新たな世界に慄く。庵野秀明に慄く。

2023年 監督/ 庵野秀明

なにせボクは『仮面ライダー』にハマったことがない。誰もが知るそのテレビヒーローを一度もカッコいいと思ったことがないし、オンエアされていたテレビドラマも、まともに観たことがない。


日本に庵野秀明という業界屈指のクリエイターがいる。『新世紀エヴァンゲリオン』の作者・監督として名を馳せるも、アニメやSFに興味がないボクは未だその諸作品を観たことがない。


庵野監督が手がけた実写作品の『シン・ゴジラ』や『シン・ウルトラマン』は鑑賞済みだが、「ふうん」とか「へえ〜」とかいう程度の感想しか持っていない。

しかし、『シン・仮面ライダー』を観たボクは、ある穿った感想を抱いた。


庵野秀明が本気を出した…。


それくらいむっっっっっっっちゃ面白かったのです!!


『シン・ゴジラ』や『シン・ウルトラマン』(いや、おそらく『新世紀エヴァンゲリオン』でも?)で既に確立されている、浮世離れした登場人物、クセになる台詞回しやオーバーアクト、コミック調のカット割りやカメラワークが絶好調!

異常と呼ぶべきハイテンションで、冒頭のアクションシーンを構築。そして、子供が観たらトラウマ必至の血みどろ残酷描写を展開(PG12に納得)するのだから、もうその痛快さに笑いが止まらないという、『死霊のはらわた』を観たような興奮と感動に包まれてしまったのです!


これ仮面ライダーだよね!?



【この映画の好きなとこ】


◾︎本郷猛/仮面ライダー (池松壮亮)

この俳優、表情が固く暗すぎないか?という懸念は、まさかの陰キャ設定により秒で払拭。ハマり役を嫌う俳優は多いが、もう池松はボクにとって永遠の仮面ライダー。

いつでも帰っ来てくれ



◾︎ヒロミ/ハチオーグ (西野七瀬)

これほど眩い魅力を放ってくれるとは想定外!刀を持つ和装に惚れ惚れ。ハチマスクを被ってもその魅力が揺らぐことは無い。日本映画史に残る名悪役がまたひとり生まれた。

ツインテールと「あらら」で男どもの心を掴んだ



◾︎第2バッタオーグ (柄本佑)

本郷猛と異なる現代風の若者として描かれ、その自由気まま、群れない性格で差別化に成功。抜群のコンビネーションを確立した。

マジ最高のキャスティング!



◾︎リスペクト

仮面ライダーの姿がヘルメットやスーツではない設定であることくらいは知っている。しかし、あのビジュアルを尊重し、現代映画で披露するには、敢えてヘルメットでありボディスーツであると設定するしかない。現代風にリアルな昆虫人間風デザインをしなかった庵野監督の愛情はここから始まっている。

クモオーグなんか堂々とジッパー付きスーツだったしね



◾︎アバンタイトル

2台の大型トラックに襲われるバイクチェイスで幕を開ける。迫力のスタントとカメラワーク。そしてまさかのスプラッター劇場。その痛快さに笑い、僅か3分で心を持って行かれた。

007並みの興奮!
この画とかのセンスも!
ぎゃー!!



◾︎コウモリオーグとの死闘

翼を撃たれ、飛行能力を失ったコウモリオーグを徹底的に痛ぶる様に爆笑!サイクロン号を飛ばして浴びせる100%のライダーキックはコメディパートと考えていいよね?

振り切ったなコイツ



◾︎リアルな日常

仮面ライダーや、そのパートナーである緑川ルリ子は置かれた環境から着替えをしていない。ルリ子が仮面ライダーに「防護服が臭うから洗って」と指摘する様は、一般的な作品では考えられないリアルな日常。

そういえば庵野監督は風呂に入らない人だとか



◾︎ハチオーグ戦 ※ネタバレ

ルリ子を"ルリルリ"と呼ぶ女子キャラから、凄まじい戦闘能力を披露する豹変ぶりまで、アイドル西野七瀬の為に作られたかのような本作きっての戦闘シークエンス。「ザンネン…。ルリルリに殺して欲しかったのに」という台詞に、ヒロミが密かに待ち続けていた人間の心が垣間見れる。

日本映画の古き良きワビサビが盛られ
西野七瀬の可能性をまだまだ感じる!



◾︎傷心のルリ子

バックにつく日本政府の非情な作戦に傷つくルリ子。「ちょっと胸借りる」と本郷猛の胸に顔を埋める場面で、いつもはクールなルリ子を等身大の女子として描いた。

こういう繊細な演出が大好きだ!



◾︎第2バッタオーグ戦

第2バッタオーグの不気味な登場シーンが出色。工場地帯をバックに描かれる激しい空中戦は、本作の大きな見どころ。ハリウッド映画並みのスケールが圧巻。

執拗な追跡から
空中戦



◾︎ルリ子からのメッセージ

用意周到なルリ子が本郷猛に送ったメッセージ。実は特別な想いで本郷猛の背中に身を預け、タンデムシートに座っていた事などが発覚。これはもう本郷猛と共に泣きたい。

庵野監督ぽい演出な気がする。よく知らないけど
亡き父への想いと本郷への想いが交錯



◾︎トンネル ※ネタバレ

無数のバイクで連なり追い詰めるショッカー軍団の様は、巨大なムカデのようにも見え異様な迫力を醸し出している。第2バッタオーグと共に反撃を開始するシーンで流れる仮面ライダーのテーマ曲は、席を立ちたい程の興奮に包んでくれた。

マジカッコいいから
多勢に無勢の非情なチェイス
うおーーーーー!!



◾︎チョウオーグ戦

改造人間も元々は人間。仮面を脱ぎ、人間として向き合う本気のぶつかり合い。そして極上の別れ。残された第2バッタオーグの喪失感まで、ヒーローものではなく、庵野監督はあくまで人間を描いた。

神々しいラスボス



◾︎エピローグ ※ネタバレ

第2バッタオーグが、遺された本郷猛の魂と会話をしながらバイクを飛ばす。2人で仮面ライダーを続けていく覚悟を決めるラストシーンは、続く物語が永遠であることを示唆。




この面白さにはホントに驚きました!!

ボク同様に、仮面ライダーを知らない人、または仮面ライダーに興味が無い人にも心からオススメしたい日本映画の怪作であり快作。そして日本映画の新たな傑作です!!


本作は超一級の娯楽作品でありながら、仮面ライダー、ハチオーグ、チョウオーグ、そしてルリ子まで、改造人間の悲哀を繊細に描いています。だから鑑賞を繰り返す毎に、きっとその魅力も増していくはず。


庵野監督の繊細で豪快で斬新な演出にやっとノルことが出来ました。まだまだ庵野監督にはたくさんの作品を撮って欲しいですね!

こうなると俄然、『シン・ゴジラ』『シン・ウルトラマン』も観直したくなって来ますが、まずは『シン・仮面ライダー』、あと何回観に行くかなあ。


今回鑑賞したTOHOシネマズで、出演者一同(本郷猛とか役名で)の入場者特典サイン色紙が配られていました。入場時は、「うーん、こういうのいいんですけど」と思いつつ受け取りましたが、映画が終わった頃には宝物になってましたよ(うわ、ハチオーグのサインまである!)

しかもそのあとロビーで仮面ライダーグッズまで買っちゃいました。グッズに手を出すのは34年ぶりです!


言うまでもなく、映画館を出て自宅に着くまでボクの頭の中では仮面ライダーのテーマが延々流れていましたとさ。