ずっと起きていられたのか、少し眠ってしまったのか
地球にいるのか、宇宙にいるのか。

現実と空想の世界の狭間にずっといるような時間が続いて自分でもその境界線が分からなかった。

 

目を開けていると、パノラマの星空があって
眼を閉じても瞼の裏に星の光の残像が残っていて
そんな中…空がだんだん明るくなっていくのを感じて、ドキドキしながらその変化を見ていた。

そうだ、地平線に上る朝日をこのまま見よう!

 

せっかくだからビデオカメラも水タンクの上にセットして、準備万端で朝日を迎えることに。

 

長かった砂漠の夜が明けてゆく。
真っ暗だった空から星が消えていき、闇が少しずつ流れていく。

 

 

と、思ったら瞬く間に朝焼け空に。
雲に反射する淡い朱色がとても綺麗。

 

一秒ごとに変化する空模様。
壮大なキャンパスに描かれた色彩画のよう。

 

 

光が溢れ出る方に集中する。
微かに、でも力強く昇りゆく朝日の光。

 

 

朝日が現れると、空はもう完全に朝の表情となった。

さっきまでの、星空が嘘のよう…。

 

地平線が、植物が、生物が、照らされてゆく。

 

 

こんな風に地平線から昇る朝日を見るのは初めてで。
朝日って、その存在自体が希望そのものだと思った。
偉大で、神々しくて…温かい。
穢れない朝の光をいっぱいに浴びて抱きしめる。

 

みんなは寝てるのかな。起きているのかな。
それぞれ少し離れた場所にマットが引いてあり横になっているから顔までは見えない。
でももしも寝ているとしたら、このありがたいご来光を見ないのはもったいないかもしれない…と思い
「皆さーん、朝日が…」と少しはった声でアナウンスしたら「あ、起きてますー」とお兄さんから冷静に返答があった。
ちよみんも起きているようで、安心した。

みんなで、昨日と同じく言葉はなくともこの壮大な大自然のショーを、感動を、同じように共有した。
一通り朝日が昇り切ったところで、わたしたちは砂漠を後にすることに。


本当にこのバフレイヤ砂漠に来てよかった。
わたしがずっと求めていたのは、まさにこうした日本では見られないもの、できない経験だったから
この旅で出会いたかった光に、ひとつ出会えた気がした。

何もないこの地だからこそ、自然そのものの魅力と自分の内側を感じることができ、たくさんの学びがあった。
誰かと出会うことも旅の醍醐味であり、自分自身と向き合うこともまた然り、である。

 

帰り道は、みんな寝不足も体力疲労もあり車で爆睡していた。
そう思うと、帰り道なのにあんなに元気だったハイヒールモモコさん大好きおばちゃまは本当にすごい。。。
関西が誇るアクティブトラベラーだ。
そして驚くことに、行く途中お昼を食べたあの集落でハムディーさんはまたランチ後に別のツアーのアテンドにそのまま砂漠に繰り出すという。

昨夜だって明け方近くまで私たちと踊ったり語ったりしてくれていたのに。

わたしたちは車中眠れたけど、ハムディーさん休みなしで運転だったのに…(;´Д`)
ホンモノの砂漠の民だ。。。
なんだかもう、みんなすごすぎる。無尽蔵のタフネスだ…。

 

お昼は行きと同じ場所で同じようなお料理だったけど、どれも美味しかったからこの味がとても嬉しかった。

お肉を塩ゆでしたもの、ポテトをスライスして揚げたもの、小麦で焼いたナン、どれもシンプルで素朴な味なのにどうしてこんなに美味しいんだろう??

 

 


名前も味も大好きな、サラダホダラーッ。

相変わらずさっぱりシャキシャキしていて本当に美味しい。
そして、「ッ」が入ることで、何か言うだけで元気になる気がする(#^.^#)。

 

 

砂漠から5時間ほどでカイロの街へ入った時は、なんだか自分が本当にナメック星から地球へ生還したかのような気持ちだった。
あれ、さっきまでいたあの世界は…同じ時間軸だよね??って狐につままれたような気分というか。

 

ペンションさくらに帰る。

ドアを開けると大きなエザットさんが「疲れたでしょう~ッ」と、満面の笑みで迎えてくれた。
エジプトのパパ(泣)!!
ただいまー!!とわたしもちよみんも子どものようにエザットさんに駆け寄った。


数日しかいないのに、不思議と実家に帰って来たような安心感に包まれる。
この宿のアットホーム感は本当にすごい。

エザットさんの人柄によるものが大きいけれど、ハウスマザーのマダムの存在や宿の住民の皆さん、みんながこの家庭的な雰囲気を共につくっている気がする。

 

