四月十四日

 

今日はイタリアからウィーンへ移動。

イタリア…と聞いて、わたしが始めに思い浮かべるのは、ジョジョの奇妙な冒険。
特殊なジョースター家の血を受け継いでいく主人公たちが入れ替わり、確か5部はイタリアが舞台の物語だった。

ブチャラティ…好きだったなあ。
主人公のジョルノよりも好きだった。
荒木飛呂彦先生の漫画は独特の世界観を表現する個性的な絵もさることながら、台詞がとても文学的で、擬音語の使い方も天才。
5部はブチャラティの名言だらけでした。

「オレは正しいと思ったからやったんだ」
「後悔はない…こんな世界とはいえ、俺は自分が信じられる道を歩いていたい。」
「吐き気をもよおす邪悪とは…何もしらない無知なる者を利用することだ!」


実は思春期ではなく20代という割と最近になってから出会ったにも関わらず、私にたくさんの素敵な刺激を与えてくれた作品です。
ブチャラティの決め台詞、「アリーヴェデルチ!(さよならだ!)」ってイタリアで通じるか、使ってみよう。

 

そんなことを考えながら、駅へと向かう。
ユーロは高いからなるべくタクシー移動は控えて、トレーニングだと自分たちに言い聞かせて荷物を背負って歩く。
無事駅に着いてユーレイルパスを使い、座席を確保する。
このユーレイルパスは、本当に素晴らしい!
このチケットがあれば大体一等席に座れるので、いつも私たちには分不相応なくらい広くてふかふかな良いシートばかり確保でき…すぐに元がとれてしまう。

朝食のパンを食べながらゆったり窓の外を見ると、そこにあるのは美しいヨーロッパの街並み…。
まるで毎日「世界の車窓から」を体験しているようだ。
イタリアに着くまでの間、日記を書いたりハガキやメールも片付けて快適に過ごし
さあ、次なる新しい国よ、いらっしゃーい♪
…と、思っていたら。

なんと、なんと、なんと。
街が、海に浮かんでいるではありませんか!!
列車の窓から見て うわぁ~♡とちよみんと二人、大盛り上がりする!

初めて見る水の都ベネツィア。
なんて素敵な街なのだろう。
驚きと喜びを隠せず、二人とも窓に釘付けになった。
ああ、この街を早く歩きたい。
でも、今日は残念ながら乗り換えのみで、イタリアの始めはミラノから巡る予定である。
後でのお楽しみ、と言い聞かせてミラノに降り立つ。


 

 

 

ミラノは駅がとても洗練されている。
駅舎が曲線を描いていて、その天井からは柔らかい日差しが差し込んでいる。
デザインの美しさもありながら、自然光も利用していて重厚になりがちな大きな駅としては珍しく解放感が溢れていた。
さすがファッションの中心地、最先端。


ただ…さっき見たヴェネツィアの街が素敵すぎて…
あの空と海とのコントラストの中に浮かぶ世界に心奪われてしまっていて、ふたりともこの都会のミラノには「…すごいねぇ。」とテンション低めだった(;^_^A。

 

街に出れば、ルイ・ヴィトンやプラダなど高級ブティックが立ち並んでいる。
とても敷居が高くて大荷物背負ってどやどやとは入れないけれど、ホテルに行く途中見かけた可愛い雑貨やさんもすごくセンスがよくて可愛い~♡とふたりで大興奮。
ああ、食器は割れる危険性大だけど…
可愛いなあ、買いたいなあ。
こんなの買っていって「ミラノのお土産だよ~♡」とお家で使いたい。。。
 

 

 

 

 

 

駅からすぐの広場には、ゴシック様式のミラノ大聖堂(ドゥオーモ)が聳え立ち…
なんというか街全体が背中を伸ばして、しゃん!としているかんじ。
新たなデザインが生まれる地、というのが分かる気がする。
古き良きものもありながらも、この街には新しい風が吹いているのを感じる。
 


 


荷物が多いので、ホテルはまた駅近で可愛いサンカルロというホテルにチェックインする。
ここもお手頃のプチホテルだけど、お部屋がすごく広くてなんと…ベッドが三つもある!
すごいなあ。日本だと人数で料金をとられるけど、ヨーロッパは一部屋で料金を払う。
この街にお友だちでもいれば、この広いお部屋でパーティーでもしたいくらいだけど…ミラノにお友だちなんて、いない(笑)。
ふたりで夜お部屋で、チーズやワインを買って楽しもう!ということに。

