パリピポ -6ページ目

パリピポ

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---- 春休みに、友達が死んだ。

大切な友達だった。

だから、俺たちは、もう一度会おうとした。




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水の動く音がした。ぴちょんと滴る音や、さらさらと流れていく音。
真っ暗闇だった。


暗いな----。



そう思った瞬間、雲が動いて月影が射した。満月が輝いている。

ああ…、俺…、外にいるんだ。

身じろぐと、じゃりっと太腿に岩の感触がした。
濡れた岩----、ここは水辺なんだと思った。
山姥の長い白髪のような、細い滝が淵へと流れている。

「……何してたんだっけ」

寝起きのような声で、シウォンは言った。
シウォンまで、ぼんやりしてるのは珍しい。

彼はたいてい、テキパキ、カリカリしている。

そこまで考えて、俺はこの人を知ってる、と思い出した。
チェ・シウォン---郷土研究部の部長だ。

「何って……、あれでしょ。ほら、……夏季合宿っ!」

笑い混じりに言ったのは、けだるそうなリョウクだった。
リョウクはどんなことでも、皮肉げに笑い飛ばしてしまう。
だけど笑い声の中に、困惑や、恐れが混じっていることに俺は気付いた。

キム・リョウク---郷土研究部の部員。


口達者で陽気なリョウクでも、この暗闇が怖いんだ。


あれ----?リョウクは元から怖がりだったっけ。


どうして、記憶がぼんやりしてるんだろう。


「そうだ、ええと、合宿で…。ここは合宿先の村で…。この村で僕たちは、何かを探してたんじゃなかったっけ……?」

頭を抱えながら、ソンミン先輩が辺りを見渡す。
普段から気弱なソンミン先輩は、さらにびくびくして、小さく膝を抱えていた。

俺も怖かった。

この水辺の暗闇には、視線や、息遣いを感じるんだ。
----生きていない人たちの気配。

不安げな俺と目が合うと、先輩は無理矢理笑って、俺を励ますように「大丈夫、大丈夫」と言った。


イ・ソンミン先輩---郷土研究部の副部長。


「----死人」

イェソン先輩のぼそりとした声に、俺はびくっとした。闇が喋ったのかと思ったからだ。
無口なイェソン先輩は、それきり、鋭い目で闇を見つめている。
ただでさえ怖い顔なのに、闇の中では殺し屋のようだった。

