その電話は、私が取った。


こちら、公正〇引委員会札幌事務所の〇〇と申します。


ハイ。。。


そちらで販売されている゛北海道名産毛がにラーメン゛なる御社の商品について、公正取〇規約に著しく反していると思われるので、連絡しました。

代表の方はいらっしゃいますか。。


ハイ。。お待ち下さい。。


私はその電話を、代表である父に取り次いだ。


ハイ、社長の南川ですが。。

ハイ。。。


ハイ。。。


ハイ。。。


そうですか。。ハイなる程。。

わかりました。。

ええ、では来週ですね、

ハイ木曜日がいいですね。。

ハイ、では午後1時30分にそちらに伺えばいいんですね。

ハイ、それではそういうことで。。


受話器を置いて父は言った。


公正〇引委員会と言う役所だなぁ。。


何だって?


ウチの毛がにラーメンが、何らかの違反に当たるから事情聴取するので、来週木曜日の午後から札幌の事務所まで出頭せよとのことだ。。


何が違反なの?


さぁ〜、詳しくは判らんなぁ。。

行ってみなきゃ。。


オホーツク海に面した片田舎の零細製麺所にとって、関係監督省庁と言えば、地元の保健所だった。

それがいきなり、聞いたこともない公正〇引委員会からの呼び出しだ。。

一体それはなにを問う為なのか。。。


前日に札幌市へ父と同行して宿泊。そして当日の午後、高いビルディングの道庁合同庁舎内にある、公正〇引委員会札幌出張所と看板の出ている事務所を二人で訪ねた。


どうぞお入りください。

受付嬢に案内されて会議室へと通された。

やがて二人の男性が現れた。

名刺交換をする。

事務所長と、電話をくれたやや年配の〇〇さんが並んで座った。


早速ですが、そちらで作られている毛がにラーメンは、これで間違いありませんか?


〇〇さんは、私の作った毛ガニラーメンの化粧箱を前に差し出し、事情聴取を始めた。


ハイ、そうです、間違いありません。


ここに、毛蟹粉末入り〜などと書かれていますが、これ、本当に入ってるのですか?

虚偽じゃないですか?


〇〇さんは、始めから高圧的に話した。


えっ!入れてますよ!ちゃンと。。

私は答えた。


証明出来ますか!?


勿論です!


買い入れ記録も帳簿も有りますか?!


勿論ですョ。有りますよ!


では入っているとしましょう。。

しかし公正取引先規約が有りましてね、その中にご存知ないかも知れませんが景品表示法と言うのが有ります。

御社の商品の、こう言ったデザインは、景品表示法による過度な誇大表示と見なされるんですよ。

消費者に著しく誤解を招く恐れがあると言う事です。

我々はそう言った商品を無くす為の、取締り機関です。

よろしいですか。。


しかし、カニを入れてかにラーメンとして売っている製麺所が有りますよ。

ウチは毛ガニを粉末にして入れてるから、毛がにラーメンとして販売してますが、それのどこがダメなのでしょうか!?


そのカニが毛蟹だとちゃんと証明出来ますか?!もう一度聞きますが。。


勿論です!出来ますよ!


で、何%含有していますか?


〇%です。


そんなものじゃ入れたうちに入りませんね。最低20%は必要ですよ。


あのですね、300gの毛蟹を乾燥粉末にすると20g前後になるのがせいぜいです。

先ず金額的にそんなに入れることは不可能ですし、第一そんなに入れたら、クドくて食べられませんよ!

わかりますか?スープにもカニエキス入をれてるんです。

私が作りましたから、色々やって、今のベストな含有量を選択して製品にしてます。

そちらの言う規約通りなんかには出来ませんよ!

私は言った。


では内容量はともかく、これは毛ガニの写真をバックに大きく使った明らかな誇大表示、つまり景品表示法違反商品です!

よって直ちに販売を停止していただきます!!


ええ〜〜〜!今販売しているものをですか!?


そうです!!


冗談じゃないですよ!ここまで来るのにどれだけ苦労したと思ってるんですか?!


当方にはそう言った事は関係有りません。

法律への規約違反があれば直ちに取り締まるのが公正〇引委員会の役目です。


。。。。。


今直ぐに販売停止ですか?


そうです!


それは無理ですよ!!


専務さん、社長さん、いいですか、私がこの公正取引委員会の名刺を持って問屋筋や店頭に行けば、直ぐに販売停止させる事は出来るんですよ!分かりますか!


うん、チョット待って下さい。。

父が言った。


貴方、今あんたが言ったことは、それは脅しだね。。

名刺持って行ったらどうなるか?

それ、脅しじゃないか!

役所がそんなヤ〇ザ紛いの事していいのかい。。


いや。。。例えばの話しですよ。

そうなる前に、撤去してください、そう言ってるんですよ。。

年配の〇〇さんが言った。


いや、今の発言は聞き捨てならないなぁ。。そうならそうで、こちらにも考えはあるよ。

先ず今すぐ販売を止めるなんて、そんな事出来るわけがないでしょう。。

例えそうだとしても、どんな案件にだって、執行猶予というものがあるじゃないですか、え!違いますか!?

