四月十五日

 

ミラノでの朝。

朝食が付いているので、ちゃんと起きる食いしん坊な私たち。
朝ごはんはラスクにサラダにスープというお洒落なもので、サクサクのラスクが美味しい!

さすがにこれだけ毎日パン食だと、ごはんにお味噌汁に卵焼き…という和食の朝ごはんが恋しくて
どの国にも、ラーメンひぐまがあればいいのにね~とちよみんとパリの和食屋さんを思い出す。

どの国にも、一定数の日本人は住んでいるのだろうから日本料理はあるのだろう。
でも、母国を離れてずっと海外で暮らすというのはどんな気持ちなのだろう…ただ旅をしているだけの私たちには、その覚悟や苦労は計り知れない。きっと刺激や喜びもたくさんあるのだろうけど。

最近わたしたち二人は、食事だけではなくちょっぴりホームシック気味だ。
もうすぐ旅に出て一か月。
離れてみて感じる日本の素晴らしさや家族の温かさ、友人のありがたさは計り知れない。


本当に人間て、自分にないものを欲しがる生き物なんだなと思う。
日本にいた頃は、外に飛び出してみたかった。
安全な場所にいたから、ドキドキワクワクする冒険をしてみたかった。
でも、いざ海外に出てみると、常に自分の身を守らねばならない緊張感に疲れることもしばしばで、電車で寝てもぼーっとしててもスリに遭わない日本が懐かしくなる。
わたしたちは二人旅で、こういう気持ちも共有できるけど、もし一人旅なら…きっともっと、孤独も感じたんだろうな。

それに、日本ではきっと今日も家族や友人たちは「生活」をしているのに、仕事とはいえ自分は毎日こんなに楽しくて…という変な罪悪感に見舞われることもしばしばで、ちよみんも同じくだという。
改めて、快く送り出してくれた親や友達に感謝だね…と話して、二人で感謝のメールをすることに。

このご褒美の後に、ちゃんと今の経験を活かすかどうかは自分たち次第。
あの旅があったから、こういう生き方ができたと言えるような大人になろうと誓う。

今日の夜にはヴェネツィアに移動するので、少しミラノの街をぶらつくことに。
どこもかしこも、お洒落だけど…物価が高い!!
アジアから抜けてきたから余計にそう感じるのか、なんとなくこれくらいかな…と思う値段の全部10倍くらいの値段。
よって、私たちが買えそうなものはなく、寒い時に羽織る上着とヘアクリップがほしかったけれど、今日も…ウィンドウショッピング(;^_^A。

ミラノの街は、アーケードもモダンだし、ビルも都会的だし、ドォーモ(ミラノ大聖堂)もすごい迫力でびっくりするほど重厚で巨大だけど…けど…いろんなものをこの旅で見過ぎてしまった自分たちを感じずにいられない。
もしこのミラノ大聖堂を、一年に一回くらいのペースの旅行で見れば、どんなに感動することだろう。
今は…一日一回のペースでいろんなものを見過ぎてしまっている毎日だから、感動と記憶のキャパシティがすでに溢れてしまっているような状態で。
毎晩リセットしないと、感動のラインが上がり過ぎてしまうので、気持ちを常に新鮮でいられるよう意識的に心掛けていこうと思う。

歩き回ってお腹が空いたけど、夕食はヴェネツィアで食べることに。
いつも移動中は、休憩時間という感じでウトウトしてしまうけど今日だけは絶対に寝ない!!
だってあの海に浮かぶ街に入る瞬間を見たいから。
向かい席に座っていたおじいちゃんとおばあちゃんも、ヴェネツィアに行くらしく、景色が楽しみですよねえ~と和やかな雰囲気。
ヨーロッパのご年配の方って、どうしてこんなに上品なんだろう??
なんだか対のお砂糖菓子のようなお二人に癒される(#^^#)

そして…夜のヴェネツィアに到着。
車内もみんな笑顔でワーオ!と大盛り上がり。
それくらい幻想的な景色なのだ。





降り立ってから、その感動は更に深まる。
水面に灯りが反射されて、上の世界も下の世界もキラキラ、綺麗…。
なんだかファンタジーの世界に迷い込んでしまったようだ。
遠くから聞こえるのは人々の笑い声と、近くには水の潺ぐ音。
そういえばこの街には車がない。
だからあの、クラクションや機械的な音が全くないのだ。
ユートピア…桃源郷。

そんな言葉が、頭によぎった。

いつものことながら、荷物が重いのでとりあえず駅から近いホテルでお手頃価格のホテルを探し、「アバッツィオ」というホテルに泊まる。
外観も内装もまるでレトロな映画に出てくるお屋敷のようなホテル。
ああ…なんだか夢のよう。

「ベニスに死す」という映画があったなあ。
生と死。

若さと老い。
創られた美と自然の美。

色々な対比が描かれていたあの映画の舞台が、この街であったことを思い出す。
「美」がひとつのテーマであった映画に、この街の美しさが説得力を加えていた。
実際に訪れてみると、この美しい街には本当にあの美しい少年タジオがふと現れそうだ。

そんなことを考えながら、荷物を置き夕食を食べに外に出る。
まるで夜のディズニーランドのような可愛くファンタジックな装飾のお店を見つけ、お客さんもワイワイ盛り上がっているので吸い寄せられるようにそのお店に入る。
そのお店は、お客さんがワインで乾杯しながらみんなでイタリアの歌を歌っていて、それに合わせてロッコさんというハンプティダンプティのようなおじさんが中央でロッコダンス!ところころ踊っていて、まるで本当にディズニーの世界のよう。


私たちもその輪に混じって踊っていると、みんなが手拍子でウェルカムしてくれる。
いい街だなあ。ひとしきり盛り上がり、お客さんたちがそれぞれの席に戻ると、
「何食べる??張り切ってつくるよ!!」
と踊っていたロッコさんが私たちに話しかけてくれる…ロッコさんシェフだったのか!
本当に楽しいお店だ!

私たちは、シーフードが食べたかったのでおまかせシーフードパスタと、バジルのニョッキを頼むことに。
ロッコさんのお料理、た楽しみだなあ~♪



 

 

運ばれてきたお料理は、パスタがつやつやで本当に美味しそう!!
昨日のミラノのお料理も本格的だったし、さすがイタリア本場の味!と思い、シーフードパスタを口に頬張ると…

しょっぱい~(;´Д`)!!しょっぱすぎ!!

もう、そのまま塩を食べてるんじゃないかと思うほどしょっぱい!!
なんじゃこりゃー((+_+))と言いながら、きっとニョッキは大丈夫とそちらを食べると…

 

こちらもしょっぱい~!!体に毒!!ってくらいしょっぱい!!

ロッコさん酔っぱらって塩の分量間違えちゃったんだろうか…(泣)。
ひーひー言いながら食べてみたけど、やっぱりしょっぱくてギブアップ。
どう??ってお店の人に聞かれたので、ソルトが多すぎ!と伝えたけれど、これがヴェネチア風だよ~♪と笑ってかわされてしまった。。。

このお店の味が濃いのか、ヴェネチアの味付けが濃いのか…??
どちらにせよ、今夜はこの街の美しさも情緒も忘れてしまうほど、塩分過多なロッコさんパスタだった。。。