----この人のことは、あんまりよく知らない。
あまり喋ったことがないし、いつも1人でいるから。

キム・ジョンウン先輩----郷土研究部の部員。



「……死人って……?」

俺は振り返って、彼らの顔を見渡した。

その時に気づいた。
俺たちはどうしてか、背中を向いて、円陣を組むように座っていたらしい。
円の中心には、焦げた紙切れがある。人の形の紙切れだ。

「死人って何ですか、イェソン先輩」

「そ、そうだよ!驚かさないでよ!」

「ま、まあ、2人とも……」

いらいらするシウォンと、怖いせいかいつもより大声のリョウクとを、ソンミン先輩がおろおろとなだめた。


----こういう光景は、見たことがある気がする。
ファミレスが混んでて入れなかった時とか、知らない町で道に迷った時とか。

俺はよく、この人たちと一緒にいたんだ----。


ほっとした途端、イェソン先輩が低い声で呟いた。

「……死人を蘇らせる方法だ」

「死人を蘇らせる方法……?」

首を傾げかけて、俺ははっとした。
もやがかかったような脳裏に、鮮やかな場面が浮かぶ。


舞い散る桜

白い病室

たくさんの泣き声

不気味な風が、夜の淵の水面が撫でて行く。

「……春休みに…、あの人が死んだんだ……」

俺----イ・ドンへは口元を覆った。


春休みに、大切な友達が死んだ。
同じ部活だった。
同じ郷土研究部の部員で----、それ以上に大切な友達だった。

俺たちは、その友達が大好きだった----。


「そうだ…。それで蘇生の儀式を、この村で知って…、えっと、よく思い出せないんだけど…。」

ソンミン先輩が記憶を捻りだすように、考え込む。


「…そうだ、そうだった!本で読んだか……、誰かに聞いたか……」

リョウクが、思い出すように、視線を宙へめぐらす。


「あれだ。ヒト……。ヒトガタ……」

「ああ!人の形をした紙切れ……」

シウォンの一言に、リョウクがはっと反応する。


「それに自分の名前を書いたんだよね、たしか、このあたりに……」

体ごと振り返って、槙原先輩が円陣の中心を探った。
そこには焦げた紙がある。
人の形をした焦げた紙が----4つ。

「……4つ?」

不意に、シウォンが眉を寄せた。
シウォンは鋭くて、勘がいい。嫌な予感がして俺はどきりとした。

「……どうした?」

「…なに?4つだからって、なんだっていうの?」

俺と同じようにも不安を感じたのか、シウォンに詰め寄るリョウク。

そんなリョウクに目もくれず、シウォンは人型の紙を睨みながら言った。


「この紙切れに、全員で名前を書いて、ここに置いたはずだろ。----だったら、5つあるはずだ」

闇の中の気配が濃くなる。
恐ろしさがこみ上げて、俺は鳥肌を立てながら問う。

「……だから、何?」

「俺たちは、4人でここに来たはずだ」

「今だって、4人でしょ!?」


声を荒げるリョウクに、

「……数えてみろ」

唸るように、シウォンが告げる。
恐怖を振り払うみたいにリョウクが嘲笑した。

「ハハ…、変なこと言わないでよ。幽霊でも混じってるって言うの?」

「いいから、数えろ」

「…わかったよ、わかった。いい?1人、2人……」

リョウクは立ちあがって、俺たちを1人ずつ数え始めた。

シウォンを指さす。
俺を指さす。

「3人、4人……」

次第に、その声は曇り始めていた。
ソンミン先輩を指さして、イェソン先輩を指さす。

「……5、人………」

最後に自分を指さして、リョウクは呆然と立ち尽くしていた。

「……ひ…1人多い……」

ソンミン先輩の声に、俺たちはさあっと青ざめた。

「う、嘘でしょう?もう一度数えて、いち、にい、さ……」

「増えてる」

震える俺の声を遮るかのように、イェソン先輩が眉を寄せて首を振る。

「あいつが死んで4人になったから廃部になるかもしれない、……そう話していた」

「じゃあ、本当に生き返ったって言うの?」


またしても、わざと大きな声で、リョウクは笑った。

「まさか!こんなのはお遊びだったはずだよ!現実にあり得るわけない!春休みに死んだあいつが……」

不意にリョウクが目を見開いた。

「……あいつ……」

「…どうした」

沈黙したリョウクを、イェソン先輩が怪訝に見上げる。
静かにうなだれて、リョウクは、ぽつりと言った。

「……あいつって、誰?」

「そんなっ…、忘れたの?あれだけ仲が良かっ……」

ソンミン先輩も途中で黙り込んで、口元を覆った。
愕然と、俺も息を飲んだ。…思い出せない。


----死んだ友達の名前も、顔も、思い出せない。


「俺も思い出せねえ」

「ね、ねえ、チェ・シウォン……君は覚えてるでしょ?」

「……覚えてない。おまえは?ドンへ」

ぎゅっと膝を握って、俺は首を振った。

「……覚えてない」

シウォンはぐっと、唇を引き結んだ。
青白い月の光が、シウォンの顔の上に撫でていく。

「そんな…、そんなわけあるか。同じ部員だったんだぞ。ずっと一緒にいたんだ」


信じられないと、シウォンが首を横に振る。

「死んだことも信じられないのに、名前も思い出せないなんて…。それも、僕ら全員が…」

「……こんなのはおかしい。第一、僕らは儀式を知って、生き返らせようとして……」

恐怖より混乱に顔が青ざめていくリョウクと、必死に言葉を紡ぐソンミン先輩。


「この淵に来たんだ。----そうだ、この淵は、村の禁域だ」

ソンミン先輩の言葉を受け継いで、イェソン先輩が背後の淵を振り返った。

山姥の白髪のような滝が、細々と流れおちる、不気味で小さな淵。
俺たちの中心にある、人の形をした4枚の紙切れ。
不自然な焦げ跡を見やって、俺はやっとの思いで呟いた。

「……生き返った……?」

リョウクが飛びあがって、青い顔でシウォンの肩にしがみついた。

「な、何を言い出すんだ!この男は!!」

「おい、離れろ」

「だ、だって、俺たち、4人だったはずなのに、ご、5人いるし……」

「ぎ、儀式が成功したんだ……」

ほとんど涙目になって、ソンミン先輩は声を震わせた。

「……ほ、本当に生き返って、ここに……」


音もなく、シウォンが目を見開く。
イェソン先輩がゆっくりと、唇を押し潰した。

「じゃ、じゃあ、君たちは……」

青い月の下で、リョウクの顔色は、月よりも青かった。
----どこかで、鈴の音がする。

「僕ら5人の中に、死んだ誰かさん----、幽霊がいるっていうの!?」






to be continued...