやナッツがザクザク入ったチョコバー、どれも美味しそう!

 

しかも一粒から購入OKで、気になるものをチョイスしてテイスティング。
ホワイトチョコも気になりつつ、やっぱり食べたいのはミルクチョコとビターチョコのトリュフ、そしていちじくのドラジェとナッツのバーを購入。
周りを見渡すと、みんなポリポリ、その場で食したり、手に持ちながら通りを歩いている。
少しお行儀が悪いかなと思いつつ、わたしたちも一番気になっていたいちじくのドラジェを一口食べてみる。

 

すると、思った以上に新鮮で甘酸っぱいいちじくの果肉感が甘すぎないチョコレートとマッチしていて、しっとりとした食感と口溶けのよいチョコレートも馴染みが良く、言葉に表せないくらいの美味しさであった。

 

ああ…これを毎日おやつに食べたい。

そうしたら、色々頑張れるってくらい美味しい。

 

そんなことをちよみんと話しながら、そこでまたひとつ、魅力的なものと出会ってしまった。
それは…アンティークな腕時計。

 

 

 

 

私はあまりアクセサリーをしないけれど、なんというか腕時計がまるで魔法針かのような不思議なデザインになっていて、びっくりするくらい一目惚れをしてしまい。

そういえば、私たちは食べることと入場料以外にあんまりこの旅でお金を使っていない。
ただでさえ荷物が多いので、荷物が増えることを恐れお買い物もしていなかったけれど

もうあとアメリカの一か国だけだし、腕時計ならそんなに嵩張らないし、、、と思い、26ユーロという自分にしては大きな買い物をする。

 

これから、この腕時計を見るたびに、このバルセロナの街のことや世界一周のことを思い出せるんだと思うと、すごく嬉しかった。
年甲斐もなく、この時計をしたら日本に帰ってからもこの旅の夢を見られるかも?なんて思ったりして。

チョコも、腕時計も、今日はいい買い物したし、ランブラス通りには大道芸人や似顔絵やさんなどもあり、一日中居れそうなくらい見どころ満載の場所だった。

 

大満足でそのまま夜まで過ごしてしまいそうだったけれど
今日は…ピカソを見る大事な日。

人に聞きながら辿り着いたピカソ美術館は、バルセロナの異国情緒漂うゴシック地区にあった。

 

 

 

 

 

世界的にも有名なパブロ・ピカソ。

ピカソは子ども時代をこのバルセロナで過ごしたらしい。

生涯を通じて10万点以上の美術品を生み出したピカソ…。

ナチュラル・ボーン・アーティストとは、彼のためのような言葉だ。

 

キュビズムやゲルニカは美術で昔習ったけれど

一応絵をかじっていた者としては彼の人生と絵画の関係が非常に興味深く

 

親友の自殺により暗色の社会的弱者の絵を描いていた時代
恋人ができ闇から抜け出し明るい色調の絵を描いていた時代

新しい手法を試行錯誤しキュビズムを追求していた時代
シュールレアリスムの影響を受けていた時代…

 

ピカソは、時代によって本当に同じ画家なのかと驚くくらい
色彩や手法を変え多様な作品を生み出してきたアーティスト。

 

きっと心が純粋で真っ白で、色々なものを吸収し、自分自身もキャンバスのように染まれる画家だったのではないだろうか。

 

 

それらを今日、一度に目にすることができる贅沢に心を震わせながら、ピカソ美術館に入る。

美術館は中世ヨーロッパの貴族の館のような雰囲気で、そこにピカソの作品たちが並んでいた。

 

なんというか…
ピカソというと、キュビズムがあまりにも有名すぎて奇抜なイメージも多いけれど
青の時代と呼ばれる暗色の絵画の、なんと皮膚のリアルなことか
新古典主義の時代と呼ばれる母子の絵画の、なんと実写的な温かさがあることか

 

3000点以上の絵画を見ると、ゲルニカやキュビズムがピカソのいかに一面であるかが実感でき、国展で受賞したという少年時代からの画力の高さや凄まじさにもう圧倒されてしまう。

 

また技術だけでなく、僅か15歳の少年が描き出したとは思えないほどその絵の中には人間の深層が繊細に描きだされている。

引きこもりだったピカソは、ボヘミアンなカフェで芸術仲間たちと出会い、そこで出会った様々な人たちの生き様を作品に投影していく。

 

ピカソの絵を見ていると、人との出会いと別れが、芸術にも多大な影響を与えることを改めて感じる。

 

美術館を出た帰り道

吹き抜ける風に吹かれながら

このスペインの持つ、自由で、強くて、けれどどこか影を纏う空気や風土が、芸術家たちの作品に深みを与えているのではないか

そんな風に思った。

 

絵を通じてピカソと対話できた素晴らしい一日だった。

今日はピカソの人生に想いを馳せながら、眠ろう。

 

そんな三十四日目の夜。