岩井俊二はじめました。
2004年 監督/ 岩井俊二
いやあ、もうなんて言い訳をすればいいんだろう。まさか岩井俊二監督作品をレビューする日が来るなんて。
ボクはこれまで、岩井監督作品が苦手…いや、はっきり言えば嫌いでした。
何が嫌いかって、まずはその編集ですよ。何なんですかあのバッサバッサ切り刻まれたカットの連続は。なんで秒でカットを割らなくてはいけないのですか?そこまで切り刻む理由はなんなのですか?
岩井監督が台頭した90年代は、ボクの映画の神様、北野武監督台頭の年でもあります。北野監督の"削ぎ落としの美学"を究極の芸術とし、そのカット割りと編集に心酔していたボクにとって、岩井監督作品は到底理解の出来るものではなかったのです。
いや、そもそもアクション、ホラー、サスペンス映画ばかり観て来たボクにとって、そのなんというか、岩井監督のお洒落な作風はボクの肌に合うはずもなかったのです。
そんなボクが何故今回『花とアリス』に手を出したかと言うと、そのタイトルとDVDジャケットに写る2人の少女のビジュアルに、惹きつけられるものがあったんですよね。小さく繊細ながらも、胸に響く深く大きなドラマがあるに違いないと確信してしまったのです(つまりはジャケ買いってやつです)。
久しぶりに対峙した岩井監督作品は、やっぱり監督得意のブツ切り映像博覧会。
それでも鑑賞を止めなかったのは、2人の少女が織りなす日常のリアリズムや思春期特有の世界観、そして随所に散りばめられたユーモアに、本編開始早々引き込まれてしまったからなのです。
そして気づけば、ブツ切りの編集(以降コレをテンポのいい編集と呼ぶ)なんか微塵も気にせず、まさかのまさか135分もの時を、2人の少女の世界に浸り堪能してしまったのです。つまりボクは岩井俊二に飲み込まれてしまったのです。
なんてこった。
【この映画の好きなとこ】
◾︎花 (鈴木杏)
とっさに嘘が飛び出す嘘の名人。悪びれる事なく嘘を貫き通す姿は、子どものようで可愛くもある。演じる鈴木の独特の台詞回しで、花という曲者キャラクターを確立させた。
◾︎アリス (蒼井優)
花がついた嘘の共犯者となるが、あろうことか花が想いを寄せる先輩と恋が芽生え、三角関係の事態を巻き起こす。演じる蒼井の天真爛漫な明るさと奔放さはハマり役。
◾︎クセモノだらけのサブキャスト
岩井監督の手抜きゼロなキャラクター造形のおかげで、登場人物を眺めるだけでも相当楽しめる。ここでは特に好きな3人を紹介。
矢上風子 (黒澤愛)
愛、アリスと同じバレエ教室に通う写真部の同級生。「喧嘩しちゃだめだよ」が口癖。
猛烈亭ア太郎 (坂本真)
花が入部した落語研究会の部長。言葉尻に必ず「つって」が付く。爆発屋五郎、花屋ピュンピュン丸などのネーミングセンスに失笑。
双子モデル (児玉真菜)
アリスが訪れたオーディション会場で撮影をしているモデル。オーディション生を上から目線で批評する意地悪な双子。
◾︎ファーストシーン
日の出間近の郊外。寒さに鼻を啜りながら学校へ向かう2人の少女。本編最初のワンカットで心を掴まれる名画に出会うことが、数十年に一度ある。
◾︎ウソ
意中の宮本先輩に記憶喪失と思い込ませる為、とっさに嘘をつく花。疑惑を持たれたり、秘密がバレる度に次々と嘘の上塗りをする様がウケる。
◾︎アリスと宮本先輩
花の為に宮本先輩の元カノを演じ、嘘の思い出話をしていたアリスだが、やがて自身の願望が入り混じりながら饒舌になって行く。そして2人の距離は縮まり始める。
◾︎おにぎりサンド
アリスがでっち上げて作った宮本先輩の好物。先輩曰く"牛乳と味噌汁両方欲しくなる"とのこと。食べてみたい!
◾︎ハートのエース
風で飛ばされたトランプでハートのエース探しをする3人。先に見つけた者が命令できる、いわゆる王様ゲームだが、ここで初めて2人の思いが正面衝突する。
◾︎おわり
嘘がバレて終わるアリスと宮本の恋。想い出のトランプを渡し、「引き出しの一番奥にしまって置いて。いつかそれを見つけたら私を思い出して」と告げるアリスが切ない。
◾︎花の告白
これまでの嘘を告白し、アリスと幸せになってくださいと断腸の思いで宮本先輩に別れを告げる花。背中ごしで声を押し殺して泣く花に、強気といじらしさを見る。
◾︎アリスの舞
オーディション会場でアリスがバレエを披露。フルで踊る事を懇願するアリスの姿に、前へ進もうとする決意が見て取れる
2歳から踊っているだけあって見応えありす!
◾︎エピローグ
アリスがカバーを飾る雑誌を手にした2人の笑顔で締め括るラストシーン。2人の友情が続く事を明示しており、この瞬間が永遠である事を祈らずにいられない。
まさか岩井監督作品がこんなに面白いとは!正直そこまで期待していなかった為、本当に本当に驚きです。
ラブストーリーを軸にしながらも、根底にあるテーマは花とアリス、2人の友情です。ベタな恋愛映画とは一線を画している為、観ていて恥ずかしくなりません(もしかしたら岩井監督作品はみんなそうなのか?)。
愛すべき変人と美しいカットの連続で埋め尽くされた135分は、最高に素敵な世界であり、すべての登場人物をこんなにも丁寧且つ魅力的に描いた岩井監督の力量には心から敬服いたします!『花とアリス』の面白さは、単純に青春映画や恋愛映画というジャンルに括られるものではありません。コレはもはや青春爆発エンタメですね。
本作にはショートバージョンが存在しており、特別版DVDに収録されている事を知った為、その日の夜ブックオフに走りましたよ。結局、二日間で長編を3回、ショートバージョンを1回で計4回も観ました。それくらいクセになる魅力が詰まった作品です。
岩井俊二が嫌いと言っていた頃は、ホントに上っ面しか見ていなかったんだなあと遠い目でごまかしつつ、これから他の岩井作品にも手を出してみよう。うん、そうしよう。
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