一緒に飛ぶ。

1991年 監督/ リドリー・スコット


大きな衝撃を受けた作品はその感動が薄れないようにする為、大好きな作品でありながらも敢えて繰り返しの鑑賞を避ける事があります。リドリー・スコット監督作品『テルマ&ルイーズ』がその一本で、これまで僅か2回の鑑賞に止まっていました。

その『テルマ&ルイーズ』4Kレストア版が、全国の劇場で公開されるというニュースが飛び込んできたのは昨年12月。そして先日、念願叶いついに劇場鑑賞してまいりました!


本作は公開当時から高い評価を受けており、世界の主要映画祭で作品賞や脚本賞、そして監督賞にノミネートされていました。しかし一番驚くべきことは、アカデミー賞、ゴールデングローブ賞、英国アカデミー賞において、本作に主演のスーザン・サランドンジーナ・デイヴィスの2人が主演女優賞にWノミネートされる快挙を成し遂げたことです!これは選考員の粋な計らいという次元を超えて、本作の主人公が2人である事へのリスペクトからなるものであり、とても適切な配慮だったと思います。

そんな巡る思いも胸に秘めつつ、15年ぶり三度目の再会を果たすべく劇場へ…


やっぱり『テルマ&ルイーズ』は最高だった!!ラストシーンには身体が震えた!!

スクリーンで対面した2時間10分の物語は、色褪せる事なく、いやむしろ現代の日本にも蔓延る社会問題をより痛感出来る今だからこそ、深く心に響きました。劇場鑑賞の恩恵は大きく、2人の旅に同行した気分すら味わうことが出来ました。この旅が始まる時、ルイーズが駆るサンダーバードの後部座席に乗り込んだのは、ブラピではなくボクだったのです。

本作の素晴らしさを言葉になんか出来ないけど…とにかくリドリー・スコットの画が好き!風景も巻き上がる砂埃も好き!音楽も好き!テルマとルイーズが好き!



【この映画の好きなとこ】

◼︎テルマ (ジーナ・デイヴィス)
気弱なテルマの転身があまりに鮮やか。強盗をきっかけに自活能力が目覚め、時にルイーズを牽引する。一線を超えた女性の心情を、見事な表情の演技で魅せてくれる。
とにかく表情!変化の振り幅がすごい

中盤からの転身は痛快!このTシャツ似合ってる



◼︎ルイーズ (スーザン・サランドン)
強気な性格から終盤に向けて繊細な感情を抱く過程が好き。姉御気質である為弱いところをテルマに見せないようにしている。その分恋人と2人きりの場面は一際切ない。
元々女優として好きなんだよな

汚れ具合もサマになる!



◼︎ハル (ハーヴェイ・カイテル)
主人公の2人に寄り添う刑事役にカイテルをキャスティングするなんて!しかし、この危険な曲者俳優が驚くほどにいい!追われる2人の唯一の理解者である事が作品の大きな救い。
『バッド・ルーテナント』の刑事役とは大きく違う!


◼︎衣裳
上品なマダムファッションに始まる2人が、環境と心境の変化を象徴するかのように、ラフでワイルドな装いに変わっていく。白と黒Tシャツのコンビネーションはキマリすぎ。
釣りに行きますわよからの…
シバくわよマジ


◼︎HAPPY BIRTHDAY
ルイーズの部屋を訪れたハルが、幼きルイーズの写真を手に呟く「ハッピーバースデー」にはどんな意味が?電話で「古い友達のような気がする」とも言っていた2人の関係は?
誕生会の写真らしいけど一体どんな関係??
謎に満ちてるけど印象深く素敵なシーン



◼︎キス
出会った頃に目を閉じて聞いた「私の瞳の色は?」を、恋人のジミーに繰り返すルイーズ。昔に戻ってのキスが艶かしくもときめきに満ちている。
この2人の物語も見たいなあ


