三月二十九日


アーユルヴェーダ効果か、昨夜はインドに着いてから初めて安眠出来て目覚めもすっきりの朝だった。
そして昨日購入した、初めてのサリーに心躍る。


朝食を食べながら、宿のスタッフたちとお話していると、インド風に言うとまえはマヤ、ちよみはチョメリと呼ぶのが呼びやすいらしい。
まえ→マヤはなんとなく分かるけれど、チョメリ!
なんだかアメリみたいで可愛い♡


ちなみにマヤは「慈しみ」という意味があるそう。

これからインドでは、マヤとチョメリと名乗ろう!と思う。
朝食後、サリーを着てみる。女性スタッフがいないので、着方の本を見ながら見様見真似で。。。
 

一枚の布を、身体に巻き付け折りたたみながら最終的な形にする。
改めて、サリーって素敵な民族衣装だなあと思う。
欧米のように露出して主張する女性らしさではなく、露出を控えながらさりげなく身体のラインに沿って女性らしさを演出する。
品のある和服の美しさと通ずつものがある。


わたしはゴールドの模様が気に入り黒のサリーを購入。

 

そしてちよみんはアジアンビューティーが生える赤いサリー。
(どうしても皆さんにちよみんの素敵な赤いサリー姿をご紹介したいので、遠目のショットを使用させていただきますm(__)m))

 

 

こんな風に、サリーを頭にかぶると「既婚者」という意味らしい。
こうしておけば、変な人たちに声をかけられずにすむかも…と既婚者スタイルを取り入れることに。

 

 

 

サリーを着ていると、インドの方々の反応がまるで違う。
とにかく喜んでくれるし、そこはかとなく以前よりも女性としてちゃんと尊重していただける気がする。
以前は「外国人の女?ハイハイ、チェックインこっちよ~」みたいな態度だった人が
「どうぞ、こちらにいらしてください!」というようにフォーマルな扱いをしてくれるようになるというか…。


自国の伝統衣装を外国人が着ている、というのは日本に置き換えてみても
例えば外国の方が、着物や浴衣を着て日本文化に馴染もうとしてくれていたらやはり嬉しいし、親切にしてあげねばと思うと思う。
異文化に馴染む努力をしたり、こうした見た目から入るスタイルも、なかなか海外では効果があり重要なのだな、と感じた。

 

今日は、タージマハルがあるアーグラーへひたすら移動する日。
相変わらず、インドの道はドラマがいっぱいで、移動だけでも見目楽しい時間。

 

 

 

自転車に乗る少年。
こんな、何気ない風景も、インドではなんだか絵葉書のよう。

 

 

ラクダの通せんぼ。
カポカポ歩く姿は、なんだかお澄まししている貴婦人みたいで優雅さを纏っている。
待たされても、全然頭にこない。

 

 

車体の何倍もあるズタ袋を背負いながら走る姿は、手伝ってあげたくなるくらい。。。
一体何をそんなに運んでいるの。

 

 

インドの女性の頭は力持ち!
こうして頭に重そうな荷物を乗せて運ぶ姿を毎日見かける。
インディアンスタイルなのか、たまに同じような男性の姿も。

 

 

お腹に何かを抱えながら道を横断する少女。
はじめは赤ちゃん!?と思いびっくりしたけど、はにかみながら食べ物だよ~と教えてくれた。
びっくりした!それにしても斬新なスタイル。。。

 

 

途中の休憩所のお茶屋さんで、猿使いとお猿さんにも遭遇。
チップを渡すと、芸をしてくれるらしい。
ちょっとお猿さんが狂暴で近寄るとなんにでも噛みつきたがっていて怖かったので芸は遠慮する。

 

 

 

インドの線路!
線路にはいつでも夢がある。
新しい世界に繋がっている気がするから。
この線路はどこに繋がっているのだろう。

 

そんな車窓からの景色を楽しんでいる最中、とても不愉快な出来事があった。
移動中、運転手のマヒンさんが運転中にこともあろうか片手でハンドルを握りながらもう片手を後部座席に伸ばしてきて、「マッサージしてあげるよ」と言って足を触ろうとしてきたのだ。


明らかに下心を感じるし、運転している身体は半身になった態勢で危ないしで、もうしっかり前を見て運転して!!と怒りながらNo Thank you!と不快感を露わにして伝えると、しまったと思ったのかご機嫌をとるように話しかけてくる。


外では色々な嫌な目に遭っても、ちよみんとの移動の時間は心休まる平和な時だったのに、この人のせいで台無し!と思いながらふて寝する。
と、なんとわたしが寝た後にちよみんにも同じことをしてきたらしい。信じられない!

