三十日目

 

今日は、陽気で楽しくて美味しかったイタリアともお別れで、ヨーロッパ最後の国、スペインへ!!

久しぶりの飛行機移動ということで、そわそわしているのか
早朝、というか…2時半に目が覚めてしまう。
朝食まで、動画の整理や日記を書き溜めて、今までの日々に思いを馳せる。


イタリアは、なんだかんだ楽しいことばかりだったな。
ロッコさんのパスタがしょっぱかったことだけが想定外だったけれど、それくらいしかアクシデントがなかったって、旅においてとてもラッキーなことだ。
初期の香港・マカオで感じていたような高揚感、またインドでの日々に感じていたような緊張感はもはやなくなり、旅が日常化してきているのをヨーロッパに入ってから感じていた。


そんな中、未知の国スペインでは予想外の何かがあるのでは…と期待してしまっている自分がいる。
危険な目には遭いたくないくせに、予期せぬアドベンチャーを願うなんて我儘だなあと自分でも呆れてしまうけれど、このまま順風満帆に旅を終えてしまってよいのだろうか、という得体のしれない焦燥感も最近は感じていた。
 

スペインは、私が敬愛する舞台制作会社トム・プロジェクトの社長である岡田潔さんが、その昔放浪して滞在していたということでお話に聞いたり

出版された本でその風土や人々の懐の深さを知り、行ってみたかった場所のひとつである。
岡田さんは、私が十代から入所し育てていただいた劇団をやめてフリーになってから、初めて外部の舞台演劇に出演する機会をくださった方で、そのおかげで蒲田出身者の私にとっては憧れのスターだった「蒲田行進曲」の銀ちゃんである風間杜夫さんと、明治座公演で共演という夢を叶えることができた、いわば私の演劇史の恩人であり
いつも悠久の時に包まれているような、そんな神仏のような雰囲気を纏っていて、お会いすると心が洗われたような気持ちになる。


「世界一周の旅に行くことを考えている」

というと、家族や友人は応援してくれても
仕事の関係者の方々からは、
「時間と若さを無駄にするな」

と沢山の反対もされたけれど


「それはいいですね!芸能の仕事をしている人は、日本でどうにかして仕事を得ることばかりを考えがちですが、人間が磨かれて魅力的になれば、自然と仕事は舞い込んでくるものです。

表現者にとって、出会いや感動、その他すべてが学びですから、旅で心を自由に開放して、たくさんのことを吸収して成長して帰ってきてくださいね。」

と、岡田さんは素晴らしい激励をくださった。

そんな岡田さんも、自己流の暗黒舞踏を大道芸のように道で披露したり子どもたちに教えて、スペインの街の方々から食物をもらったりして生活をしていたというのだから本当にあっぱれだ。


岡田さんしかり、沢木耕太郎さん然り、辺見庸さん然り、金子光晴さん然り…
旅を愛する昔の人々には、私たちの想定外をいくようなダイナミズムがあり、それを詩や小説や写真や絵画として表現した時に、はっとするような気付きや胸を刺すような感動が生まれる。
そうした偉大な先人たちの型にはまらない面白さ、必死の命の輝きに比べると、自分は快適で安全な旅をしすぎていて…
というのが、比べるのもおこがましいけれど
時々感じる得体のしれない焦燥感の正体なのでは、とふと思う。
 

誰かの才能や幸せと比較してしまいそうになった時、わたしはスヌーピーの有名なこの名言を思い出す。
「You play with the cards you’re dealt. 」
(配られたカードで勝負するしかないのさ)

 

スヌーピー。。。実に大人である。
本当にその通りで、型にはまらないような旅にも憧れるけれど、私やちよみんの性格的に羽目を外すことはあまりできない。
経験よりも、いつも安全を優先してしまう。でもきっと、それは悪いことではない。
私たちは、私たちらしい旅をしていこう。
例えこのままダイナミズムがなかったとしても、そうした旅の日々の些細なことでもきちんと伝えていけるような感受性と言葉を磨いていこう。

そんなことを考えながら、マドリードに向かう飛行機に乗る。

 

最近ずっと列車移動だったから、移動時の景色は並行に動いていた。
飛行機に乗って雲の上を飛ぶことで、人間は新しい視点を手に入れたのだと改めて実感する。
そして…スペイン到着!
到着早々、清々しいほどの青い空と白い雲が眩しい。

 


 

 

そして地下鉄を乗り継ぎ、マドリードの中心地へ。
今回は「ゴヤ」というスペインの画家の名目のついたホテルに滞在する。
なんとも見たものを不安にさせるゴヤの絵。。。
そんな印象とは裏腹に、お部屋は綺麗でとても清潔でお洒落な近代風ホテル。


お腹が空いたので、今日は近くのスーパーへ行くことに。
そこがまるでなんでも手に入る日本のセレブスーパーのよう。
新鮮なお魚もたくさんで、ああ美味しそう…!

新鮮なサーモンや、ロブスターも!!

皆さん、こんな巨大ロブスターをお家でお料理するのかな?
贅沢でうらやましい(*^_^*)

 




 

な、なんと愛しのお寿司も…!!

 

 

 

 

久しぶりのお寿司との再会にワーワーおおはしゃぎていると、
パトリシアさんという美しい女性が日本語で「コンニチワ!Are you Japanese??」と話しかけてくれる。
日本に住んでいたそうで、日本が大好き!日本人と話せて嬉しい!と言ってくれた。
わたしが握りしめているお寿司を見て、スペインでも和食はヘルシーフードとして人気なのよ!と教えてくれる。
わぁ~そんな風に言ってもらって、こちらこそ嬉しいなあ。
カタコトの英語と日本語同士でおしゃべりをしながら、スペインのことも色々教えてもらい連絡先も交換する。

 

初日から、青空にお寿司に美人に…スペイン、良い旅になりそうな予感!!

 

 

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最近はだんだんと仕事量がもとに戻りつつあり、なかなかゆっくり世界一周旅行記を書く時間がなかったのですが、今日は他の用事を早く終わらせて久しぶりの投稿です。
10年以上前の自分の思考や言動は微笑ましくも、若さゆえの恥ずかしい部分も多々ありますが、
日記を読んでいると、こんなこと考えていたんだなあと
自分が考えていたことも忘れてしまっていることが多いので新鮮な気持ちで読み返しています。

それにしても、なんて自由な時代だったのでしょう。
行きたいところに、自由に行ける。
昔は当たり前だったことが、今はもう当たり前ではなくなってしまいました。

今は常にマスクをして、消毒液を持ち歩き、感染をなるべく拡大させないように人が移動することを控える時代がやってきました。
こんな風に海外旅行なんて、当分できないんだろうなあと思います。
とても残念ですが、これがこれからの当たり前になっていくのなら、私たちは生きるために、適応して受け入れていかなければなりません。
そして、たくさんの自由を失ったと思う今でも、きっとまだたくさんの自由をわたしたちは纏っていると思うのです。

当たり前は、当たり前じゃなく、時代によって変わっていく。
そんなことを、日記を読み返しながら思いました。


こちらは相変わらず感染の歯止めがかかっていない状態ですが、日本もまた少しずつ増えてきていると聞いています。
日本の皆さまも、どうかお気をつけてお過ごしください。