三月二十五日

昨夜はマカオの神様が降臨してくれた夜だった!
 

ホテルに併設されているカジノにどんなものだろうとふたりで恐る恐る行くと、そこはカジノというより…


ゲームセンター(笑)。

 

 

可愛いスロットが並んでいるだけで
拍子抜けすると共に、これならできそう!とちょっぴり安心♪

夜寝る前のちょっとしたお楽しみのつもりで
100HKドル(当時1HKドル12円ちょっとくらい)をコインに替え
日本ぽい芸者さんの絵柄の空いているスロット台に座ると…

 

チャリン♪チャリン♪チャリリーン♪
と派手な音がして、一発目で大当たりし、397HKドルをGET!!

隣のちよみんも、「動画の更新頑張ったご褒美だよー!」と喜んでくれて(優しい~(;_:))二人で大盛り上がりの瞬間だった。
だって397HKドルって、日本円で5000円くらいで、アジアでは5000円あれば一日分の旅費に相当するくらい。
この可愛いスロット台で、これ以上の大当たりが出る気もしなくて、せっかく大金が当たったので、この嬉しい気持ちを大事にしたくて、わたしは早々に終止符を打つことに…一回だけで(笑)。
明日はこのお金でご馳走を食べて、マカオに還元します!とマカオの神様に誓う。

そのあと結局、ちよみんの応援をしたり他のお客さんの遊ぶ様子を見たりでけっこう遅くまでいたのだけれど、大当たりしたせいかぐっすり眠れて今日は6時と早起き。
近くの公園へジャージで向かう。

香港と同じく、マカオの公園にも太極拳をやってる方がいたり、身体を動かす器具があったり、おばあちゃんたちが健康に良さそうな体操をしていたりでとても賑やか。

 

 



 


 

井戸端会議をしているおばあちゃんたちとお話をすると、カジノの話に。
昨夜大当たりをしたことを興奮して話すと、「いくらだい?」と聞かれて「397HKドル当たって!!」と答えると

「…ふーん。」という薄いリアクションが返ってくる。
東洋のラスベガスにいらっしゃる人生の大先輩方にとっては、大当たりの域には達してなかったらしい(^_^;)
失礼いたしました。。。
どうせなら、一番有名なリスボンに行って運試ししておいで!
あそこはすごいよ!
とありがたいカジノ情報を手に入れる。
マカオで一番人気のカジノだそう。
どんなところか今夜見てみることに。

 

今日も朝からたくさん運動して、お腹がぺこぺに。
こうして朝散策すると、地元の人とお話ができて情報を得られるし、一石二鳥でいいな。
ホテルタイパマカオは外観だけでなく、お部屋も朝食も最高だった。中華料理っぽいラインナップだったけど、一番おいしかったのはこのお粥。
薬味やザーサイを自分でトッピングできるスタイルで楽しみも倍増!



今日は何しよう、どこに行こう。
そんな風に自由に考えて動く日々が、毎日続くなんて。

もう三日目なのに、まだまだ実感がなくて、本当に夢なんじゃ…と毎朝寝ぼけながら思ってしまう。

日本で過ごす日々には「生活」が絶対についてくる。
朝起きてするべきことはほぼ決まっていて、何をするかもどこへ行くかも予定通り行い、働いて休む。
その繰り返し。
それは私に限らず、きっと大人になったら大多数のひとはそうして社会の中で自分の役割を遂行している。
今は、人生の束の間の休息のような…本当に幸運な時間をいただいている。
この経験が、いつか何かの役に立つのかはわからないけど、この旅を実現させてくれた方々のためにも、とりあえずは全力で楽しんで、伝えたいことを伝えて、まさに今も生活をしながら帰りを待っててくれている日本の家族のもとへ、安全に帰ろうと自分自身に誓う。

今日はマカオをとにかく歩くことにした。
そしてたくさん現地の人と話して、マカオの歴史を知ろう。

ホテルを出て、バス停を見つけ、中心部に行く番号を聞きながら乗る…
けれど、景色を見ているうちに、またいつの間にか同じところへ戻ってきてしまった(笑)。
どうやら路線バスは、地区ごとに区切られていて中心部に行くには乗り換えが必要だったらしい。


