珠玉の刻。
1986年 監督/ ロブ・ライナー

言わずと知れた80年代を代表する名作を、
午前十時の映画祭 11で鑑賞しました。
初めての鑑賞は確か20歳の頃だったと思います。ホラーとアクションにまみれていたボクには、そもそも縁のない作品と認識していましたが、やたら世間が名作と囃し立てるので、一映画ファンとして一応観ましたよ。
結果、なにも面白くない。
サスペンス描写が弱い、アクションが無い、血が流れない、爆発がないくらいの感想しか無く、二度と観なくていい映画リストに入り封印された存在でした。
その二度と観なくていい映画『スタンド・バイ・ミー』に再会したのは昨年のテレビ放映でした。特に何も期待する事無く、ぼんやりと眺めていたのですが…
胸が締め付けられるほど感動した。
涙が溢れ出た。
なぜ?なぜだ?
二度と観なくていい作品で涙するとは!
ボクはこれまでに夜の森で野宿した事も、線路を走る列車に追いかけられた事も、まして死体探しの旅に出かけた事もありませんが、画面に映し出される風景と、4人が過ごした時間には、昔味わった事のある懐かしい匂いが確かに漂っていました。
そして、その時が瞬く間であったこと、そして決して戻る事が出来ない宝物のようなひと時であった事に気づかされたのです。
そう、『スタンド・バイ・ミー』は大人にならないと理解出来ない作品なのです。
そんな繊細で鮮やかな演出をしたのは、のちに『ミザリー』『最高の人生の見つけ方』などの傑作を発表する名匠ロブ・ライナー。ライナーの作品はまだそれ程観ていませんが、彼の手腕を評価するには本作だけで充分であり、ライナーは間違いなく現代映画最高の演出家のひとりと言い切れます。
そして、主演4人の魅力こそが本作を名画に昇華させた大きな要因です。俳優である事を忘れさせるほど自然な演技を見せてくれた4人、ウィル・ウィートン、リヴァー・フェニックス、コリー・フェルドマン、ジェリー・オコンネルは、この時点で既に名優と呼べる域にいたと思います。
今回の鑑賞時間さえも宝物と思わせてくれた『スタンド・バイ・ミー』は、きっとこれからも繰り返し観続ける特別な作品であり続けることでしょう。
【この映画の好きなとこ】
◾︎バーン・テシオ (ジェリー・オコンネル)
4人の少年は全員魅力的だが、個人的にはバーンが一番好き。見た目と違い臆病な性格がかわいい。お金が好きなしっかり者の一面もユニーク。
落としたハンバーグを見つけ喜ぶシーンに激萌え
夜の見張りでのヘタレぶりに爆笑◾︎おとな
◾︎イントロダクション
疎遠気味だった友人の死亡記事を読み、息を呑む作家ゴーディー。自転車で駆け抜けて行く2人の少年に、かつての自身と友人との姿を重ね遠い目で見つめる。"Stand By Me"の静かな旋律で回想が始まる完璧な導入部。
リチャード・ドレイファスぽいと思ったら本人だった
自身を思い起こさせる2人の仲良し少年◾︎信頼関係
ゴーディーを怒らせた事が誤解だと主張するクリス。また、別の場面ではテディとの些細ないざこざからの仲直りを求める。その眼差しは真剣そのもので、ここにリーダーとしての資質を垣間見る。
信じてくれ。小指に誓う(真剣)
仲直りの握手だ…手を出してくれ(真剣)
◾︎エースとの一悶着
クリスとゴーディーに町のチンピラエースが絡み、旅に出る2人のテンションをダダ落ちにする。互いの尻を蹴り合うクリスとゴーディーは、無言ながら「ヘコんでんじゃねーよ」「お前もなー」の会話を成立させている。
あ・や・ま・れ・よ
嫌な気分も吹き飛んじゃうよね!やるねクリス
◾︎屑鉄屋
子供の時ってどんな時も友達と一緒だったよなあと思い起こさせるシーン。テレビ番組に出演している女の子の胸が大きくなった話で盛り上がったり、番犬に追いかけられたり、鉄屑屋のオヤジと喧嘩になったり…。同じ経験が無くてもきっと誰もがノスタルジーに浸ること間違いなし!
