四月十二日

 

今日は総じて、波乱万丈な日だった。
憧れのプラハ…
良くも悪くも忘れられない思い出の一日となった。

朝はちゃんと予定通り5時に起きて、ウィーンから乗らなければならない6時の電車に乗れて、朝食をあらかじめ買って景色を見ながら優雅に移動…となかなかの出だしだった。



 

 

そしてプラハに到着…まずはその寒さにびっくり!
パリも寒かったけど、上着を持ってくればよかった…と後悔するくらいの寒さだ。

駅構内におもむろにカジノのようなコーナーがあり え!とびっくりする(;^_^A。
世界で一番美しい街、と有名なこの街が、スロットで始まるなんて。


しかもそのスロットをじぃっと見入るカウボーイハットのおじさまが、またなんともいえない味と言うか、哀愁を漂わせている。。。
波乱のプラハトリップの始まりである。





とりあえず温まろうと、マックに入る。
そこでまずひとつめのアンラッキー。。。(T_T)
プラハを歩くにあたって何も手掛かりがなかったため、駅でガイドマップを購入したのだけど、マックでほんの一瞬温かい飲み物を飲んで一息ついている隙に机の上のマップを掏られてしまったのだ。


それはもう、事後に ええっ!あの時のあの人かな!?と驚くぐらい、早業でプロ級のスリだった…。
だってわたしたち二人とも、席に座っていたのに。
確かに少しぶつかり気味に足早に去っていった人いたけど…
ああ、気が付かなかった。
しかも憧れのプラハの記念にと、綺麗な写真とかたくさん載ってる一番いいガイドマップを奮発して買ったのに…(泣)。


恨み節を言いたくもなるが、ここは日本ではない。
外国では自己責任、ぼーっと掏られてしまう方が悪い。
スリと置き引きに注意って、どのガイドブックにも書いてある。
逆に、注意力散漫な私たちが今まで盗まれなかったのは奇跡かもしれない…ガイドブック程度で済んでよかったと思うことにしよう。

自分たちの危機管理能力の甘さを反省しつつ、限られた一日の予算の中でもう一度マップを買う気になれずで、とりあえず頭に少し入った全体図を頼りに地下鉄でプラハ城に向かうことにした。





そこで、ふたつめのアンラッキーが起こる。。。
切符売り場を探してウロウロしているうちに、どうやら私たちはホームまで来てしまったらしい。
あれ…改札は??
階段を下りたら、すぐ地下鉄のホームに着いてしまい狐につままれた気持ちで、キョロキョロする。
もしかして、事後払い…??


そんなことを考えていると駅員さんらしきひとがいたので
「プラハ城まで行きたいのですが、切符はどこで買えますか?」
と聞くと
「なんだ!!切符を持っていないのか…!!」
とものすごい剣幕で怒鳴りつけられる。
「いや、だから切符売り場の場所を聞こうと…」
と説明しようとするも、有無を言わせず腕を掴まれ…
この旅初めての、連行である(泣)。

 

この方々は、駅員さんじゃなくポリスなのだろうか。。。
立場がよく分からないけれど、ものすごい腕力で引きずられるように駅員室に連れて行かれる私たち。
プラハにはニセ警官がいてお金を要求されるから注意、という記事を思い出して、
わたしはあまりの急展開と強引さにまさかホンモノの警察だとは思えず
「あの…あなた方は本物の警察ですか??」と拙い英語で怪訝そうに聞いてしまい、彼らをますます怒らせてしまった(汗)。
ああ、馬鹿なわたし。。。
(これも日本基準でおまわりさんは優しいもの、と考えていた…ああ、お財布を落とした時も、痴漢にあった時も、優しく笑顔で親身に対応してくれた蒲田の交番のおまわりさんが懐かしい(T_T))

駅の一室についてからは、ものすごい形相で私たちを睨みつけているマッチョなポリスマン…こ、怖い。
「パスポートを出せ!!」と言われても、私たちはまだ狐につままれたような顔をしていたと思う。
その時には、悪いことをしてしまったという自覚もなく、ホームまで何故か降りられてしまったけど、もちろんこちらは憧れのプラハまで来て無賃乗車する気なんてさらさらなく、券売機の場所も聞いたのに、、、何故この人たちはこんなに怒ってるんだろう??くらいの気持ちだった。

けれど、パスポートを出した時も取り調べのような勢いで手からひったくられ、「罰金だ!!」と言われたときに、こういう結末なのか!と現実を知った。


私たちは、「まだ電車に乗ってないから、無賃乗車していない!」「旅行者がわからずホームに入れちゃうシステムがおかしい!」と抗議をしたけれど、ミルコ・クロコップ(KI選手)のような冷酷な容姿の大男ふたりに睨まれ…自分たちで言うのもなんだけど、鬼に睨まれた子ウサギたち。
「ホームには入った!不法侵入だ!!」の一点張りで罰金を払わないと、ここから出さないという。
一日の旅費しか持ってきてないから、罰金払ったら観光できない、切符代を払うから許してください、とお願いしてもダメだった。


最後は相手も更にエキサイトしてチェコスロバキアの言語で怒り狂って机をドンドン叩き出す始末…。
なんだか自分たちが取り調べを受けているようで、夕方にはウィーンに帰らねばならないのにここに閉じ込められていることが悲しくなってきた。