どうせ外国人の女性だから、と少しくらい触らせてくれると思ったのかもしれない。
女性二人の旅は危険だよ、と色々な人から言われていたけど、特にインドについてからは、夜はなんやかんや理由をつけて部屋に入ろうとする輩がいたり、変なマッサージをいらないと何度言っても勧めてきたり、通りすがりに身体を触ろうとしてきたり…
正直、そうしたハラスメントに辟易としていた。

に、加えてこの運転手の愚行。

どうしてくれよう。。。と静かに怒りの炎を燃やしながら、とりあえず宿に入り、動画の更新を片付けることに。
未更新の動画が溜まっていくと、もはや気持ち悪く感じるようになっていたけれど、インドもなかなかネットの接続状況が悪く更新は溜まってしまっていた。

しばらく動画の更新と格闘したあと、遅めの夕食へ。
赤い壁がインドっぽい、見るからにスパイシーな食堂。
インドの物価は日本よりも安くて、何百円かでご馳走が食べられる。
私たちは、本当にローカルフードでかまわないのに、マヒンさんはいつもできるだけ高いお店へ連れていこうとする。
値段を見て、びっくりして、もっと安いところにして!の繰り返し(笑)。

ちよみんの赤いサリーがお店の雰囲気と合っていて、店員さんからもなんだかネパール人みたい!というお褒めの言葉をいただき、ネパールの話で盛り上がる。
そこはひんやりと空気が綺麗で、同じヒンドゥー教だからインドとも共通点も多く、餃子や麺などが美味しいらしい。
いつか行ってみたいね、なんて話しているそばで、またマヒンさんが酔っぱらって肩を組もうとしたり、失礼なことばかり話してくる。


今日の車のこともあり、私はマヒンさんに対して不満がたまっていた。
私たちは、たしかに物腰が柔らかい旅行者かもしれない。
でもそれは、旅での出会いを良いものとして今の時間を和やかに過ごしたいからであり、決して女性軽視をされるためではない。

それに、ここで私たちがガツンと言わなければ、日本人の女性は文句を言わない、と思われ次の旅行者がも嫌な思いをするかもしれない。


そう思い私たちは彼に、あなたの言動はとても下品で私たちにとっては不愉快だということ、車の中でふたりの足を触ろうとしたことは運転手として言語道断で許せないこと、もうここで解雇してデリーまで別の車で帰っても良い、一部始終はボスに報告して然るべき処罰を下してもらおうと思っている、ということを厳しく伝えた。


私たちがそんなにも怒り心頭ということが分かっていなかったのか、マヒンさんはあたふたと驚き、それは大変失礼した、外国人の女性にはこういうフランクな態度の方が好まれると思った、もう絶対しないからボスには言わないでください、と懇願してきた。

ちよみんとふたりで困ってしまったけど、すぐに許しても効き目がなさそうなので、とりあえずマヒンさんのことはどうするか保留にした。
そんなこともあり、この日は三人ともちょっといや~な雰囲気のまま宿へ。早くちよみんと二人きりになりたかった。

宿に帰ると、従業員のラムという名前の男の子が大荷物を部屋まで運んでくれた。
日本の我が家ではラムという名前の三毛猫を飼っている。
このラム君はヘルメットカットで、日本の芸人さんにいそうなちょっぴりお茶目な外見をしていた。


男の子なのに可愛い名前だなあ、うちの猫といっしょだ!と思いちょっぴり親近感を抱きつつ、マヒンさんのこともあったから笑顔も見せずに用事が済んだらチップをあげてすぐ部屋から出てもらおうとしたところ、いきなり「あなたのサリーのインナーはぶかぶかですね、もっとタイトに着ないと、、、。」といってサリーの中に手を入れてこようとするではないか!


いろんなことが嫌になり「もう、いいかげんにしてー!!」と怒り爆発で、日本語で「出てってー!!」と叫んでしまった。
浴室にいたちよみんも驚いて、ど、どうしたの!?と駆けつけてくれて、事情を話したところ、一緒に「部屋から出てけー!ラムって名乗るなー!!」と怒ってくれた。
早くでていってほしいのに、ボスに言わないでー!と両手で耳たぶを掴みながら(後々知るのだが、これは南アジアでごめんなさいのポーズらしい(^^;))、ドアにはさまっているのに、出て行こうとしない。
そんなにボスに言いつけられたくなければ、しなきゃいいのに!と内心突っ込みながら、最後ドアに挟まっている顔を押し出した時には、二人ともぜーぜー息切れしていて、鬼退治をし終えたような体力消耗状態だった。
 

今日はさんざんな日だった。


私たちから誘惑したことなんて、一度もない。
露出した服も着ていない。
初日に注意されてから笑顔も見せていない。


それでも女性と言うだけで、なんでこんなに軽視され嫌な目に遭わなきゃいけないのか。
寝ようとしてももやもやした気持ちがあふれ出てきてなかなか眠りにつけなかった。

そんな思いを抱えながら迎えた、七日目の夜。

 

 

 

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今は定期的に着る機会があるサリーですが、人生で初めて着たのはこのインドの旅の時でした。
自分がアラビアンナイトの世界の住人になったようで、とても嬉しかったのを覚えています。

そして、インドでは残念ながら嫌な人との出会い、嫌なことが続き、旅を楽しむよりも気持ちを消耗していたのも覚えています。

この時は、もちろん言葉も話せず南アジアの文化もそれほど知らずで、あまり深くインドという国や人の内側を見ることができなかったわたしですが、バングラデシュに住み始めて8年が経ち、少し大人になった今の自分ならばもっとフラットな視線で力を抜いて、インドいう国を受け入れられるのではないかと思っています。

ごめんなさいの耳たぶを持つポーズ、このラムくんがしたときは訳が分からずただただ不気味でしたが、今は子どもたちが何か悪いことをしたときにサッと耳たぶを持つしぐさは、とっても可愛らしく感じられるようになりました(笑)