動画の更新をしに、ホテルのロビーに行くと無表情でスタッフさんにビジネスコーナーに案内される。
なんというか、アジアでは逆に距離が近過ぎるくらいホテルのスタッフさんたちも街行く人々も、男女ともに話しかけてきてくれたりしたけれど、ヨーロッパに入ってからは少し日本的というか、現地の人たちとのコミニケーションをこちらから頑張らねばと思う場面が多々ある。
どこの国にも親切な人はいるし、不愛想な人もいるけれど、明らかにアジアとヨーロッパでは人と人との間に存在する熱量や湿度が違う気がした。

アジアは…良くも悪くも、粘着質なかんじ(笑)。
ヨーロッパは、さっぱりしていて見えない壁で区切られているかんじ。
ただ、ヨーロッパの男性は…まだ、どちらとも言いきれない。


この時も、動画の更新をしていたらマリオさんという見るからに怪しい謎の男性が声をかけてきた。
何が怪しいって…革ジャンに赤い革パン、とんがった革靴に色眼鏡にアクセサリー…ひー派手…(;´Д`)。
ミラノらしく、レザーに包まれたサイケファッションというかんじ。
すごく笑顔なのだけど、なんとなく見た目のインパクトもあり良い人なのか悪い人なのか掴みきれない中、
ものすごく興味津々で「どこから来たの?どこに行きたいの?連れて行ってあげるよ!!」と矢継ぎ早に聞かれる。

しかも、隣のパソコンのお兄さんからUSBを借りていたわたしは返すのを忘れてしまっていて、あの人に返したいけどどうしよう…とホテルのスタッフさんに相談したら、「ああ、彼なら〇〇〇号室だよ。」とさらりと教えてくれる。
え!なんでそんな情報をこのレザーマンが…と思っていると、なんとこのホテルのオーナーさんらしい。
なるほど。ちよみんと、「確かにオーナーってかんじ。。。」と納得。

マリオさんのおかげで、USBもお礼のマカオクッキー(いまだ健在(笑))と共に無事渡すこともできたし、なんだかんだ動画の更新もスムーズにできたし、感謝しつつ…やっぱり全信頼を置けそうにはないので、情報だけいただくことに。


「この近くでお手頃価格で食べられる美味しいレストランを教えてください!」
「おススメのお料理やデザートもあれば教えてください!」
「ミラノで見とくべきもの、何ですか?」

本当に一緒に行かなくていいの~?と言ってくれたけど、マリオさんのお誘いは振り切ってふたりでミラノの街へ繰り出す。
マリオさんお勧めのレストランはホテルからすぐ近くで、賑わっているしとっても可愛い看板ですぐに分かった。
流行に敏感そうなマリオさんが「すっごいおススメ!」というだけあって、この日も地元の人で溢れていて、みんなが食べているイタリア料理も本当に美味しそう!!

 

 

 

 

お店は解放感あるオープンテラス。
コックさんたちもにっこにこで、隣の席のご夫婦や家族連れのファミリーも、ここはこれがおススメなのよ!!とか教えてくれて、なんだかワイワイアットホームな雰囲気。
パスタやピザはすごいボリュームで4ユーロ~5ユーロだし、本当にお手頃で…味も美味しい~!!
ここに来られてよかった(*^_^*)。
わたしたちだけなら、どこに入っていいかわからず高いお店とか変なお店に入っちゃったかもしれないし、これはマリオさんに感謝だ。

 

 



この日は、ふたりとも大好きなラザニアと、ピザとポテトとトマトのサラダを頼んだ。
なんというか…チーズがもう、これでもか!ってくらいふんだんに惜しみなく使われていて、もうとろ~り流れ落ちちゃってて、ああ幸せ…♡
トマトサラダも、すごく赤いあまーいプチトマトがオリーブオイルとバジルで和えてあるだけなんだけど、シンプルですごく美味しい!!

