ピンチはチャンス。
よく聞くこの言葉を、私事ですがつい最近実感できた体験がありました。
相変わらず、平日昼間は子どもたちのための活動やクラフト工房の運営でバタバタしていますが
その合間を縫いながら長い間制作をしている今年発売予定のベンガルソングアルバムは、3月頭に無事レコーディングを終えて今はブックレット(アルバムについてくる歌詞カード)のデザイン作業に入っています。
ベンガル語歌詞はもちろんのこと、やはり日本の皆さんやこちらにいるバングラ関係者の日本人の方々にも聞いてほしい…
そう思い、歌詞はベンガル語と日本語の両方を付けることにしました。
レコーディングを終えた音源を聞きながら、ベンガル人スタッフにも同席してもらい日バの歌詞を確認する作業。
ひとつひとつの曲に思い入れがあり、また作詞作曲やアレンジやレコーディング時にも色んなエピソードもあり
とても大切に、愛しい気持ちで…確認作業を進めていたのですが
その中で、なんと大きな発音ミスが発覚してしまったのです。
Amay dekona(わたしを呼ばないで)という、私のソロのカバーソングで、「もう戻ることはできない」という印象的なフレーズが度々出てくるのですが
レコーディングの際に、ベンガル人ディレクターさんから指示を受け、息を吐きながら発音する有声音で発音したところ本当は無声音が正解だったらしく、「開けることはできない」という謎の意味になっているということ。。。(泣)
ベンガル語は本当に発音が難しく、ひとつの音に4種類ある発音もあり、そのニュアンスで言葉の意味も変わります。
正直、私たちの耳では聞き取れない言葉も多く、今回レコーディングで一番苦労した部分でもありました。
心を込めてすごく良く歌えた!!
今の最高だった!!
と思ったテイクも
発音が駄目で録り直しになったり…
その逆もしかり、
すごく完璧に発音できた!!
と思っても
音程が外れてしまったり、気持ちがのっていなかったり…
その連続で。
けれど、その苦労も始めから覚悟でオールベンガル語アルバムを作ると決めたのですから、
母国語ならばもっと集中できたのに、という言い訳を言うことは許されません。
一番最後に録ったAmay dekonaという曲は、少しメランコリックな大人の雰囲気の曲で、曲の世界観に合わせて毎晩練習をして臨んだレコーディングだったこともあり、
また、日本側では既にMIX作業が進んでいるだろうということもあり、
ミスが発覚した時は、本当に落ち込み憂鬱な気持ちとなりました。
もう一度、あんな風に歌えるだろうか。
そもそも、日本側で完成作業を進めてくれている音楽会社の皆さんに多大なご迷惑をかけてまで録り直すべきだろうか…。
そんな風にとても悩んだのですが、ここまで時間をかけてみんなでこだわりながら制作した作品だからこそ、ミスが発覚したからには最善を尽くしたいと思い、正直に日本のT's musicの皆さんに打ち明けて相談したところ
こちら側は問題ないからミスがあるなら録り直した方が良いとの寛容なお返事をいただき
そのお言葉だけでもとても救われた気持ちだったのですが、最後に一言…
よりいいテイクを楽しみにしてます!
と、書いてあって。
その言葉で、ぱぁーっと何かが開けた気持ちになりました。
自分は、以前のテイクのように歌えるかどうかを悩んでいたけれど
新しいテイクがより良いものになれば、録り直したことにも意義があります。
早く送らなければとドタバタしながら、いつも仕事の後に練習したり、なんとか時間を遣り繰りしてレコーディングスタジオを押さえて録ったこの歌を
もう一度…そう、更に良いものにするために録り直すチャンスをもらえたんだ。
そんな風に思えるようになって、憂鬱は吹き飛び、やる気が漲ってきました。
GOサインをいただいてから、その日の夜には録り直すことになったのですが
その間にもう一度歌詞を読みこんで、この歌を作られたLucky Akhandさんのオリジナルの曲を聞いたり
私の中で歌を消化する時間も得られて、結果とても心を込めてレコーディングをすることができました。
ピンチはチャンス。
そんな当たり前の、たくさん聞き慣れた言葉を
この歳になってもしみじみと実感させてもらえた出来事でした。
今回の場合、私は良いボスと仕事仲間に恵まれていたということもありますが
人生の中でもきっと、失敗から学び、その時の経験が結果的に成功に繋がること、きっと多いと思うのです。
失敗した時こそ、そこから大逆転できるチャンスがある。
そして今回自分がいただいたような言葉を、失敗してしまった人にかけてあげられるような大人に、私もなっていきたいと思いました。
Amay dekona ferano jabe na
私を呼ばないで 帰ることはできない
Ferari pakhi ra kulay fere na
解き放たれた鳥のように もう戻らない…
録り直しの際、私はこの歌の主人公となり、この世の全ての柵から自由になり解き放たれる女性をイメージして歌いました。
アルバムが出来上がったら、これがあの時の曲か!と
こんなドタバタエピソードも思い出しながら、ぜひ皆さんにも聞いていただきたいです。