そうして浴びた、二日ぶりの水シャワーは…本当に本当に気持ちよかった!!
さっきまでいた水のない世界。シャワーから水が出続けることが恐れ多く感じて、バケツに水を貯めて水を浴びた。
こうした蛇口を捻れば水が出る普通の生活と離れてみると、いかにトイレやお風呂に綺麗な水があることがありがたいかが分かる。
こうして感動しても、きっと毎日の中でまた慣れてしまうだろうけど…砂漠で必要最低限のお水を使う習慣は、地球のためにも自分のためにも良いことだと思うので、できる限り続けようと思う。

驚いたのは、ジーンズも靴下も一度も脱がなかったのに、ズボンの中にも靴の中にもたくさん砂がじゃりじゃり入っていたことだ。あと頭の中も…・
まるで海水浴のあとみたいでも洗っても洗っても砂の排出が終わらない(笑)。
確かにあの砂の世界では空気中に砂も散乱していただろうから、よく精密機械のカメラたちも無事だったなあと後からひやりとする。

洗濯したり、日記を書いたり、動画の更新をしたり、我が家のようにごろごろしたり、快適な時間を過ごす。

日記を読み返すと、この十日間でたくさんの建造物や世界遺産も見て感動してきたけれど、ありのままの地球そのものがどれだけすごいかを思い知らされた砂漠の旅だった。

 

夕方には、ちよみんとエジプト最後のお買い物へ。
フルーツや今後必要そうな日用品、あとはエザットさんたちへの御礼にケーキを買って帰ることに。
喜んでくれるといいなあ。
そしてやみつきになったコシャリも悔いのないように最後の食べ収めをする。

夜はみんなで笑って話して、ケーキを食べて、笑って話して、また話が尽きなくて…。
ペンションさくらでの楽しい時間はあっという間にすぎてしまって気が付けばもう出発の午前四時に。
エザットさんを中心に過ごしたエジプトは、本当に本当に楽しかった。
腕相撲、ボクシング、ネットゲーム、合唱…リビングで過ごす時間がとにかく楽しくて、笑いに溢れていて、自分たちの部屋に戻りたくなかったくらい。

 

憧れのヨーロッパにも行かなくてもいいと思ってしまうほど、まだまだこのエジプトにいたかった。

この宿を拠点に行ってみたい場所がたくさんあったし、何よりもエザットさんたちともっと時間を過ごしたかった。
好奇心のまま、いろんなところへ思いっきり行けたのも、この安心できる宿があったから。

 

誰も私たちの日本での生活を知らない、そういえばこの五日間、仕事や職業の質問すらされたことがなかった。
それは、自分たちのことをよく知らない人たちの中に、ただ等身大の27歳の自分自身でいるという、不自由の中にある自由のようなもので、それがとても心地よかった。
良くしてくれた、エザットさん、マダム、宿の皆さん、本当にありがとう。ありがとう。

別れ難くて、なんどもバイバイとGOD LUCK!を言って、車に乗り込んでから空港までの道すがら、わたしもちよみんも別れが辛くて泣いた。
インドでさんざんな目に遭っても涙は出なかったのに、この旅で初めてふたりで号泣した。
日本が好きで、いつか日本へ行きたいと…その時は、是非今回の御恩返しをしたい。

空港についても涙が止まらなくて困ったけど、時間がなかったから泣きながら私たちはまた重い荷物を背負って
「いつかまた絶対ここに泊まりに来ようね」
と誓い、ヨーロッパへ向かう飛行機に乗り込んだ。

 

 

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ペンションさくらは本当に素晴らしい宿でした。

あの時、旅をしながら特に個人的な連絡先などは交換せずで、今のようにSNSも盛んではなかったので
旅の一期一会のひとつひとつが重く大切なものでした。
 

時折お元気にしているか、テロの時も心配になり、ネット上で確認したりしていたけれど
今日久しぶりに調べてみたら、相変わらず大きく優しそうな笑顔のエザットさんの姿が!
宿泊料金はこの当時より少し値上げになっていたけれど(昔が安すぎただけで全然よいと思います(笑)!)皆さんのコメントがエザットさんへの愛で溢れていてほっこりしました(#^.^#)。

 

今は旅行自体が難しい世の中になり、宿は大丈夫なのか、ちょっと心配ですが、状況が落ち着いたら本当に本当に会いにまた行きたいです!!
 

…この旅行記を始めてから、もう一度行きたい場所が出てきすぎて困っております。。。

 

 


https://www.booking.com/hotel/eg/pensiyon-sakura.ja.html