憧れのプラハでの時間が、この重い空気が充満するお仕置き部屋のような場所でただただ流れていくのが耐えられなくて、押し問答の末結局1400コルナを罰金として支払わされた。
日本円としては5000円くらい…
駅のホームに降りちゃっただけで、5000円!!
私たちの貴重な活動費がぁぁぁ…(T_T)
これが、正当な罰金なのか、そうでないのかは知りようもない。

捨てるように私たちのパスポートを投げ渡す彼らに対して、なんて旅行者に優しくない国なんだ!!と嫌な気持ちにはなったけれど
…これも、日本のように、優しく許されることを期待するほうが駄目なんだ、と思うしかない。

解放された時にはふたりともげっそり、疲れ果てていて
正直観光どころではなかったけれど…
これで帰って、プラハの思い出があのにっくきミルコたちだけになってしまうのは悔しかったので、フラフラとおぼつかない足取りで街へ繰り出したのだった…。

上の階に戻ると、普通に改札も切符売り場もあった。
ああ…何故わたしたちは、ホームに行けちゃったんだろう。。。
もう、なんだったんだ。
本当に、狐につままれたような時間だった((+_+))。








それでも…地上に出ると、そこには美しい街が待ち受けていた。

街全体が世界遺産に登録されているというプラハ、
それは、本当にどこを見ても「黄金のプラハ」の世界だった。


 

 

 

 

あの連行事件の後に見るプラハは、本当に美しくて、私たちの心を癒してくれた。

ただの小道でさえ、歩くと自分が映画のヒロインになったような気持ちにさせてくれた。


 

 

 

坂を上がっていくと、プラハの街が見渡せる。
本当に、ヨーロッパに来てから毎日その街並みの美しさに感動しているけれど
このプラハの街は、別格だ。
東ヨーロッパと西ヨーロッパ、様々な建築様式が不思議に混ざり合い、独特の世界観を創り出している。


いつまでも、眺めていたい…そんな美しい景色。
 

 


 

ガイドマップがないため、当てずっぽうにふらふらと街を歩いていた私たち。
良い雰囲気の雑貨屋さんに入り、ガラスの素敵な香水の小瓶を発見!

すっごく素敵だけど…欲しいけれど…今日は罰金のせいで何にも買えないな…と我慢してあきらめていたら、なんと私が見ていない間にちよみんが購入してくれていて、お店を出てからプレゼントをしてくれた!
「憧れのプラハの思い出になるように♪」と。

な、なんて良い友人なんだ…。
わたしはこの心の優しい子と、世界一周ができていることに心から感謝すべきだと思った。
ちよみんも、欲しいものたくさんあっただろうに…。
プラハに来るのを楽しみにしてたまえちゃんが、元気になるように、って。

その、いつも自分より友達を優先する彼女のいじらしさに泣けてきた。

それまでつけていたネックレスの先端を付け替えて、ガラスの小瓶のアクセサリーにして身に着けることにした。
世界にひとつだけの、プラハの思い出のアクセサリー。
ちよみんのおかげで、先程の罰金の悲しさもなくなり、胸にほっこり温かさが染みた。
ともだちって、ありがたい。ともだちって、素晴らしい。

中には、どんな香りを入れようかな。

 

 

 

 

 

小瓶の御礼に、スィーツタイム♡
ふたりで素敵なアンティークな喫茶店に入ることに。
看板も可愛い…!



 

中に入ると、味のあるおじいさんマスターが笑顔で迎えてくれて、
紅茶は種類を選び放題、お店で毎日作っているというケーキやクレープも最高に味しくて…
素敵なカフェに巡り合えてよかった。
プラハの街並みを眺めながら、ゆったりと流れる時を感じる贅沢な時間を過ごす。

 

 

 

 

 

 

夕方までプラハを満喫し、ウィーンへ戻る。
プラハ…数々の芸術家たちが愛した「世界で一番美しい街」。

その思い出が、ミルコ似のポリスに連行…って、全然笑えないけれど
あのまま帰らないで、ちゃんとその美しさも感じることができて、本当によかった。
そのおかげで、ちよみんのサプライズプレゼントももらっちゃって、最高の記念になったことだし。

逆に、私たちは今までなんて優しい人たちや穏やかな日本社会の中で恵まれて育ってきたんだろうね…と、ふたりで真面目な話を帰り道にする。

後から調べて知ったことだけど、チェコは言語や宗教弾圧や文化弾圧などを受け、自身の文化を失い「暗黒の時代」といわれる時代が2世紀以上あったという。
そして社会主義国の首都となり…プラハの春という改革運動…私たちからは、想像もつかない世界だ。
そういう社会情勢や国の背景も日本とは全く違う異国の中で、やはり自分の身は自分で守らなければならないし、相手に付け入る隙を与えてはいけないのだということを、改めて今日は学んだ気持ちだった。

一日一日が学びである。
良いことも、悪いことも。
そう考えれば、今日経験したこともまんざらマイナスばかりではなく、今後の人生においてプラスになる…かもしれない(^^)。

そんなことを考えながら眠りにつく、二十一日目の夜。