そんな普段なら無駄だと思ってしまうような時間も、旅の中では笑顔になる時間に変わる。
失敗することは恥じゃない、そこから学んでいけばよい。。。(丸大ハム風)
街はさほど大きくないので、一日で要所はまわれそう。
地図を見ながら情報を頭に入れていく。

正式名である中華人民共和国の特別行政区えあるマカオは
ポルトガル領だったこともあり東西の文化を併せ持つと言われている。
街を見ていても、西洋式の可愛らしい華やかな洋館があったかと思えば、その裏には異国情緒漂うアジアの家屋があったりして
同じ国にいるのに急に異世界に迷い込んでしまったような気持ちになる。そこがこの国の不思議な魅力かも。
 

マカオという国の名前は媽祖廟(まそびょう)」という言葉がなまってマカオになったと言われているらしい。

「媽祖」とは中国の道教の海の女神のことで、漁師の間では漁へ行く前にお祈りすると無事に帰ってこられると信じられていたそう。

アヘン戦争を機に、香港がイギリスの植民地となると、それに乗じてマカオもポルトガルの植民地に…。
その後も、第二次世界大戦中は中国から難民が押し寄せたり、密輸の貿易に巻き込まれたり、アメリカに爆撃されたり
あげくに中華民国(今の台湾)と中華人民共和国の間に挟まれ…
聞けば聞くほど他国に翻弄され続けてきたマカオの歴史。
この地に住んでいた方々は、どんな気持ちだったのだろうと思いを馳せながらも、近代になるついこの間まで20世紀なんて世界中どこもかしこも戦争ばかりの時代だったんだよなあ、と。
そんなマカオも、1999年ポルトガルから無事返還され今は観光立国として世界から注目を浴びている。

いろんなところでマカオの大きさは世田谷区の半分115.3km²と紹介されている。
そんな小さなマカオの中には、なんと世界遺産が30個もある!
その中でも特に有名な「聖ポール天主堂」へ。
ここは、徳川幕府から追放された日本人の隠れキリシタンもマカオに辿り着き、イエズス会の指揮のもとこの天主堂の建設や彫刻作業に関わったとのことで、ぜひ訪れたい場所だった。

地図を見ながら歩いていた私たち、ふと顔をあげると…町中の風景の中から突如現れる聖ポール天主堂。


 

火災により、正面以外は焼け落ちてしまったというその姿は、なんだか現実世界に紛れ込む幻のよう。
近くで見ると、その歴史を感じさせる建物の表情と、刻まれた彫刻に圧倒される。



上から、一番上の三角の部分は、天国の世界を表し、キリスト教で精霊を意味する鳩が彫られている。
その下は、少年イエスの世界。ここにはなんと、日本を象徴する菊の彫刻もあり、日本人が関わったのではと言われているそう。
三番目は聖母マリアの世界。天使とマリア像の優しい表情が彫刻から伝わる。
四番目は聖者の世界。4体の聖者像が。その中には、あの有名なフランシスコ・ザビエルさんも!
そして一番下の最後が人間の現実世界。教会への入り口…という作り。
正面のファサード部分だけでこの迫力なら、焼け落ちる前はさぞや荘厳な建物だったのだろうな。。。
火災の原因は、イエズス会への弾圧だったのではないかと言われている。

隠れキリシタンて、歴史の授業で習ったけれど
実際の歴史的建造物を前にして考えると、そうした遠い昔の出来事がすごくリアルに胸に迫ってくる。
何かにすがる思いできっとキリスト教という宗教と出会って、心の平安が得られたのも束の間徳川家康から禁教令が出され、どんな思いでこの異国のマカオに逃げてきたんだろう。


当時の船旅が危険なのはもちろん、幕府に抗い海外へ逃亡なんて、本当に四六時中命がけだったであろう。
そして逃げ延びた先でも心の拠り所を燃やされ、こうして迫害に遭い…。


幕府の体制をゆるぎないものにするためだったと言われているけど、海外から抗議が殺到して解除されるまで、異教への迫害はそれは酷いものだったと色々な書物に残っている。
世界遺産というと、大自然とか綺麗な建築物を想像していたけれど、わたしはこの旅で見た初めての世界遺産がこの聖ポール天主堂で本当に良かった。世界一周の旅で浮つきそうになる気持ちを、ぐっと押し沈めてもらったような気がするから。

