※この旅行記は、2007年に世界一周旅行をした時の日記を元に投稿しています。

 

四月二十二日

 

今日はマドリードをのんびりお散歩。
マドリードに来たら行ってみたかった、レティーロ公園へ。

 

 

 

 

「緑があるところはいいねぇ~」と、

歩き始めてすぐ、何かデジャヴのようなものを感じて…

ちよみんとふたりで、朝にこの感じ。

 

そうだ!香港の九龍公園に似ているんだ!
と、ふたりで同じような感覚になって。

広い敷地も、この池のかんじも、どこか懐かしさを感じる…
と思ったら亀さんがいるところまで、一緒(*^_^*)。

優雅に泳ぐ姿に、癒される。

 

あの時は旅が始まったばかりだったけれど、今はもう半分をすぎて三十一日目。
あっという間だったような気もするけど、私たちは着実にこの地球を進んでアジアからヨーロッパに来ている。

 

 

 

 

この公園はもともと皇族の憩いの場だったらしく、公園内に数々の素晴らしい建築やモニュメントが散りばめられているという。

 

そしてここに来てみたかった理由のひとつが、クリスタル・パレスと呼ばれるガラスの宮殿。

建築家リカルド・ヴェラスケス・ボスコによって1887年に建てられたという。

 

この宮殿は、当時スペインの統治下であったフィリピンのものを展示するにあたり建てられた。
スペインの人たちにとって、フィリピンの熱帯植物や生物などは珍しく貴重なものだったらしい。

確かに今のようにインターネットもない時代、外国のものを見る機会なんてめったになく、人々はアジアの遠い未知の国のものに興味津々だったとか。

 

 

 

 

それにしても、近くで見るとガラスの宮殿は全方向から光を通し、反射し、とても美しい。

建築物としてだけでなく、建物全体がひとつの美術品のよう。

 

 

 

中に入ってみると。。。
まるで自分が美術品になったかのような錯覚に陥る。

 

展示室の中には入れなかったけれど、部屋の中には石で造られた恐竜のような不思議なオブジェが展示されている。
光が差し込む造りになっているため、お部屋の中全体がまるで眩しさに溢れた別世界というかんじ。
 

 

 

 

公園内を歩いていても、素敵な景色ばかり。
例えばこちらは公園から見える聖マヌエルと聖ベニート寺院。

新ビサンティン様式で造られたこの教会は見ているだけでため息が出るような、異国情緒を感じさせてくれる。

 

歩いているとたくさんの噴水があり、ひとつひとつテーマや雰囲気が違うので本当に自然の中で美術館巡りをしているみたい。

 

 

 

 

 

 

池のほとりにあるアルフォンソ12世のモニュメントゾーンは、更にダイナミック。

パルテノン神殿か!!と突っ込みたくなるくらいの優雅な憩いの場。。。

ここでスペインの皇族たちが休暇をとっていたんだなあと思うと感慨深い。

 

今はこうして市民に開放され、市民の憩いの場となり、この彫刻品たちも沢山の人々の目に触れることになって喜んでいるはず。
この神殿風建築なんて、デートにぴったりだね!とちよみんときゃいきゃい盛り上がる。

ここで恋人たちの物語が始まったりするんだろうな。

夕暮れ時なんて、きっと素敵だろうなあ。

 

 

 

 

 

 

この壮大な自然美術館になら何時間でもいられるというくらい、私たち二人とも気に入ってしまい、その後街に繰り出すはずが今日はもう一日ここでゆっくりしよう~という気分になる。


流れている空気が、平和で、優しくて、なんというか清らかで。

いるだけでゲームで言うとHPが回復するかんじ(*^_^*)
大荷物を背負っての移動や、夜の動画更新で疲れていた心身を、このレティーロ公園は柔らかくほぐして癒してくれた。

 

公園内には季節の花が咲いていて、ふたりで記念写真をたくさん撮る。

可愛いピンクのお花、若々しい新緑の木々、そしてパンジーのお花畑。。。

これらもまた、美術品に劣らない自然からの贈り物のアートだ。

 

 

 

 

 

 

だいぶ歩き回った後に、昼寝ゾーンを見つける。
みんな芝生にそのまま寝ているので、最初は人が何十人も大量に倒れているのかと思い、ええっ!と驚いたけれど、皆さん本気でぐうぐう寝ているのだ。
なんと無邪気なお姿。。。

 

海外旅行に出てから、浮かれているような私たちだけれど旅行費を持ち歩いているのと女二人旅ということもあって、外ではかなり気が張っている状態だった。
でも、この公園には笑顔のポリスマンたちも見回りをしてくれていて、スペインの人々の朗らかさとこの公園の平和な雰囲気もあり、みんなが無防備にこうしてお昼寝できるのがわかる。

 

私たちもせっかくだから皆さんの真似をして日向ぼっこしながらサングラスをかけて昼寝に参加してみることにした。

一応女性の隣を選ぼう、ということでやってみるちよみん、完全に現地の方々と同化しています。。。

わたしも今日は現金もそんなに持ってないし、ちよみんを見届けてからその横に寝てみることにした。
キュロットワンピでよかった!

