お化け屋敷の究極
1981年 監督/ サム・ライミ
ボクはこれまでサム・ライミ監督の長編デビュー作『死霊のはらわた』の魅力をまったく理解出来ませんでした。その理由のひとつは、ホラー映画の要となる特殊メイクがチープ過ぎることです。
本作の公開当時(日本公開は1985年)は既に、『13日の金曜日』シリーズのトム・サヴィーニや、『遊星からの物体X』のロブ・ボッティンら人気特殊メイクアップアーティストが腕を振るっていた黄金時代。特殊メイクの出来でホラー映画の善し悪しを決めていたボクにとって本作は、既に駄作の烙印が押されたも同然でした。その上、縦横無尽に暴れ回るカメラワークを無名監督の素人仕事と酷評していたのです。
それでも『死霊のはらわた』は、世界レベルでの人気を博していた。みんなこんな作品が本当に好きなんだろうか??
しかし、本作がいかに支持されているかを示す証拠は有り余っていました。本作の商業的成功により、2本の続編『死霊のはらわたⅡ』『キャプテン・スーパーマーケット』とリブート作品『死霊のはらわた(2013)』が製作され、近年ではテレビシリーズ化までされていました。そして、2023年には第5作『EVIL DEAD RISE(原題)』の公開が控えているほどの人気が続いているのです。
そして何よりこの第1作は、ホラー映画ランキングにおいて常に上位にランキングされ、本作をベストと推すコアなファンが後を絶たないことも事実なのです。
しかし、本作の人気理由は、(何故か繰り返すこと)10数回の鑑賞を重ねても探り当てる事は出来ませんでした。ボクの肌に合わないことだけは分かったのですが、なんと数十年ぶりの再鑑賞で、まさかのまさか本作を心から楽しんでしまったのです!
『死霊のはらわた』はライミ監督の超絶怒涛なる咆哮と、ブラックジョークを楽しむアトラクションであることに気づいたのです。
そうすると何もかもが光り輝き始めました。漫画のようなカット割りや、チープな特殊メイクも作風に合っており…いや、この演出・造形以外は考えられず、ここに来てライミ監督のプロデュース能力にも惚れ惚れしてしまいました。
そう、ボクもEVIL DEADに取り憑かれてしまったのです。
【この映画の好きなとこ】
◾︎音楽
第3作『キャプテンスーパーマーケット』までジョセフ・ロデュカが担当し、シリーズの世界観を統一させた。作品の出来同様に本作が突出している。
◾︎山小屋
『悪魔のいけにえ』に匹敵する美術センス(ロケセットか?)。舞台が山小屋に限定されるストーリー故に、この美術の成功は大きい。
◾︎コミックショット
漫画のようなカットが全編に登場する。映画では表現しづらい画に挑むライミ監督のチャレンジ精神が、何気ないシーンにもふんだんに組み込まれている。
◾︎襲う森
森の木や枝が、生き物のようにシェリルを襲うとんでもなくエロいシーンなのだが、ここは敢えて"官能的なカット"と表現し、その手腕を正統評価したい。
◾︎曲げられた橋
5人の若者を森から出させまいとする邪悪な意思が、橋をグニャグニャに曲げてしまう。現実離れした異空間を描くセンスが秀逸。
◾︎はじまり
死霊に取り憑かれたシェリルの変貌と、その暴れっぷりは本作の大きな見せ場。トランプや鉛筆など小道具の使い方も上手い。センセーショナルなカットが連続する演出が圧巻。
◾︎シェリー
シェリーが切りつけられた自らの手首を食いちぎる尋常ならざる行為に爆アガリ!スコットが斧でめった切りにする凄惨なシーンも、コミック調の演出により楽しめる。
◾︎リンダ
恋人アッシュを嘲笑うかのように苦しめるリンダ。その純情キャラクターから、誰もがファイナルガールだと思っていた分、インパクトは絶大だった。ライミ監督は確信犯か?
◾︎死んだフリ
リンダの埋葬シーンで、本編前半の寝たふりごっこが立場を逆転して繰り返される。牢を破り、放たれるシェリルのカットバックも効果的。
◾︎浴びる
アッシュは何度も大量の血を浴びる。ライミ監督のサディスティックな演出はギャグに昇華しており、アッシュを演じるキャンベルには誰もが同情しつつ笑いを禁じ得ない。
◾︎スコットの復活
取り憑かれて復活したスコットは、本作で一番のお笑い担当である。最も手強い相手と思わせてハズすライミ監督のセンスが光る。
◾︎シェリルとの対決
地下室を脱走したシェリルとの対決。ここから撮影カメラは縦横無尽に室内を駆け巡り、漫画を地でいく怒涛の映像ラッシュとなる。
◾︎人体破壊
特殊メイクとストップモーションアニメで見せる最後の見せ場。執拗に描く崩壊は本編最大のスペクタクルシーン。これは劇場のスクリーンで堪能したい。
『死霊のはらわた』シリーズ以降、『スパイダーマン』シリーズを成功させ、ハリウッドの名匠として活躍しているライミ監督を見ると、今本当にやりたい事が出来ているのかと要らぬ心配をしてしまいます(『スパイダーマン』観てませんが)。それほど本作でのテンションと演出は最高潮に達していたと思います。
しかし、来年公開予定の新作も含め、ライミは全ての『死霊のはらわた』シリーズに、本作で主演を務めた盟友ブルース・キャンベルと共に製作として参加しています。もしかするとライミはメジャースタジオで大作を撮りつつ、『死霊のはらわた』シリーズに関わる事で上手くバランスを取っているのかも知れません。
そう考えるとやはり新作に寄せる期待も膨れ上がるものです。本作を超えるのは並大抵のことではないと思いますが、今度はどんな新しい『死霊のはらわた』を見せてくれるのか、楽しみに待ちたいと思います。
※2019年1月8日の投稿記事をリライトしました