ユネスコの世界遺産のページにはこう書いてある。

“世界遺産とは、地球の生成と人類の歴史によって生み出され、過去から現在へと引き継がれてきたかけがえのない宝物です。現在を生きる世界中の人びとが過去から引継ぎ、未来へと伝えていかなければならない人類共通の遺産です。”


私は、幼少期からヨーロッパに憧れがあり
フランスの世界遺産であり天空の城ラピュタのモデルとなったという「海に浮かぶ島」モンサンミッシェルを観に行くのを今回楽しみにしていた。
それはきっと素晴らしいだろうし、今も楽しみだけれど、世界遺産とは決して美しいものだけではなく、私たち人間が紡いできた歴史、そして人間が犯してきた過去の罪や過ちもすべてひっくるめて、後世に残していくべきものなのだと今日感じた。

観光客で賑わう天主堂にいるひとたちは皆、一見笑顔で友人や家族と写真を撮りながら、その浮世離れしたとも奇妙ともいえる天主堂のいでたちを見てここに至るまでの時間に想いを馳せているだろう。

天主堂は裏側からは二階へ上れるようになっている。
下は隙間から見えて、高所恐怖症の方には辛いかも。。。



 

 

そして天主堂の前には石畳が素敵なセドナ広場が広がっている。

こちらも世界遺産。

パステルカラーの建築物がとてもお洒落で、どこで写真を撮っても素敵。
近場のアジアで、西洋の雰囲気を楽しめるので、日本人の若い女性に大人気という理由が分かる気がする。





 

 

一通り中心部を巡ったあとは、噂のマカオタワーへ。
ここからはマカオが見渡せるらしい。
長い旅路、お金は限りなくあるわけではなく、むしろ後半には物価が高いヨーロッパやアメリカが控えている。。。
この旅では、なるべくお金をかけずに楽しむことを心掛ける。
高いところが大好きなので、マカオタワーのてっぺんを目指す。

そこにあったのは、バンジージャンプ!!!!!

 

やってらっしゃる方がいる。。。


 

くまのぬいぐるみ。

ちょっとシュール。。。

タワーから下を覗いてみると、その高さに驚いた。
もはや下は靄でかすんで見えない。。。
商業用のバンジーでは世界一で233Mもあるらしい!!

よーし!!
この度の記念にダイブする気持ちで飛び降りるぞ~!!
と張り切っていったら、
…お金が足らなかった(泣)!!

なんと、おひとり日本円で5万円くらい。
スリや強盗に遭っても大丈夫なようにと、国移動時以外はその日使うであろう現金のみを持っていた私たち。
昨日のカジノでの儲けも含めて、今日はご馳走食べるぞー!といつもの予算より多く持っていたのに
それでも。。。足りなかった。。。というか、5000円くらいで飛べる!と思ってしまったわたしは、さすがにマカオタワーに失礼か(笑)

それにしても5万円は高杉と思ってしまうけど、命がけのアトラクションだからそれが相場なのかしら。。。
何にせよ残念無念。
景色は爽快なほど高くて絶景!夜はまた夜景が綺麗なんだろうなあ。



でも運よく飛び降りる方がいて、その瞬間に間近に立ち会い、ちょっと想像して疑似体験することができた。
人が飛ぶのを見ているだけでもこんなにドキドキワクワクするのに、自分が飛んだらどんなにスッとするだろう??
いつか絶対、またバンジージャンプしよう!と心に誓う。

そして…朝のおばあちゃまたちからアドバイスをいただいた、東洋一のカジノと言われるリスボアに行く。
見た目からしてすごい迫力!!
こ、これは…ディズニーランドのエレクトロニカル・パレード!?