父が言った。


そこで所長が漸く口を開いた。


まあ、仰る通りで。。

では何時ごろからなら停止できますか?


それは帰って検討してみないと。。今いきなりここで言われたって何一つ答えられませんよ。

時間を下さい。。


何も腐ったものや、違反添加物を入れてるとか、命に関わる様な毒物を入れてるとかそう言う事でもないでしょうが。。


。。。。。


では検討期間として、ひと月待ちましょう。

ひと月後に再度ご連絡頂けると言うことで、宜しいですか。。

では本日はこれまでとします。

遠い所ご苦労様でした。


所長が場を閉めた。


二人は表に出て言葉を無くしていた。


参ったなぁ〜〜。。

これは終わりだね。。

そんな法律があるなんて全く知らなかったョ。。

私が言った。


まあそう簡単に、終わらせはしないさ。。

あの事務官の言った脅しは聞き捨てならない発言だ。。

何か策はあるさ。。

まあ、兎に角帰って対応を練るしかないなぁ。。

父は意外と冷静だった。。


帰社した私は、直ぐに六法全書を開いた。

そこに景品表示法なる項目を見つけていた。


法学部に進んだ私だったが、六年間在籍の後に除籍処分どなった身で、法律の勉強など殆どしていなかった。。


しかし六法全書の法律を読む限り、あの事務官の言う事はそう間違ってはいないとも思った。。


そうだよなぁ〜。

第一、こんなに物事が上手くゆくはずがないンだよなぁ。。。

今日まで。。短い夢をみたんだなぁ。。。


私はすっかり諦めかけて居た。


そんな時だった、札幌からkさんが状況を聞いて会社を訪れてくれたた。

私はkさんに、事情聴取の状況を説明した。

そして弱気な発言をした。。


社長、専務、そう言った事はこの世の中には沢山ありますよ。。


どなたか知っている代議士はいませんか?


建設業、土木、漁業農業、医療、運輸、その他あらゆる事業分野において、法律に抵触する様な事が様々に起こるものです。

そう言う時の為に、それぞれの会社なり団体が地元の代議士に献金していて、いざという時の為に備えて居るのがこの世の中ですよ。

役所絡みのこの案件なら尚更の事です。

kさんは世の中の裏事情を熱く語った。

なる程。。


第一、ここまで来て今更手を引くなんて事、現実に出来ますか!?


消費者からの苦情が絶えないと言うモノならいざ知らず、こうして1年近く売って、しかも全国区に販売をして、殊更何も問題ない商品を、突然ボツにするなんて事、あり得ないでしょう。。

何か別の力が働いて居ると思いますよ。

この毛がにラーメン、突然現れて、今全道全国を席巻してるんですから、出る杭は打たれる〜の例えですよ。

目立ち過ぎたんですよ。。


これは代議士を通して対置してもらうのが一番です!


しかしkさん、僕も少しは法律をかじって来た身、六法全書を開いて読みましたが、どうにも分が悪いと言うか。。。


専務、そんな弱気でどうするんですか!

自分の人生が懸かっているんですよ。

ここは、全力で戦わなくちゃならないでしょう!


六法全書に書いてある通りに世の中が回って収まるのなら、弁護士も何も要らないじゃないですか。。

様々な解釈が、何もかもあるのがこのこの世の中ですよ。。


ダメ元で色々当たって、それでダメなら、策が見つから無いなら、そこで諦める。

それからでも遅くないじゃないですか!

今ここで何もしないで諦めると言う事は、漸く開いた自分の人生を、黙って諦めると言う事ですよ。

それでいいんですか!?


。。。。。。


俺もkさんの言うとおりだと思うなぁ〜。

父が言った。


お前、代議士の中〇昭一知ってるんじゃないのか?


それは自民党の大物政治家の世襲代議士で、地元の付き合いで自〇党青年部に入り、代議士来町の折には集会に顔を出し、そこで何度か話をした事のある顔見知りの代議士だった。


私と同じ歳で、劇団の師匠だった小沢昭一と同じ東京麻布高校の出身だと言う事で、話が合った。

東大法学部から〇銀を経て衆議院議員となり、今や自民党の若手最有望株だった。

私の師弟関係も幸いし、会えばいつも話は弾んでいた。


そうか。。

そうだよな。。

ここで簡単に諦める訳にはゆかないんだよなぁ。。ここまで来て。。

確かに人生が懸かっている。

社運が懸かっている。。

僅かながら、ここで働く人の為にも、何より自分の人生の為に、全てを賭けて戦おう!


私は震えた。。


献金は何もしていないけれど、ひとつ身を捨てて一筆啓上し、事情を真摯に伝えて何とか力になって貰えないものか、頼んでみよう。。


私は直ぐに行動に移した。


長い長い書面を綴り、書留速達にて衆議院会館に居る中〇昭一議員宛に、一縷の望みを込めてその分厚い手紙を投函した。。

          つづく