四月十九日。

 

昨夜は不思議な夜だった。
フィレンツェの街自体がワンダーランドなので、何もなくともなんだか異世界に迷いこんだアリスの気分になれるのだけれど


駅周辺で撮影をしていたら…ポリスに「ダメダメ!!」と止められる。
日本と違い、海外では撮影禁止の公共の場所が多いので「すみません」と素直に謝り、だいたいそういう場合は撮影したものを目の前で速やかに消去する。
夜のフィレンツェの駅、すごく綺麗だったから日本の皆さんにも伝えたかったなあ。。。と思いながら去ろうとすると、そのポリスから色々質問される。


どこから来たの?
何してるの?
いつまでフィレンツェに?

 

始めは公務として、撮影していた私たちの情報を把握しているのかと思い、それも素直に話していたら
だんだんと質問がプライベートな事項に。。。
しまいには、
「今度日本に行くから案内してよ、ヤフーメールある?アドレス教えて」
と言われ…


困った時に頼るはずのお巡りさんがチャラチャラしてるって一体…(;^_^A。
ポリスもイタリア男子はこうなのか。
個人的な欲求が職務より勝ってしまうイタリア、恐るべし。

なんだかもう何も信じられない気がして、ちよみんと辟易としながらホテルへ帰ることに。
そうしたら、ホテルへ着いた途端、すごい雷雨が始まり…
あのまま外をふらふら撮影していたら、傘もない中カメラも壊れてしまっていたかもしれない。
そう思うと、あの軟派なポリスにも感謝の念が沸いてきた。

小腹が空いていたので、朝食で食べきれなかったパンやスーパーで買った生ハムやチーズをお部屋で並べて、食することに。
寄せ集めでもキレイに盛り付けるととっても美味しそうで、わあ~♡とふたりで盛り上がりながらいただきまーす!とかぶりつくと
パンが固くなっていて、全然噛み切れない…。
無理やり噛み千切ろうとしているお互いの必死の顔が可笑しくて、やっと千切れたと思ったらその反動で椅子から転げ落ちてしまい。。。
お酒も飲んでないのに、まるで酔っ払いのようなテンションで笑い転げながら、こういう時にふたりでよかったなあとしみじみ思う。

一人だったら、マリオさんやあのポリスにしつこくつきまとわれたのも嫌な怖い思い出になっていたかもしれないけれど、ふたりでいると数的にも勝っているから気持ちに余裕があるのと、「また変な人いたねー!」と文句を言ったり笑い合ったりしているうちにそれもおかしい思い出として消化できるから(^^)。

 


今日はフィレンツェからイタリア最後の街・ローマに移動する日。
ユーレイルセレクトパスを使うのは、これで最後になる。

その後は、スペイン・アメリカと飛行機の旅に戻るので、車窓からの優雅な景色ともお別れ…最後の列車の旅、噛み締めよう。

 

夕方に列車に乗るまで、この素敵な花の都をゆっくり満喫することにする。
フィレンツェの中でも一番ファンタジックな、あの夢の世界のような空気をまた感じたくて、メリーゴーランドがある広場へ。
夜のメリーゴーランドも綺麗だったけれど、昼間のメリーゴーランド昼場もまた良いかんじ。
なんだか幼いころの、幸せな記憶に包まれるような…気持ちが、そんな心地よい状態になる。


乗っているのは小さな子どもばかりばかりだったけど、私たちも思い出に乗ることに。
外国人が乗るということでか、周りの皆さん拍手をしてくれる。。。
フィレンツェの街の皆さんの優しさに嬉しく思いつつ、そんなに注目されるとさすがに大人としてちょっぴり照れててへへとなる。
メリーゴーランドって遊園地や楽しい場所にあるから存在自体が非日常で幻想的だけど、中に乗ると更に景色が360度魔法にかけられたみたいで…色んな記憶がぐるぐる回って溶けてしまう甘い秘薬のよう。
これから先、人生でメリーゴーランドに乗ることもまたあるかもしれないけれど、きっとこのフィレンツェの思い出はずっとずっと特別だと思う。

 

メリーゴーランドにも乗れたし、もう悔いはない…という気持ちで、アルノ河の橋のほうへ。
空が大きくて、青くて、河にもその青が反映していて…とっても清々しい。
空気を吸い込むだけで、自分の身体が浄化されたように感じる。
なんなら、この花びらに包まれたようなフィレンツェの空気を、お土産として持ってかえりたいくらいだ。

 

 



お昼はドォーモ近くのお洒落なイタリアンレストランへ。
いや、ほとんどがイタリアンレストランなのだけど。。。
今までシーフード系が多かったので、今日はボロネーゼを頼むことに。
お肉がみっちりぎゅむぎゅむ入っていて、味付けも上品で本当に美味しい。
パルメザンチーズを惜しみなくパスタにかけるのも、この旅でクセになってしまいそう。

時間の流れがゆっくりで、時計もあまり見ない生活に慣れてしまったから気が付くともう出発の時刻に!
急いで買いたかった歯ブラシやらヘアカラーやら日用品を購入し、ホテルへ荷物を引き取りに戻る。

最後のユーロスターで、ローマへ。
ユーレイルパスのおかげでまた一等席に案内される。
お隣になったご婦人とローマに行くまでカタコトながらイタリア談議に花を咲かせる。
白髪で上品な、ザ・ヨーロッパのご婦人!というかんじの方で、子育てを終えてからは旅が趣味でその方もローマに行くという。

お洒落をして、旅行して、美味しいものを食べたり
綺麗な景色を眺めるのが、わたしの人生の楽しみ

 

ご婦人はそう言って、にっこり微笑まれた。
きらきらした色素の薄い瞳に、吸い込まれてしまいそう。
やっぱり、いくつになっても自分の好きなことをしているひとは魅力的だなあと思う。
私たちも、あんな風に年を重ねて旅したいね、と心から思う。
おばちゃんになっても、おばあちゃんになっても。

そして到着したローマ。
駅が大きい!!そして駅に活気がある!!
イタリアの首都であり、広大な国際都市であり…
「ローマは一日にしてならず」とか、「すべての道はローマに通ず」とか
ローマの偉大さを表す言葉はたくさんあるけれど
ここには何か…帝国たる所以の迫力が…圧が…確かに、ある。

 

こうして旅してみると、ミラノ、ヴェネツィア、フィレンツェ、ローマと同じイタリアでも漂う空気が全然違うことに気が付く。
確かに日本だって、東北と九州だったら文化も食べ物も空気も全然違うもんなあ。
色で言うと、ミラノはショッキングなオレンジ、ヴェネツィアは深い青、フィレンツェは淡いピンク、みたいな。
そしてローマは…どんな色なんだろう。

古代ローマからの歴史、ローマカトリック教会の本部であるバチカン、コロッセオなどの古代遺跡…
周りたいところは山ほどあるけれども、とりあえずホテルにチェックインして荷物を置くことに。
またまた駅近のお手頃ホテルにと入ったのに、なんとお部屋がものすごく広くてベッドが三つもある…!!
今回も当たりのホテルでよかったねえと、二人で大喜びしていたら、なんとそのまま…寝てしまった(泣)。

ああ…貴重なローマでの時間が。。。
現在朝の4時。まだあたりは暗い。

 

昨日寝なければ、夜少しはローマの街を歩けたのに…一回分の夕食も…と後悔しつつ
時間は取り戻せないので空いたお腹を抱えながら、今日寝てしまった分も、明日はローマを一日満喫するぞ!と気合を入れて
結局朝食まで動画更新に勤しむ、そんなローマの夜明け。