子どものヒーロー、アンパンマン。
日本ではテレビもグッズも大人気で、乳幼児はみんな通る道と言われています。
かくいう息子も、アンパンマンが大好きで
ちょうど2、3歳の頃は毎日のようにアンパンマンアンパンマン言っていました。(ああ懐かしいです。。。)
子どもを持つようになって、素敵な絵本との出会いや再会がたくさんあり、
アンパンマンの絵本がそのひとつでした。
アニメのアンパンマンは、可愛らしいキャラデザインで美味しそうなパンの匂いが漂ってくるような、幸せなパン工場のシーンから始まることが多いですが
絵本のアンパンマンの世界は砂漠に行き倒れた旅人がボロボロの姿で死にそうに倒れているところから始まります。
そしてそこに助けにくるアンパンマンも、ボロボロの恰好です。
困ったひとに自身の顔を分け与えて顔がなくなっていく描写は、アニメにも絵本にも必ず描かれていて
このアンパンマンの痛みを伴う優しいヒーローイズムこそが、作者やなせたかしさんのメッセージなのだと思います。
戦争に出征中も地元民のために紙芝居を作り上映していたこと
手塚治虫さんとも映画のお仕事をされていたこと
手のひらを太陽にの作詞もされていること
様々な公益事業を無償で引き受けていたこと
亡くなる直前まで映画製作に携わられていたこと
「死ぬときは死ぬんだよ。
笑いながら死ぬんだよ。
そうすれば映画の宣伝になる。
死ぬまで一生懸命やるんだよ。」
と、劇場版アンパンマンの初日舞台挨拶でおっしゃっていたこと。
やなせさんを語るにはエピソードがありすぎて…
きっと、創作の神様の元に、作品を生み出す定めに生まれた方なのだと思います。
そして、絵本のアンパンマンのあとがきに
「アンパンマンについて」
というページがあります。
この国で夫や仲間たちと活動を始めてから
更に心の深いところに、このやなせさんのメッセージが染みわたるようになりました。
「ほんとうの正義というものは、けっしてかっこうのいいものではないし、そして、そのためにかならず自分も深く傷つくものです。」
特に、この言葉を見ると涙があふれてきて
何度も何度も救われた気持ちになりました。
今も外に出れば、物価高や公害や飢えで困っている人たちがたくさんいます。
きっとこの国だけではなく、世界の国で、きっと日本にもいるでしょう。
私たちが日々汗と埃の中で走り回っても
それでも焼け石に水で問題は全然解決せずに
無力感に苛まれることも多々あります。
そしてそんな弱い自分、すぐ泣く自分、傷ついている自分に対し、
こうした活動をする資格がないんじゃないかと自己嫌悪することもあります。
でも
かっこうわるくてもいいんだ。
傷ついてもいいんだ。
強く格好いいスーパーヒーローにはなれないけれど
ボロボロでも、強く優しい人間でありたい。
すごく単純ですが、このアンパンマンのように
誰かのために自分が傷ついても、気楽そうに顔は笑って、その誰かを安心させてあげられるような
そんな人間でありたい。
実はヒーローものへのアンチテーゼとして作られたと言われているアンパンパンというヒーローですが
子どもに強さとは優しさであるということを伝えているだけではなく、
過酷な現実と戦わなければいけない大人の私たちにも、沢山のメッセージと人間として生きる希望をくれている作品だと思います。
やなせさん、ありがとうございます。
やなせさんのメッセージで、救われている人が今も沢山います。