◼︎強盗
スーパーでの強盗を捉えた防犯カメラの映像に驚く夫ダリルと、思わぬ成功にはしゃぎ騒ぐテルマの姿が好対照をなしている。
これまでの過失を帳消し!会心の笑顔!
ワイルドターキーも2本貰おうかしら
目を丸くして驚くテルマのモラハラ夫


◼︎交換
自身の時計と指輪、アクセサリーを外し老人に差し出すルイーズ。束縛からの解放を示唆するかのようなさりげないやり取りが印象深い。台詞を排除した演出も見事。
絵画のように美しい画
帽子はお返しかな?
時計を外すのは『イージー・ライダー』に通じるものが



◼︎叱責
「2人を犯罪に走らせた」とJ.D.に詰め寄るハル刑事が観客の気持ちを代弁する。「彼女たちは犠牲者だ」と言い続けるハルの存在が、本作をアウトローとして祀り上げる様な悪趣味映画に走らせなかった。

怒り爆発5秒前!この演技でカイテルが好きになった!

タジタジ…若きブラピ


◼︎制裁される男たち
テルマのモラハラ夫は、刑事に部屋を占拠されるだけでなく、度々些細な事で睨まれる。その様は観客にとって心地よい制裁として映り、セクハラドライバーの件は痛快の域に!
え…言われた通りに話したんですけど…ww
テレビ番組を選ぶ権利すら剥奪ww
地獄の遣いかお前らはー!ww


◼︎警鐘
「妻と子供がいる」と命乞いする警官に放つ「大事にしなさい。大事にしないと私みたいになるわよ」というテルマのメッセージは、真摯に受け止めなければならない。
この一言に尽きるな


◼︎雪解け
カントリーバーでの一件でわだかまりのあった2人だが、「あんたが助けてくれなきゃどうなったことか。今となっては感謝してる」というテルマの言葉で2人は本当に繋がる。
ありがとござます
どういたまして


◼︎めざめ
「一線を越えてしまったが、もう元の人生には戻れない」「本当に目覚めている気分」というテルマの台詞に、自由に生きることの素晴らしさが滲み出ている。そんなテルマを心から祝福してあげたくなる。
このシーンのテルマも凄くいいんだよな
結束を強めた晴れやかな2人の顔が最高!
さすが主演女優賞にノミネートされただけあるよ


◼︎グランドキャニオン ※ネタバレ
2人が選んだ決断は"死"ではなく、誰にも奪うことが出来ない本当の自由。だからそこに悲壮感は皆無。観る側も2人と手を取り合い、共にアクセルを踏み込むこの気持ちよさ!
テルマの恍惚とした表情がすべてを物語る
行こう!もう言葉はいらない!
踏み込むアクセル!道はどこまでも続く


いやあ素晴らしかった!!
逃亡を続ける2人は、愛車サンダーバードと共に埃にまみれ汚れていきますが、解放されていく心は輝きを増すばかりでした。心の奥底から湧き上がる2人の笑顔と咆哮は本当に美しく、心が洗われるかのようで見惚れるばかりの2時間10分でした。

よく"シスターフッド映画の名作"、"女性の解放を描いた作品"と評される『テルマ&ルイーズ』ですが、根底にあるのは"魂の解放"だと思います。つまり女性だけでなく男性でも共感出来る作品ということです!
ラストの感動は以前と変わらず、"胸が詰まる"のではなく"胸がすく思い"であり、自由に向かって羽ばたく感動で全身がガクガク震えましたよ!

ちなみに劇場鑑賞した日から、スコッチ党のボクがバーボンを飲み続けています。もちろんテルマの愛したワイルドターキーをね!
本当はもう一度劇場に行きたいと思ったけど、やっぱりまた胸の奥底にしまおう。またいつか劇場で2人に再会できる日を夢見ながら、もう少しワイルドターキー続けてみようかな。


See You Again Thelma and Louise.