中に入ると、、、
笑顔のホテルマンが日本人ですか??と話しかけてくれた。
はい、カジノに行きたいのですが、、、と言うと、にこりと
コータローサワキを知っていますか??と。

あっ…!
そう言われて気が付いた。名前を忘れてしまっていたけど
ここは、あの沢木さんが大小という賭けにはまってしまった、あの有名なホテル!?
きっと深夜特急を読んで、このカジノに来る日本人旅行者がたくさんいるんだなあ。
カジノへ入る前に気が付いてよかった!
東洋一のカジノなんてそれだけでもすごい体験なのに、あの深夜特急の舞台と知ってありがたみが倍増した感じ。。。
それにしても沢木さん効果、絶大だな。

 

ホテルの中は通路もどこもかしこもキラキラのピカピカ。
眩しすぎて、目が…蒲田のこじんまりしたネオンに慣れたわたしの目では、この輝きを直視できず。
マカオが今、ラスベガスを抜く興行成績だというのが実感として伝わってくる。
お金に糸目をつけずにつくって、そこにお金がじゃんじゃん集まっている流れを感じる。

 

そしてカジノの中。



カジノというか…「賭博場」という言葉がぴったりな世界。
ラスベガスで見た「カジノ」とは空気が全然違う。


何故だろう…と考えて分かったのは、中にいる人たちの雰囲気が全然違うのだ。
ラスベガスは老若男女、それこそピンクのタンクトップきたおばあちゃんとかラフな格好のおじいちゃん、若い子もたくさん、スーパーに買い物に来るようなリラックスした表情でみんなカジノを楽しんでいた。
もちろんハイクラスホテルのVIPルームなんかは、セレブ達が大金を賭けて真剣勝負もしていたけれど、それでもどこか余裕や遊び心を感じる空気だった。


でもマカオのこのカジノは…
まず、いる人たちがほとんど男性、頭髪や服装も黒、たまにいる女性もただものではない雰囲気を醸し出しているという視覚的な圧の部分も然り、その表情たるや真剣そのもの。
「息抜きにきている」、というラスベガスのそれと違って、こちらは「生き抜きにきている」というかんじ。

ルーレットや台に注がれる人々の眼光がギラリと光り、なんだか映画で描かれるギャンブルの世界を垣間見たような気持ちになった。
これは…本気の世界だ。
わたしたち小娘が入る余地なんてない(^_^;)。

きっと鴨が葱を背負って来たと思われたのだろう、いろんなところから、こっちで遊ばないか、ここで少し運試ししてみなよ、と声をかけられるが…笑顔でかわすのが精一杯。
なんだかもういるのが辛くなって、ちよみんと一通り見学した後、そのまま退出した。
外に出たあと、ふたりで深呼吸。
はああ、息苦しかった。

それにしても、今よりきっとずっとあの賭博場も粗削りなあの時代に、あのアウェーな雰囲気の中いきなりゲームにはまって没頭しちゃう沢木さんて、やっぱりすごいなあ。
と、旅人の神様の凄さを実感しながら、遅めの夕食へ。


小籠包がとても有名なという鼎泰豐(ディンタイフォン)というお店に偶然にも出くわし、お腹いっぱい点心を食べる幸せな時…。

本当に、ほっぺたが落ちるくらい美味しい!!!!!
日本でも、このお店は展開しているらしい。




 

最高の小籠包を満喫して、ホテルまでは腹ごなしに歩くことに。
雨のマカオは、夜の光が水に反射してきらきら綺麗。


少し濡れて歩きながら今日一日を振り返ると、いろんな言葉にできない経験ができた日だった。
毎日入ってくる情報やこみ上げてくる感情が多すぎて、整理が追いつかないけど、こうして日記を書くことできっと後々になっても今の時を鮮明に思い出せる気がする。

夕食はそんなに高くなかったので、HKドルがけっこう余ってしまった。
残りのHKドルは、スロットに使ってしまおう!とマカオ最後の夜を満喫しに、あの昨夜のカジノへ。

おもちゃのようなスロット、人のいない中暇そうな店員さん、誰も声をかけてこない、私たちを放置してくれるこのカジノ。。。
ああ、何て落ち着くんだろう(*^_^*)

ちよみんと、うちらはやっぱりこれくらいが身の丈に合ってるね~と笑い合いながら、ゆるりとゲーム感覚でちょこっと座り、その後朝方4時までマカオの歴史について語り…眠りにつく、

そんな 三日目の夜。