深夜、宿からデリー国際空港へ。 

 

この五日間色んなことがあったなあ。 

夜のデリーの街の景色は来た時と同じだけれど、あの日の不安はすっかり消え去りむしろ愛おしさを感じるくらいだった。

 

 川に入ったせいか、足にはびっしり湿疹が出来ていてむず痒い… あの子供たちは、頭までザブザブあの水に浸っていたのに。

 自分の皮膚がいかに軟弱か、免疫のないことか。

そしてそれは、皮膚だけではなかった。

 

 夜ご飯を食べてから、お腹の調子がおかしい… 

少し緩いくらいなら今までもあっだけど、ぐぐぅーっと押されるような痛みがある。 

もうチェックアウトなので、気のせい、気のせい、と思うようにして車に乗り込むけれど、空港に着く頃には痛みは気のせいと思えないくらいの激痛に変わっていた。

 

 お腹だけじゃなく、気分も悪い。 口の中に唾液が溢れて胸がムカムカする。 

とりあえず、ちよみんに荷物を見ていてもらってトイレへ駆け込む…こういう時、本当に2人でよかったと思う。 

トイレへ駆け込むのにも、1人だったらこの鬼のような荷物を全部背負って持っていかなければならない。
想像しただけで恐ろしい。。。

 自分が弱っている時はそうした人の優しさが本当に身に染みる。
 荷物になるからいらない、と言ったけど母がどうしてもと言って持たせてくれた日本の薬たちが今はなんてありがたいんだろう、と思う。
 上からも下からも身体の水分が出ていって、わたしの身体は空っぽになってしまったような感覚に襲われた。
顔の下半分がブルブル震えて、暑いのに歯がガチガチしている。体力を消耗したせいか、手の握力も弱り荷物を持つこともできない。
じっとしているのが精一杯というかんじ。
こんなんで飛行機に乗れるんだろうか… 不安がよぎるけど、どうなったとしてもちよみんが側にいてくれると思うと心強かった。
気持ち悪かったけど、なんとか食べられそうなものを無理矢理胃に押し込んで、薬を飲んだ。

 

 精神的にも、薬を飲んだから良くなるはず、と思えて少し気持ちも落ち着く。 

きっと慣れない水と環境で、食あたりか何かだろうと思い無事搭乗手続きを完了。

 いつトイレへの衝動がくるかわからないので、身体に負荷がかからないように、通常の3倍くらいゆっくり歩く私。
周りのひとは??というかんじで怪訝な顔をされるが、周囲の視線を気にする余裕もなくスローモーション異動でなんとか搭乗口へ。

搭乗口では「顔色が悪い」と呼び止められたので、体調不良を原因に搭乗拒否されるのではとひやりとしたけれど、正直に訳を話すと「インドではみんなお腹をくだすもの。飛行中にどうしても気分が悪くなったら気軽にスタッフに声をかけてくださいね。」と笑顔で対応してくれて…なんて懐が広いんだ!と感動してしまった。


さすが天下のロイヤルヨルダン航空。
出発前にお世話になったHISのスタッフさんからも「この航空会社に乗れるのはちょっと自慢できますよ~世界屈指のハイクラス航空会社ですから!」と聞いていたけれど、本当にどの添乗員さんも気品があり、物腰柔らかな対応をしてくれる。
ヨルダンまでは7~8時間のけっこう長いフライトだけど、座席もエコノミーでもふかふかで、これなら快適に過ごせそうと思ったら少し体調不良の不安も緩和される。

と、思ったら。今度は隣のちよみんが気分悪そう。。。
まさに血の気のない顔で顔面蒼白。少しも同じ態勢でいられない様子がついさっきまでの私みたい。
友人が辛そうにしている姿はこちらも辛いものだけど、いつも元気で美しいちよみんだから余計に不憫で見ていられない。
ふたりでトイレを行ったり来たりしながら、なんとかヨルダンまで持ちこたえよう、と励まし合う。

そんな中機内で、やたらと憂いを帯びた顔で「ティ。。。」と言いながら紅茶を配る係の男性がいて、その紅茶がほんっとうに上品な香りで美味しくて、私たちの心を癒してくれる。
私たちは勝手に彼をアントニオと命名して、定期的にアントニオのティーを飲むことで失くした水分を摂取し、良い香りで気分を紛らわせてなんとかヨルダンに到着することができた。

 

 

 

無事アンマン空港に到着。
周りには何も見えない。
あと混沌としたアジアの街から、大陸を移動して来たんだなあ…となんだか感動。

トランジットが10時間もあるので、この二人ともがダウンしている中どうしたものか…と考えていたら、なんと乗り継ぎで時間がある人は皆、ロイヤルヨルダン航空の系列のハイクラスホテルに無料で滞在させてくれるというアナウンスが。

えー!!10時間も!無料で!!しかもハイクラスホテル!?
これがHISのスタッフさんが言っていたハイクラスく航空という事か。。。
まさに、「ロイヤル」な「ヨルダン」体験!

