最高。

2023年 監督/ 山崎貴

東宝、そしてハリウッドで制作され続けているゴジラシリーズの劇場公開最新作を本日鑑賞して来ました!

シリーズ作品の過剰な量産に食傷気味、いやストレートに言えば辟易していました。しかも本作『ゴジラ-1.0』の予告編で見たゴジラのCG感と巨大過ぎる姿は、製作者が現実感を放棄しファンタジック路線に舵を取ったようにしか映らず、「いつかDVDで観ればいいや」程度で終わらせようとしていたのです。

しかし、周囲の映画ファンから徐々に聞こえてくる"絶賛"を受けて「上映中に都合がつけば観に行こう」に変わりました。

しかし、それでもなかなか劇場に足が向かないボクの胸ぐらを掴み劇場に放り込んでくれたのが、今年1/12から上映開始されたモノクロバージョンの『ゴジラ-1.0/C』です!


予告編で観た気になるCG感や、再現が難しい昭和初期の風景や色合いもモノクロなら絶対に締まるはずだし、何よりモノクロのゴジラは絶対カッコよく、しかも恐怖感倍増になる筈と感じたのです。

そして本日いよいよ鑑賞…。


予感は的中!!

『ゴジラ-1.0』は絶対にモノクロだ!!


モノクロ処理された映像は想像以上の臨場感をスクリーンに映し出し、恐怖でボクをビビらせながらも、その美しさから一瞬で虜にしてしまったのです!


当然ながら本作最大の見せ場はゴジラの登場シーンです。そのどれもが心底恐ろしくありつつ、映画的カタルシスに満ちていました。

平成版とハリウッド版シリーズはほぼスルーして来たボクですが、本作の大スペクタクルはシリーズ史最高のクオリティと言い切れます(全作品観てないのに)!!


そして、登場人物においては、キャラクター設定、キャスティングまですべてが素晴らしいです!個々のキャラクターが明確に差別化されている為、ストーリー展開も非常に把握しやすくなっています。

神木隆之介が演じる主人公の敷島は、"恥ずかしながら帰って来た特攻隊員"であり、古傷に支配された脆い人間を演じています。

また、敷島を取り巻く仲間や擬似家族も然りです。いい意味で物語の行く末を混乱させないキャラ立ちは、登場人物の多いエンタメ超大作にとっては観客を混乱させず物語に集中させてくれる大きな安心材料となりました。


庵野秀明監督作品『シン・ゴジラ』まで、シリーズでは常に政府対ゴジラの戦いが描かれてきましたが、本作では政府が介入を放棄している為、民間人がゴジラと戦います。そんな圧倒的劣性ながらも知恵と結束力で立ち向かう様が新味であり、"新生シリーズ作品"とすら呼べる魅力かもしれません。


ゴジラ対民間人!果たして民間人の作戦がゴジラに通用するのか!?そんな"嫌な予感"は、映画の隊員同様に我々観客をも一体化させる素晴らしい演出術です!文句無しにノッて来ましたよ!!




【この映画の好きなとこ】


◼︎VFX

昭和シリーズで驚愕映像を作った円谷英二の技術を簡単に超える事は出来ないが、本作の執拗なVFX描写も驚かずにはいられない。ゴジラ映画を受け継ぐ魂と執念を見た!

マジ恐ろしいから
やっぱ光と闇の演出が冴えるのはモノクロだね



◼︎ゴジラのテーマ

クライマックスのゴジラ戦で流れる伊福部昭の"ゴジラのテーマ"は、かかるタイミングも含め最高に盛り上げてくれた。やっぱりコレがないとね!



◼︎明子 (永谷咲笑)

まだろくに話せない低年齢層の子供に設定した事で、子供が本来持ついじらしさや可愛らしさをあざとさ抜きで描くことが出来た。そして同時に戦争の恐ろしさをも際立たせた。



◼︎ゴジラ登場

本編開始早々に登場するゴジラの姿には、怪獣映画特有のダイナミズムをも凌駕する恐怖と絶望に飲み込まれる。

『ジュラシックパーク』感もあるが恐怖度で圧勝



◼︎海上戦

背びれを海面に立てて襲いくる姿はさながらジョーズの如し。逃げる船に対し方向転換する背びれの演出に戦慄!口に詰めた爆弾を射撃する様はまさに『ジョーズ』!

これはもうホラー映画
海中で発する放射能火炎のシーンはマニア向け!



◼︎東京上陸

船や電車が吹き飛ぶ様でゴジラ襲来を示唆!街中にそびえ立つゴジラの姿は恐ろしくも神々しい。その圧倒的破壊力を先のシーンで披露している効果もあり、どのシリーズ作品よりも大きな絶望感をもたらした。

マジでビビるから!
特撮なら東宝の真髄がここに!
やっぱり銀座和光は破壊される



◼︎『ゴジラ』オマージュ

第1作にもあったゴジラの実況中継シーン。命を懸けて撮影・実況をこなす勤勉さは、日本における過去の現実災害でも実際に見られた。その姿を讃えたものとみなしたい。

最後までありがとう



◼︎電車に取り残された典子

電車が破壊されるシーンは、第1作『ゴジラ』へのオマージュとしながらも、アクション描写に長けた名シーンとなった。車内で宙吊りになった典子のサスペンス描写が冴える。

キングコングばりに典子を狙う



◼︎最後の戦い ※ネタバレ

戦力外通告された水島が参戦し共に戦い抜くクライマックス。水中で抗うゴジラのサスペンス描写に戦慄!戦い抜いた水島と敷島が抱き合い泣きじゃくる姿に貰い泣き!

橘の恩恵を受けて発つ敷島
カミカゼアタック!
最後の水島は『トップガン マーヴェリック』だな





本作では戦争と災害、そして復興への長い道のりが描かれています。

主人公の敷島は、特攻隊員の仕事を放棄してしまったこと、大勢の仲間を死なせてしまったことの罪悪感から逃れられず、最終的に自暴自棄な作戦を画策します。しかしそれは自身のセンチメンタリズムを満足させるだけの手段です。解決に至るものではないし、周囲が納得するものでもありません。

しかし、弱い人間が自暴自棄に挑む戦いだからこそ生まれるリアリズムが本作にはあります。だから『ゴジラ-1.0』は面白いのです!


※以下、重要なネタバレ

終盤に向けて作品が敷島のセンチメンタリズムに乗っ取られ、安易な結末に向かっていると予感しました。しかし、その予感は悪い意味で裏切られました。"死ぬ"、または"死んだ"と思わせて、実は生きながらえた敷島と典子の姿があったのです。

通常であれば「安易なハッピーエンド…」「最低…」と感じるボクですが、今回はその結末に一瞬戸惑うも結果的に受け入れる事が出来てしまったのです。

もし自身が本作や、戦争・災害の現場に居合わせたとして、死んだと思っていた家族や友人、恋人が実は生きていたと聞けばこれほど嬉しいことはないはず。つまり中盤からクドいと感じた人情劇こそが最後にすべて回収されるわけで、本作には絶対的に必要な描写だった事に気づくのです。

ストーリー、ビジュアル、演出ともに大満足のゴジラ映画!つまり脚本、VFX、監督をこなした山崎貴ってスゴいな、マジで。


そして最後にもう一度繰り返しますが、モノクロバージョンで観るゴジラの臨場感、映像の美しさは本当に特筆もの!これからも繰り返し観直す作品になると思いますが、多分ボクはモノクロバージョンしか観ないと思います!!