戦慄の男。
1984年 監督/ ジェームズ・キャメロン
すべてはこの作品からでした。ジェームズ・キャメロンも、アーノルド・シュワルツェネッガーも、この一作で世界的なスター監督、世界的スター俳優へと飛躍を遂げたのです。世界が納得したその面白さと衝撃で、現在も多くの熱狂的ファンを生み出している人気シリーズの第1作。
さまざまなジャンルを取り込んだそのスタイルは観るものを選びません。SF、アクション、サスペンス、ホラー、戦争、ラブストーリー、ヒューマンドラマと、あらゆるジャンルが詰まった作風は、これ以降の映画作りすら大きく変えました。

今回数十年ぶりの鑑賞でしたが、『ターミネーター』のパワーはまるで色褪せる事なく、ボクを戦場に引き込んでくれました。その臨場感に溢れたシーンの連続で、観客をも戦場に放り出す手荒い演出!やるな剛腕キャメロン!『殺人魚フライングキラー』で苦い監督デビューした鬱憤を晴らすかの如く、その咆哮たるや超弩級の1000倍返し!映画の神は、またしても新たな怪物を産み落としたのです!



【この映画の好きなとこ】

◾︎イントロダクション
"決戦は現代のL.A.で行われる。今夜…"って最高!本編開始前から大興奮!
『マッドマックス』の"今から数年後…"に匹敵!

◾︎追われるサラ・コナー
前半40分、理由も解らずターミネーターとカイルに追われるサラを描く。冒頭から観客をも巻き込みハラハラさせる卓越した演出力!
理由なき追跡マジ迷惑

◾︎ディスコ
ディスコに潜り込んだサラをターミネーターが追い詰めるシーン。落とした瓶を拾うサラがターミネーターの追跡から免れるシーンは名人芸!その後、謎の尾行者カイルが現れた時の絶望感まで一気に畳みかける!

ヒッチコック級のサスペンスは動画で観てね!

◾︎マイケル・マイヤーズ
カイルのショットガンで倒されたはずのターミネーターが起き上がるシーンは、その無表情も手伝いホラー映画『ハロウィン』の殺人鬼マイケルを彷彿させる程の戦慄!
パチッとムクッと。ここマジ怖い

◾︎カーチェイス
無表情でパトカーを操り、サラを追い詰めるターミネーターが不気味!激しいカーチェイスの末、忽然と姿を消すターミネーターは更に不気味!
ブルーを基調にした色使いもカッコいいね

◾︎セルフオペ
CG誕生前の1980年代は特殊メイクが映画の花形でした。古き良き時代の映像です。
80年代を生きたものには実写が最高のご馳走なのです

◾︎警察署〜最初の絶望〜
30人の警察官がいる署内に正面から突入してくるターミネーターに戦慄!まさか署を全滅に追い込むとは!
遠慮しないねホント

◾︎地下生活
マシーンの追跡を逃れる為に地下生活を強いられている人類。少女を映す事によって反戦映画としてのメッセージも読み取れる。
地下生活を強いられた少女は、後の同監督作品『エイリアン2』で深く描かれる
"ずっと前から愛していた"。写真のサラに想いを馳せるシーンがさりげなくロマンチック

◾︎声帯模写
サラを心配するママとの電話…が実はターミネーターの声帯模写だったという戦慄のシーン。荒らされた室内を映す事により、ママが殺された事を暗示する名演出。
この機能が後のT-1000で飛躍的に進化する

◾︎二度目の絶望 ※ネタバレ
大型タンクローリーで追い詰めるターミネーターの恐ろしさ!大爆発で終幕…となる観客心理を逆手に取った"キャメロンの超絶しつこいバトル"の幕開け!これは新しかった!
うそー!

◾︎破壊 ※ネタバレ
剥き出しのマシーンになったら、もう完全に話し合い不可!逃げるしかない!ダイナマイトで爆破解体されるも、上半身引き摺り迫り来る殺人マシーンなんて、キャメロン以外に誰が考えられようか!
脊髄を尻尾のように引き摺り這う様は『リング』の貞子を超えるおぞましさ

◾︎写真
ガソリンスタンドで少年に撮られた写真。カイルが将来目にする"物悲しそうな表情"の理由がここで明らかに。そして「嵐が来る」に返したサラの言葉は、女戦士としての覚悟が込められている。
このエンディングが名画に昇華させている要素のひとつ
嵐に向かう最高にカッコいいショット!シビれる!

当初シュワルツェネッガーは、カイル・リース役に決定していたそうですが、キャメロンはよくぞ考えを改めてくれました!もし、シュワルツェネッガーがターミネーターを演じていなかったら、現在まで続く大人気シリーズになっていなかったでしょう。いや、それどころか本作の大ヒットもなかった筈。
この第1作以降、ターミネーターは人間側に付く正義のヒーローとなる為、ここからは好みが別れるところです。ボクは圧倒的に…というか、ターミネーターは悪の殺人マシーンであるべきと思っているので、やはりこの第1作がお気に入りです。

本作を今観直すと、後に続く続編作品と異なり結構な異色作に映ります。オーケストラ不在の音楽に、荒々しいハードなアクション。そしてなんと言っても無言で追い詰めるターミネーターの恐ろしさ!どんなに撮影技術や特殊効果が発展しようとも、この第1作のような神々しいツヤは出せないのです。

実質的な監督第一回作品となった本作(『殺人魚フライングキラー』では途中解雇されたそうです)で、いきなり超メジャー監督への飛躍。そして現在も映画界に革命を起こし続けるキャメロン。本作で世界を戦慄させたのは、恐怖の殺人マシーンだけではなかったようです。


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