これから本場のイタリアで、ピザやパスタを食べまくることができるかと思うと、嬉しくって仕方がない。
せっかく来たんだから、色んな種類のパスタを食べたいな。
出発前は、ナポリでナポリタン、ジェノバでジェノベーゼを食べる…くらいの勢いだったけど、
ナポリタンもジェノベーゼも、イタリアのどこでも美味しく食べられますよ…(^^)
とHISのスタッフさんに諭され、イタリアは ミラノ→ヴェネツィア→フィレンツェ→ローマ という順番で巡ることになった。

 

デザートで食べた本場のティラミスも、日本よりクリームチーズが濃厚でコーヒーのほろ苦さが効いていて、大人の味で最高だった。
その美味しさに浸っていると…混んでる店内でもひと際目立つ存在感で、マリオさんが「チャオ~♪」とやってきた(;^ω^)。
ひえー。


みんなが個性的なファッションをしているこのミラノの街中でも、やっぱりマリオさんは断トツで浮いている(笑)。
それはきっと、ファッション業界では…唯一無二でよいことなのかな。
あ、マリオさんファッション業界じゃないや。
でもホテルのオーナーは副業で、実は裏の顔がありそう!

この後、コーヒー飲まない?美味しいコーヒー店知ってるよ♡
もちろん君たちが望むならワインでも…なんでもご馳走するよ♡
と相変わらずすごい笑顔で陽気にお誘いしてくれる。

きっと、マリオさんはチャラチャラしてるけど良い人だと思うし、こんな時男だったら「行っきましょう~♪」と意気投合して街に繰り出して、現地の人たちとワイワイ楽しく酒盛りして…とか良い旅の思い出になるんだろうな。
でもやっぱり女の子の私たちは危険を先回りして防御することを考えてしまって、この旅でもインドでのあの恐怖が忘れられず羽目をはずすということがなかなかできなかった。

男性だから危険と思うならば、例えば女性だったらついていってもいいのか。
アジアではおばちゃんが気さくにうちにおいで~と声をかけてくれたり、現地の人たちと外に出れば会話があったけれど
ヨーロッパに入ってから見知らぬ女性や女の子が私たちに「一緒に飲みましょう~♪うちにおいで~!」と声をかけてくれるなんてこともなく、私たちの方から声をかけたほうがいいのか…逆に何目的の旅人なんだろうと怪しまれないか!?
などなど、いろんなことが頭を周ってしまって。


マリオさんはなかなか引き下がらなくて、コーヒー一杯くらいお付きあいした方が良いのかな~と思いつつ、最終的に丁重ににお断りをした。
お断りしても、帰る先は同じなのでちょっと気まずいなぁ…と思っていたけれど、全然気を悪くしたかんじもなく、チーズが買いたい私たちをスーパーまで案内してくれたり、帰り道も自分のことをずっとペラペラしゃべってくれて、なんというかこの底抜けの陽気さはいいなあと思った。

何度もいいですと言っても、お部屋までもエスコートするよと言ってくれて、重くもないスーパーの袋を全部持ってくれて
自分で持ちます!と言っても「女の子は荷物なんて持っちゃだめだよ。それは男の仕事だから。」とウィンクをされる…ひぃー。


ありがたいけれど、そういう扱いに慣れてないこちらとしては、漫画の世界(ルナティック雑技団の愛咲ルイくん的な…(笑))の人物を見ているよう(;^_^A。
私たちなんて、いつも30キロの荷物背負って移動してるのに…マリオさんからしたらアマゾネスみたいなかんじかしら。


「何か必要なものがあったら言ってね、君たちのパーティーの盛り上げ役とか。。。」
と、最後まで気を使って?くれるマリオさんだったけど
ここで曖昧にしていると部屋にも侵入されそうだったので、今だ!と思い
「アリーヴェデルチ!(さよならだ!)」
を使う。
するとマリオさんは大爆笑しながら、それはすごいブラックジョークだね~!!とお腹を抱えながら去っていった。
去り際も陽気なマリオさん。。。でもとりあえず、撃退できてよかった。
ブチャラティと荒木先生に感謝。

ちよみんとチーズパーティーをしながら、
なんだかやたらと親切にしてくださるけど、これがイタリア男子の通常運転なのかも…
だからうちらは堂々として、断って悪いとか思わなくてもいいよね!
という結論に達する。


イタリアでは、女の子が生まれたら父親は娘を蝶よ花よと誉めながら育てるから、その後お付き合いする男性はそれ以上に女性のことを大絶賛しなければならないんだよ、とマリオさんが語っていた。
優しい男性は魅力的だけど、ある意味今日出会ったばかりの私たちにもこれだけ労力を注げるって…むしろ優しさっていうより習性なのかも。

とにもかくにも、明日にはあの素敵なヴェネツィアに行ける!
マリオさんとの出会いも、ミラノの良き思い出として先に進んでいこうと思うけれど、これから行くイタリアの街もみんなマリオさんみたいな人ばっかりだったら。。。
ひぃぃーどうしよう((+_+))