人生ほど重いパンチはない
2006年 監督/ シルヴェスター・スタローン
前作『ロッキー5 最後のドラマ』から16年ぶりに製作されたシリーズ続編であり完結編。
歳を重ねたロッキーがリングを降りたように、シルヴェスター・スタローンも90年代後半は、不本意ながらアクションスターとしての第一線から遠のいていました。時代に取り残されたかのように、スタローンは映画界から、そして映画ファンからも忘れ去られようとしていたのです。
そんな時、スタローンの二大看板であった『ロッキー』と『ランボー』の続編製作が発表されたのです。還暦間近であるスタローンの発表に世界が笑いました。スタローンの大ファンであるボクでさえ、正直なところ「いやいや、それは無理だろ」と思ったものです。
しかし、公開された『ロッキー・ザ・ファイナル』は、下馬票を覆すまさかの大傑作でした。観客には熱狂で、そして批評家には絶賛で迎えられたのです。作品の成功と共に、スタローンは見事に復活を成し遂げたのです。
本作には、スタローンの"成功と幸福の哲学"が随所に盛り込まれ、名言の宝庫とも言えるほどの眩い作品になりました。その熱いセリフの数々と、還暦を目前にしたロッキーの割れた腹筋に、きっと誰もが奮い立たされるはず!
【この映画の好きなとこ】
◾︎Take You Back
第1作のオープニングでも使用された、スタローンの実弟フランク・スタローンが歌うナンバー。完結編で再び聴かれるとは感無量!
こんな所にもスタローンの家族愛が◾︎老いたチャンプ
エイドリアンに先立たれ、一人寂しい朝を迎えるロッキー。重そうな体でベッドを抜け、亀と野鳥に餌をやる孤独な姿が刺さるが、同時に愛しさも込み上げて来る名シーン。
◾︎リトルマリーとの再会
第1作でロッキーに説教された不良少女が大人になって再登場。ほどよい落ちぶれ感が『ロッキー5 最後のドラマ』同様に、リアルなひもじさ感を醸し出す。
◾︎パンチー
保護犬施設で弱々しく寝そべる犬を「死にかけてるんじゃない?」と揶揄されるも、ロッキーは自身を投影したのか「いや、寿命はたっぷり残っている」と引き取る事を即決。
◾︎奥底で燃えるもの
リング復帰を反対するポーリーに、嗚咽混じりで訴えるロッキー。「時々心が荒れて息苦しくなるんだ。こんなに辛く苦しいものだと思わなかった」。年をとる事がどんな事なのか、少し分かったような気がする。
◾︎トレーニング
シリーズ名物のトレーニングが復活。第1作へのオマージュで構成されたファン感涙のシーン。さあ、やるぞ!
◾︎男の背中
試合前夜、敵意剥き出しで脅しをかけて来るディクソンに「悪いが負ける為に来たんじゃない。ビビってるのか?」とかますロッキー。「怖い時こそ強気に出るんだ」と息子ロバートに教えるロッキーがカッコ良すぎる!
◾︎老いることのない心
エイドリアンの写真をお守りとして届けるリトルマリー。「エイドリアンはいつも運を招いてくれた」と答えるロッキーに言う「心だけは年を取らない事を証明してみせて」は最高のセリフ。
◾︎リングに立つロッキー
放送席の若い解説者が言う「僕の目の前であのロッキーが戦うなんて夢のようです!」に激しく同意!ホント夢のようだよ!
◾︎最終ラウンド
倒れないロッキーに「イカれたジジイだぜ」と吐き捨てるディクソン。「お前もそうなる」と答えたロッキーの言葉には、すべてのボクサーへの愛が込められている!
◾︎家族
判定結果発表の前に「さあ帰ろう」と家族と共にリングを下りる様は、第1作同様結果に拘らずやり切った満足感に満ち溢れている。その笑顔は世界一の清々しさ!
◾︎エンドロール
ロッキーと言えばフィラデルフィア美術館の階段。エンドロールはこの階段を駆け上がる老若男女ファンの映像で構成された。ファンに寄り添うスタローンの気概に感動!
いやあ、見事ですよね。最終ラウンドからエンディングまで信じられない程の高揚感!スタンディングオベーション10分しますよコレ。『ロッキー5 最後のドラマ』とは異なるアプローチですが、本作もまた最終章に相応しいロッキー最後の咆哮を見せてくれ、万人が納得・満足の傑作エンタメになりました。
思えばロッキーシリーズは、常に現実のスタローンを反映し描かれて来ました。映画界で芽の出ないスタローンが脚本・主演を務めた『ロッキー』の本編同様に、アメリカンドリームを体現したスタローン。
そして『ロッキー・ザ・ファイナル』は、かつての栄光を引き摺りながら老いていくロッキー同様に、表舞台から消えかけたスタローンの姿がオーバーラップされた作品です。
だからロッキーシリーズの脚本はスタローンにしか書けないのです。だから誰にも真似できない特別な感動がロッキーシリーズにはあるのです!
ロッキーシリーズこちらも