そして空港からシャトルバスに乗り、案内されたホテルは今までのどこよりも一番大きくてゴージャスなホテル(笑)。




 

ホテルに入ると執事のようないでたちのスタッフさんが丁寧に案内をしてくれる。
部屋は暑くないか、寒くないか、必要なものがあれば言ってください…そしてすっと消えてそっとしておいてくれるのだ。
インドで色々請求されたり、そっとしておいてもらえなかったこともあり、この上質なサービスが無料なんて…とただただ、感動だった。

清潔でふかふかのベッドで少し横になると、お腹が空いてきた。
思えば朝から食べたものは全部もどしてしまい、紅茶しか摂取していなかった。
胃が空の状態で、まだ気分は良くないけれど薬も飲まなければだし、何か食べに行こう、と下のレストランに行ってみる。

とりあえず軽いものを…とサラダとスープを頼んだ私たちに、ホテルの方々はサービス精神旺盛なのか、にこにこしながらパスタやパンやお肉までサービスしてくださる。
体調が悪いから、いらないです、食べられないのです、と言っても
食べたら元気になるよ、大丈夫!!と、どんどこお食事を持ってこられてしまう。ひぃぃー。

よく見ると、レストランには私たちしかいない。
機内食もとても豪華で美味しそうだったのだが、私たちはその時最高潮に体調が悪かったので手を付けられなかったのだ。
ああ、ロイヤルヨルダン航空の機内食…今後人生で食す機会はあるのかな(泣)。

なので多分、他の乗客の方々はお腹いっぱいでお部屋で休まれているのだろう。

ホテルの方々は、久々のお客様を全力でおもてなししたいというかんじで、最後には私たち2人のためにスペシャルデザートまで用意してくださった。
体調が良いときならどんなに嬉しかったか…。
できれば全部たいらげたかったけれど、空っぽの弱った胃にそんなご馳走のフルコースが入るはずもなく、できるだけは頑張って、残してしまいすみません、でもとても美味しかったです!と伝えご馳走様をした。
レストランからお部屋まではもうお腹がいっぱい過ぎて自分がお相撲さんになった気分。
食後はもう無理。。。と苦しすぎて、ふたりでふぅー、ふぅーと言いながら、エレベータまでも歩けない。
またまたスローモーションで10mくらい進んでは止まりながら、時間をかけてお部屋へ戻る。

 

ベッドの上に横になってからもずっと苦しくて、食べ過ぎて苦しんでいる私を同じく苦しみながらちよみんが撮ってくれた(笑)。
こんな時も、カメラマン魂。。。

 


結局10時間の間、ホテルの部屋で消化をするために、ゴロゴロ休んでいただけだったけど、そのおかげで体力回復ができた。
ここでゆっくりできて、本当によかった。
苦しかったけど、ロイヤルヨルダンのホテルのスタッフさんたちのおもてなしは私たちの心に温かく残った。
素敵なアンマンの思い出。

その後は、国内線かってくらい短いフライト時間でエジプトのカイロへ。
地球の歩き方に、「エジプトのビザは裏をペロリと舐めてパスポートに貼る」と書いてあって、一生懸命ペロペロ舐めていたら、空港の職員さんに冷ややかな目でシールを剥がされ貼られた。。。
エジプトのビザはノリじゃなくシールになっていたらしい。
ひぃー恥ずかしや。

そして、このエジプトではペンションさくらという宿に泊まることに。
ネットの口コミでとても高評価で、親日のエジプト人オーナーさんが名物でとても面白いらしい。
とりあえず一晩泊まってみてその後どうするか様子をみることにしていた。
その宿に着いたら…あまりのアットホームな雰囲気に、一気に疲れや体調不良が吹っ飛び涙が出そうなくらい安心した。
その宿にはアラビア語を学んでいる日本人の学生や、旅行中の若者もいて、オーナーのエザットさんは口コミ通り明るくて笑顔の優しいみんなのお父さんのような人だった。
 

深夜の到着にも関わらず、エジプト風紅茶でおもてなししてくれて、日本語もお上手で「最高のエジプトの旅にしよう!」と私たちの旅プランも一緒に考えてくれる。
無事動画の更新もできて、今日の体調不良はなんだったんだろうというくらい気分もよくなり、深夜3時だけど幸せな眠りにつく、

 

そんな、九日目の夜。

 

 

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あの時の体調の悪さは、今でも覚えています。
本当に穴という穴から水分が出ていってしまい(お食事中の方、ごめんなさい。。。)何か口に入れると気持ち悪いけれど、脱水症状にならないようにと苦しみながら水分を摂り続けたのでした。
何か特別変なものを食べたわけではなくても、水や空気や香辛料でほとんどの日本人は南アジアではお腹をくだしてしまうそうです。


そして、バングラデシュに住み始めた時も、始めのうちは嘔吐と下痢の繰り返しで、いつもちびまる子ちゃんの藤木くんのように顔に縦線が入っているような状態でした。
お医者さんの「三か月経ったら細胞に新しく耐性ができて、身体が環境に慣れるから三か月の辛抱」という言葉を信じて耐えたら、本当にピタッと三か月で止まり、八年間いる今は現地の外のローカルフードを食べても滅多にお腹を壊すことはなくなりました。


ちなみにバングラ歴15年以上の夫は体育会系の人で、私よりずっと基礎体力があるためいつも元気なひとですが、そんな夫も来たばかりの当初は百日下痢という恐ろしい病にかかっていつもお腹を下していたそうです。
百日も三か月くらいだし、こうして人間は少しずつ環境に合わせて免疫が作られていくのだなあと、ここに住んでいて実感しています。

それにしても…夢のようなロイヤルヨルダンのホテル。
スープやサラダのプレートも、舞踏会に出てきそうな素敵なデザインで、あの高級フレンチのフルコースのようなお食事…本当に元気な時に食べたかったです。。。(笑)