さぁ今日の冒険が始まります!!

 

からの続きです。

今回の記事は長めです。

 

夫が運ばれた病院は地域の中核病院で、救急処置室がいくつもありました。


私が座っていた長椅子の近くの部屋からは、ずっと心電図モニターの音が漏れ聞こえていました。
ピロロローピロロローというアラート音。
テレビの医療ドラマで患者さんの心臓が止まってしまった時に流れる、あの音です。

 


モニターのテープが剝がれてるのかなぁ、それともこの部屋にはお医者さんも患者さんも誰もいなくて、モニターのスイッチが入ってるのに気づかないのかなぁと、ぼんやり考えていました。

かなり待った後、遠くから近づいてきた白衣の人におずおずと呼びかけられました。

医師: 大島さんですね?


救急の医師の〇〇です。



桃子: はい、妻です。


よろしくお願いいたします。


事故の詳しいことは何も聞いていないのですが、あのう。


夫は…生きて…いるんですよね?



はい、意識晴明です。
顔を打って瞼が切れました。


その処置をして、頭と頚椎のレントゲンやCTも撮ります。


今の様子なら今晩は帰宅できると思います。


ただ一日二日は意識状態が悪くならないか、気を付けてみてあげてください。


次回の受診は…



待ってください。


夫は認知症ではなく、クリアです。


病状説明も今後の見通しなども、夫にしてください。


それから、夫はお酒を飲んではいませんか?


救急車の中から電話してきた時、呂律が回っていないように感じました。



お酒を飲んでいる様子はありませんでしたが、もう一度確認してみます。


夫の今の様子はどうですか?

奥さんが怒っているんじゃないかと、かなり気になさっていました。

はい、それね。
めちゃくちゃ怒っていますとも!!

はい、正直言って夫に対して激怒しています。


私が夫に対して激怒していると、夫にも伝えてください。



わかりました、もう少しお待ちください。


またお呼びします。

怒りの勢いで、お医者さんに伝言頼んじゃったよ!
すみません…。
彼が当初、遠くからおずおずと呼びかけてきた理由がわかりました。
私の周りには怒りのオーラがゴゴゴゴーとなっていたのだと思います。

また廊下の長椅子で待っていると、心電図モニターのアラートがずっと鳴っていた部屋のドアがいきなり開いて、中からお医者さんが出てきました。
部屋の中に人がいたんだ!?

お医者さんは「●●さんのご家族のかた、いらっしゃいますか?」と言い、それに応えた初老の男性が歩み出ました。

医師: 患者さん、運ばれてきた時には心臓が止まっていて…


もう30分も蘇生してるのですが反応がなくて…


蘇生を止めたら心臓は止まりっぱなしになってしまうので…

なんですと!
あのアラート音は、モニターのテープが剝がれたとかではなく、ちゃんと人に付けられていたのです。
お医者さんたちは蘇生しようと奮闘していたのでした。


初老の男性はすすり泣き始めました。

家に帰ったら倒れていて。


まだ頑張って欲しい。


どうにか頑張って欲しい。



今の状態で蘇生は難しいです。


これから蘇生できたとしても、脳に酸素が行っていなかった時間が長過ぎます。


蘇生できたとしても、寝たきりになります。

部外者の私は冷静に聞けますから、お医者さんが言いたいことは手に取るようにわかりました。


お医者さんは、残念だが蘇生はできない、もう生き返ることはない、蘇生処置を止めるというご家族の承認が欲しい、お別れです、ということを言っているのです。


しかし、初老の男性はわかったのかわからないのか、オロオロと同じことを繰り返します。

どうにかもうちょっと頑張って欲しい…


少し出かけただけで…


出かける時には元気だったのに…


家に帰ったら倒れていて…


信じられない…


何とか頑張って…


まだ頑張って…
 

わかりました。


あと20分だけやってみましょう。


それでもだめだったら、蘇生処置は止めさせてください。

そう言うと、お医者さんは救急処置室に戻って行きました。
初老の男性はふらふらと柱の陰に行き、

うおぉぉぉぉぉん!!

と大声で泣き始めました。
とても気の毒で、私もいたたまれなかったです。
そして、趣味の自転車で救急車騒ぎになった夫への怒りがさらに増してきました。

 

続きはまた今度ね!!

 

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