 

 

 

 

 

芝生に寝転ぶのは…いつぶりだろう??
始めは背中がチクチクしたけれど、慣れるとひんやりとした土と草の感触が気持ちよくて
そのうち芝生の青い匂いに包まれて、日差しがポカポカあったかくて、木漏れ日や葉擦れの音や頬を撫でる風も全部が心地よくて…

 

人間て、やっぱり木々とか、花とか、土とか、風とか

そういうものに触れていると細胞が喜ぶんだな、そして元気になるんだなって実感した瞬間。

コンクリートジャングル東京で育ったわたしだけど、だからこそ?
この旅で、こうして自然があるところに来るたびに実感させられる。

 

そして、寝転ぶとスペインの青い空がよりいっぱいに視界に飛び込んで来た。

このまま何も考えないで、青空と芝生に包まれていたい。
そんな頭が空っぽになる心地よい体験。

 

もしも人生に絶望した人がここに来てこの芝生に寝転んだら、きっと少し生きる力が沸いてくるはず。

それくらい、本当に人間の本来求めてるものが得られる空間のように感じた。

今日、ここに来て本当によかった。

 

 

 

 

 

どれくらいぼーっとしていたのだろう。

寝たような気もするし、ずっと起きていた気もするし、微睡んでいたような不思議な時間だった。

たくさん公園で歩いたのでお腹がペコペコな私たち、後ろ髪を引かれながら公園を後にする。

 

ガイドブックに載っている「おしゃれロード」とやらに行ってみると
全然活気がなく、お店も閑散としていてただの普通の道。。。

そしてスペインに着いたら真っ先に食べよう!と思いパエリアが目当てで入ったお店には、パエリアがなかった。。。ガーン。

仕方がないので、おススメを聞くと
チキンのオーブン焼きというのでそれを頼むことにした。
パエリアは後のお楽しみにとっておこう。

 

 

 

 

 

そして運ばれてきたオーブン焼きチキンは、味はさっぱり塩味で、皮がパリッパリで中はしっとりジューシーで、とても美味しかった。

アツアツのお肉をとりわけながら、ハフハフ言いながら口に頬張る…幸せ。

丸焼きで出てくるあたり豪快さを感じるけれど、鶏さんありがとう、という気持ちにもなる。

 

 

 

 

帰り道には、すごく立派な建物を見かけて
美術館か何かかしら…と思って、道行く人に尋ねてみるとなんと郵便局だった!

こんなに荘厳な郵便局は、初めて見る。
道行く人に尋ねてみると、以前は宮殿だったらしい。
こういう建物の中だったら、働きながら優雅な気持ちになりそうだなあ。
制服も、アンティークなのかしら…

 

なんてことを考えながら、今日は早めにホテルに帰り動画の更新に勤しむ。
ビジネスセンターのお姉さんがとても親切で、諸々サポートしてくれる。
私たちが投稿した動画の中で人気を博している(?)「チョメリの車窓から」シリーズも無事アップできた。

スペインについてから、理由が分からないけれど気持ちが明るい。

突き抜けるような空の青さと、人々の寛容さのおかげだろうか

今日の公園での、ごくありふれた、でもとても尊い時間はもちろん、

何か自分がいるだけで肯定されているような、そんな気持ちになっていた。

 

明日もまた、あの公園へ行きたいくらいだけど
そうだ、明日はホテルから歩いて行ける距離にあるプラド美術館に行こう!

スペイン王室が愛した至宝の数々が展示されているという世界最高峰のプラド美術館。
日本で絵を描いていた時に、見たくてやまなかった作品たちが

今は歩いて行けば見られるなんて、奇跡のようではないか。

そうした奇跡に当たり前に慣れてしまいそうになっていた私たちだけど

旅も折り返し地点を過ぎて、終わりが見えてくると

この貴重すぎる時間を大事に過ごしていこう、という新しい気持ちが出てきた。

なんだかふと、人生みたいだな、と思う。

 

旅も、人生も、永遠に続くわけではない。
だから過去が積み重なり今があって、同じように未来に繋がる今をどう過ごすかが大事で。
今までは旅の終わりを考えるのが嫌で、なんとなく考えないようにしていたけれど
そうした「前向きな終わり方」という考え方を、とても静かに穏やかに、心に思い始めた

 

そんな、三十一日目の夜。