リアルな子供の日常が描かれる
鉄屑屋に父親を侮辱され激昂するテディ
◾︎進路
頭のいいゴーディーに「俺たちといるとお前の頭まで鈍くなる」と真剣に自分の進路を見つめるよう諭すクリス。一方でスーパーマンとマイティ・マウスのどっちが強いかで論議するテディとバーンの対比が面白過ぎる。
お前の親がその才能を育てないならオレが守るさ
マイティ・マウスは漫画だぞ。漫画が本物に勝てるかよ
◾︎パイ食い競争
キャンプの夜にゴーディーが仲間に話して聞かせた創作話。パイ食い競争からやがてブルーベリーソースの吐きかけ合いになる爆笑エピソード。エンディングについての議論も各々の個性が溢れており微笑ましい。
『エクソシスト』を思い出した(*´∀`*)
ゴーディーは凄い作家になれる!この本買います!
バカウケ!
◾︎ヒルの森
沼の深みにハマり、ズブ濡れになったテディがバーンを沈める水遊びに興じていると、クリスに「子供っぽいぞ」と揶揄される。そんなクリスに返すテディの「子供さ!子供時代は二度と来ない!」は最高の台詞。
キラキラ台詞にときめいた!
最高!…しかしこの後とんでもない事態に:(;゙゚'ω゚'):
◾︎銃を構えたゴーディー
ナイフを構えるエースら不良グループに対し銃を抜くゴーディー。一番おとなしいゴーディーの口から「デカいのをぶち込んでやる。その汚い尻にな」というダーティハリー並みの決め台詞が飛び出す。また、エースの「全員撃つのか?」に対して「他の奴らは撃たない。お前だけだ」の本気度にシビれる。
殺すぞマジで…
銃を抜いたのはグループ唯一のインテリ、ゴーディー
◾︎ヒーロー
死体発見者として町のヒーローになる事を目的とした旅だったが、フェアでない方法で有名になる事をゴーディーは良しとせず、第一発見者の名誉を放棄する。ここに男しての大きな成長がある。
え…マジすか
◾︎帰り道
旅を終え帰路につく4人。ゴーディーの独白「帰り道いろんな思いが頭をよぎったが、みんな一様に黙っていた」が、4人の満足度と成長を物語っている。ここを引きの画で見せるライナーは分かっている演出家だと思う。
無口になる気持ちわかるなあ…
4人の心象を映したかのようなキラキラ風景
◾︎地元キャッスルロック
地元に帰ったゴーディーの独白「たった2日しか経ってないのにキャッスルロックが小さく見知らぬ街に見えた」に切なく共感。誰でも故郷が小さく見えた経験あるよね。
大きくなって帰ってきた12歳
小学生が終わる
次は中学だな
本作の鑑賞は特別な体験でした。童心に帰り心を洗われた大人たちは、きっと誰もが圧倒的無言で劇場を後にした事でしょう。
そして、今回の劇場鑑賞を引き摺ったボクには、先日とても嬉しい出来事がありました。なんと大好きなバーンが夢に出て来たのです。田んぼの畦道で一緒にプロペラ飛行機を飛ばし、一緒にカップヌードルを食べ、一緒にマドンナの音楽を聴きました。もう1人いたんだけど、誰か分からなかったなあ(たぶんテディ??)。「こんな美味しいもの食べたことない!」「こんな音楽初めてだよ!」と驚くバーンが可愛かったです。凄くないですか?バーンがボクを夢の中に引き摺り込んだんですよ!
劇場鑑賞後、更に自宅で2回DVD鑑賞をしましたが、『スタンド・バイ・ミー』はどのシーンがいい、どのエピソードがいいではなく、すべてのシーン、すべてのカットが素晴らしい作品です。
これといったストーリーが無いにも拘らず、止まらないときめきと感動は、北野武監督の『あの夏、いちばん静かな海。』や宮崎駿監督の『となりのトトロ』に通じるものがありました。つまり、一生涯付き合える作品に巡り合えたということです。
最後に原作者スティーヴン・キングについて。その名を知らない者は(おそらく)いないホラー小説の帝王キングは、これまでに『キャリー』『シャイニング』『ミザリー』『IT』などの大ヒットホラーを多数発表しており、そのほとんどが映画化されている希代のベストセラー作家です。
一方で本作『スタンド・バイ・ミー』を筆頭に、『ショーシャンクの空に』『グリーンマイル』などの感動作も手がけるその才能には、驚きを通り越えて呆れますよね。どうなってるんだろ。
『スタンド・バイ・ミー』は小説、映画共にキングの緻密な仕事ぶりが堪能できますが、映画版ではキング特有の毒や生々しいエピローグが極力抑えられた感動作に仕上げられています。
しかし、本作は紛う事なきキングの世界であり、キングの愛が詰まった作品です。是非、原作小説も映画と共に味わい、作品の深淵に触れてみてください。
『スタンド・バイ・ミー』は、"午前十時の映画祭 11"にて上映中(3/3まで)です。ぜひ劇場でご覧…いや、体験してください!